表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北欧おやつ時間〜夢のケーキと午後三時のフィーカ〜  作者: 地野千塩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/52

希望の光とクリスタルコーヒーブレッド(4)

 その次の日。


 カフェは休みだった。スキマバイトアプリも入れていたが、企業側の事情でキャンセルになり、明日香の時間が空いてしまった。


 スキマバイトアプリはワーカー側がキャンセルした場合、ペナルティポイントがつくが、企業側のキャンセルは何もないという。理不尽であるが、仕方がない。


 シェアハウスでは和美はずっと投資をしており、話けられる雰囲気はない。真緒も大学に行ってしまった。


 シェアハウスに一人でボーっとしていても暇だ。結局、明日香は駅前まで散歩しに行く事に。


 平日の午前中は比較的人は少ない。子供連れや裕福そうな雰囲気のマダムが目立つ。明日香は少し居心地の悪さを持ちつつも、商業ビルの中の書店へ。


 書店の店頭の北欧フェアは最終日だそう。棚の空白は目立っていたが、明日香はそこで一冊のノートを手にする。ムーミンのイラストつきのノートで値段は七百円以上。普段だったらノート一冊にこんな金額はだせない。百円均一に行くところだが、ノートにいるスナフキンやリトルミイとも目が合い、どうしても惹かれてしまった。


 値札は見ないようにしながらレジへ向かい、購入。


 昨日、店長が言っていた事が頭の中から離れない。


 ノートに夢を描いたら叶うのか。そんな夢物語みたいなものは信じていないが、今は満足だ。明日香はその足でカフェへ。


 チェーン店の庶民向けのカフェだ。客層はサラリーマン風のおじさんや主婦らしき人も多い。あまり静かではなく、むしろ、うるさい方だったが、薄めのアメリカンコーヒーを注文後、窓際の一人席に座り、ノートを開く。


 ノートの中にもムーミンやニョロニョロもいた。思わずホッコリとしまうデザインだが、ボールペンで夢を書いてみる事に。


 しかし意外と思い浮かばないものだ。とりあえず、仕事を見つけたい、経済的に自立したいなどを書いてみたが、夢というよりは目標になってしまう。


「うーん、意外と難しい」


 薄めのアメリカンコーヒーを飲み、もう一度ボールペンを握る。


 ・カフェのお客様が笑う事。


 そう書くが、これも半分以上は店長のおかげで実現している。全く夢が広がらない。子供の頃に書いたノートにはいくらでも描けたのに、今は一枚ページを埋めるだけで精一杯。


 ・お金持ちになる。


 そんな事も書いてみたが、違和感。明日香の眉間に皺が寄る。これは夢というよりは、欲望ではないか。FIREを目指した黒歴史も思い出し、慌てて二重線で取り消す。


 ・楽しく過ごす。


 抽象的。


 ・月三十万円の収入(正社員)。


 これも目標と欲望が混ざった感じ。絶妙に妥協した感もある。


 ・結婚?


 付き合っている人もいないのに。なぜか店長の顔も浮かんでしまい、急いで二重線を引く。


「あ、そうか……。店長といえば……」


 ・フィンランド旅行


 これは夢らしい。前に店長がフィンランド旅行に連れて行ってあげると言った時、変な誤解してしまった事も思い出し、明日香の頬は熱ってきたが。


 少し希望が出てきた。目標でも欲望でも無い夢が描けたような。心なしかノートの中のムーミンも「いいね!」と言ってくれているような。


 ・フィンランドに住む?


 さすがにこれは夢見過ぎる?


 そうは言ってもフィンランドの住む自分を想像していたら、肩から力が抜ける。居場所は日本だけではないと思うと、この状況にも深刻にならない。むしろ笑ってしまう。


 ここまで書いた時、ちょうどコーヒーを飲み終えた。


 カフェを出ると、また書店へ向かう。北欧コーヒーにあるフィンラン旅行の書籍もいくつか買おう。


 来た時より、明日香の足取りは軽く、書籍の値段も気にせず購入した。


「あれ? 君枝さん?」


 帰りがけ、書店の文芸コーナーに君枝がいる事に気づいた。


 昨日、ゴスペル教室で会ったばかりの君枝だが、今日はメガネをかけ、目を皿のようにしながらう文芸コーナーをチェックしていた。その腕の中には文芸誌もある。今は文芸誌は売れない時代だとネットのニュース記事で見た事がある。


「君枝さん、こんにちは。偶然ですね」


 重わず声をかけてしまったが、君枝は顔を真っ赤にしていた。


「え、なんで明日香さんが……」


 そう呟いた君枝は、すぐに逃げてしまった。


「え?」


 残された明日香は、首を傾げる事しかできない。なぜか君枝は逃げた。不快な気分にさせてしまったかもそしれない。本を選んでいる時に突然話しかけられるのは、良い気分もしないはず。


「あー、やってしまったかな……」


 せっかく友達になれたかもしれないと思ったが、そうそう簡単にはいかないかもしれない。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ