この世界、この街、そして人々に神の慈悲を!
たどり着いた先は、およそ神様が降臨するとは思えない場所だった。
「……うわ、ひっどい光景だな」
空はどんよりとした不気味な黒。足元を流れる川はどす黒く汚れ、鼻をつく悪臭が漂っている。
視界に入るのは、立ち枯れた木々と、ボロ布をまとって力なく座り込む人々……そして、かつての栄光も虚しく崩れ去った城壁の残骸だけだった。
「この世界には、まだ一度も神様が降臨したことがないんです。だから、こんな惨状になっちゃってるんですよね」
「一度も……?」
「はい、放置物件です!」
リリアは事も無げに言い放つが、こっちは冷や汗ものだ。
「……いや、さすがに俺には無理だよ。荷が重すぎる」
「あら。ピカピカの『いい物件』は力のある神々が独占してますから、新人のあなたにはここしか残ってないんですよ。さぁ、頑張りましょうね!」
「そんな、頑張りましょうって言われても……。俺に何ができるんだ?」
不安でいっぱいの俺に、リリアは「大丈夫、大丈夫」と軽く肩を叩く。
「できますよ。根源神様から授かった特別なパワーがあるんですから」
「……前から聞きたかったんだけど、その『力』って具体的になんなんだ?」
「そうですね……神様によってギフトは千差万別なので、今は何とも言えませんが。ただ、私のような天使と違って、神様は人々の『信仰』を集めれば集めるほど、その力が増していく仕組みなんです」
「へぇ……経験値みたいなものか」
「ぶっちゃけた話、信仰さえ得られれば何でもいいんです。あんまり難しく考えなくていいですよ?」
悪魔のような微笑みを浮かべるリリアに、俺は少し背筋が寒くなった。
「いや、でもさ……。せっかく神様になったんだ。できることなら、善行で名を上げたいよ」
「ふふっ。ハデス様も昔、似たようなことを仰っていましたね」
「ハデス? 有名な神様か?」
「ええ、善良で力の強いお方ですよ。……まぁ、その後どうなったかはさておき。それより、さっそくこの街の再建に取りかからないと!」
含みのある物言いが気になったが、目の前の惨状を放っておくわけにもいかない。俺は深呼吸をして、荒れ果てた大地を見据えた。
「……そうだな。まずはここから、始めていこうか」




