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狩らないでください“狩人”さん!  作者: 良心の欠片
第1章 ドラゴンと人
8/48

8 人と小虎とドラゴンと



「うぎゃあああああぁあ」


 キュー キュー


「待てコラァアアーー!!!」


 現在、私は小虎たちを両脇に抱えて森を走っていた。

 いや、転がり落ちていると言った方が適切かもしれない。


「ちょこまか動くなッ!!」


「大人しくしやがれ!!」


 洞窟で小虎の檻を破壊し終わった時、最悪なことに密猟者(仮定)が帰ってきたのだ。

 丁度、レオンが偵察に出かけていたタイミングと重なってしまった。

 とりあえず、極度に衰弱した小虎たちを抱えて森へ駆け出した。


「止まれッ!!」


(止まれと言われて止まるバカがいるか!バカめ!)

 

 心の中でしっかりと悪態をつきつつ、体力の限界がきていることを悟る。

 空気を上手く吸えなくなってきた。

 このままでは捕まってしまう。


「……ッ!レオン!!!」


 届くかもわからない声を張り上げる。

 そして、酸素が足りなくなってその場にうずくまる。


「ハァッハァッ」


「やっと大人しくなったか」


「手こずらせやがって」


 男二人がこちらに向かって歩いてくる。

 洞窟に帰ってきた者たちは、少なくとも十数名はいたはず。

 それなのに二人で追いかけてきたということは、私を二人で捕まえられると思われていたのだろう。


「……見誤ったな!」


 バサッ


「何!?」


「急に風がッ!!」


 息も絶え絶えでドヤ顔をする私の背後に、月光を纏うドラゴンが舞った。


『グルルァアア!』


「ひぃいいいい!!」


「なぜドラゴンが?!」


 男の言葉を聞いて、こちらの世界でもレオンはドラゴンと呼ばれるのかと思った。


 威嚇をするドラゴンを見た二人組の男たちは、一目散に逃げていった。

 残った私とレオンは、すぐに小虎たちの状態をみる。


 キュー キュー


 頼りなさげな鳴き声だが、檻にいた時よりも元気になっているようだ。

 ホッとしたはいいものの、この子たちの親を探さなければならない。


 そして、最悪の場合も覚悟しておかなければならない。


「……もし親が―――」

 

 小虎たちの耳元で後に続く言葉を囁く。

 言われた言葉の意味もわからず、くすぐったそうにしている小虎たち。

 その姿を見て、強張った頬は少しだけ和らいだ。




























 ベンガルトの亡骸が山積みになっている森の中。

 狩人たちは、各々がやりたいことをやっていた。

 ベンガルトを解体している者もいれば、武器の手入れをしている者もいる。


 そして、その場を離れようとする者がたった一人だけいた。


「おいおい、ユラン。どこ行くんだ」


「………」


 ユランは面倒なのに捕まったと顔をしかめる。

 目の前の男は“ダルク”のリーダーであり、ユランに口を出せる数少ない人物だ。

 ユランもこの男には多少の顔を立ててやっていた。


「……なんだ」


「まさか、また狩りに行こうとはしてないよな?」


「………」


「してないな?」


「チッ」


 保護者面をしてくるこの男に、ユランはせめてもの抵抗で舌打ちをする。

 実力的にはユランの方が上だとわかっていても、幼い頃から指導されてきたせいで抵抗する気力が失せる。


「お前は狩ること以外の趣味を持った方がいいぞ」


「……余計なお世話だ」


 そう互いに言い合っていた時だった。


 グルルルルァアア!!!


「「!」」


 ベンガルトの遠吠えに、瞬時に臨戦態勢をとる。

 急いで声が聞こえた場所に向かうため、狩人たちは武器を手に取った。





















「ねえ、レオン」


『クルル』


「この子たちの親、わかる?」


『クルー』


「だよねー」


 首をかしげるドラゴンと、同じく首をかしげる人間。

 両者が見ているのは、3匹の小虎だ。

 

 キュー キュー


 愛らしい3つの毛玉がじゃれ合っている。

 さっきまで檻に入れられて衰弱していたとは思えないほどの元気さだ。


「多分、親も虎っぽいはず」


『クル』


「で、親だから体はもっと大きい」


『クルル』


「つまり、人間の私は食べられる」


『クルッ?!』


 急に翼で私を隠したレオン。

 どうやら心配させてしまったようだ。


「冗談だよ。……いや、冗談じゃない?」


 モンスターの親探しはどうすればいいのかと頭を悩ませる。

 そして、休むためにも木に凭れようとしたその時だった。


 グルルルルァアア!!!


「え?!」


『グルルルル』


 すぐそばで何かの唸り声が聞こえた。

 レオンが臨戦態勢に入っている。

 これは嫌な予感しかしない。


 グルルルアアァ!!!


「ひいいいぃ!!!」


 お腹の底から情けない声が出る。

 

 虎のようなモンスターがこちらに飛びかかって来た。

 レオンが同時に牙をむく。


 せめて小虎たちだけでもと、胸に3匹とも抱き寄せる。


 キューッ キューッ


「え?なに?!」


 もぞもぞと動き回る小虎たちに困惑する。

 そして、レオンと虎のモンスターがこちらをじっと見ていることに気づく。


 ドシッドシッ


「………っ」


 殺されるのかと恐怖に震える。

 目の前に来た虎のモンスターは顔を近づけてきた。

 そして―――。


 ベロン


「……うぷっ」


 胸元にいた小虎たちと私の顔を一緒くたにして舐めている。

 困惑していると、そばにきていたレオンが私の顔を舐めてきた。


 いや、口直しみたいに舐め直さないでもらっていいかな?


「………もしかして、親御さん?」


 グルゥ


 凶悪な顔をしているのに、一瞬このモンスターが大きめの猫に思ってしまった。

 危ない危ない。


 キュー キュー


 嬉しそうに舐められている小虎たちを見てもわかる。

 どうやら、迷子たちは親を見つけられたみたいだ。


 朝になる前に帰ろうと、腰をあげた時。


「こっちだ!」


「近くにいるぞ!」


「!」


 例の(多分)密猟者たちがやってきたのだ。

 今度は全員でやって来たようだ。

 厄介なこと極まりない。


 戦えるのはレオンと小虎たちの親。

 しかしよく見ると、このモンスターは体中が傷だらけだ。

 実質、戦えるのはレオンしかいないということになる。


 ドラゴン一頭VS人間十数人。

 さらに、ドラゴン側は非戦闘員が複数人いる。

 これは圧倒的にこちらが不利だ。


「どうしよう、どうしよう」


 なにか打開策はないかと考えていると、ふと“ダルク”のことを思い出した。

 そうだ、彼らが近くにいるじゃないか。

 場を混乱させるためにも、彼らを巻き込んでしまおう。

 

 小虎たちを親虎に託し、この場から逃がす。

 数度こちらを振り返ったが、森の中に消えていった。


 準備は整った。


「レオン!」


『グルルルルァアア!!!』


 合図と同時に、ドラゴンの雄叫びが森中に響き渡る。

 密猟者たちがこの場所に来ている音がする。


 そして、それとは別の音をレオンがとらえた。

 

「レオン!飛んで!」


『グルルッ』


 レオンの背にまたがり、風圧に目を閉じる。

 一時、強い風を感じた後、空気が少しだけ和らいだのがわかった。

 目を開けると、私は遥か上空にいた。


 さっきまでいた森がとても小さい。


「これで狩人とてんやわんやしてくれてたら、万々歳だね」


『クルルッ』


 陽の光が雲を照らすなか、私たちは帰路についた。










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