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狩らないでください“狩人”さん!  作者: 良心の欠片
第1章 ドラゴンと人
7/48

7 狩りの時間だ


「え?あの狩人さん、集落から離れたんですか!」


「はい、今朝“ダルク”の方々がそう話しているのを聞きました」


 家の点検に来たポールから、驚きの情報が提供される。

 例の狩人に、外の調査に行くよう誘導したのは一昨日くらいだ。

 つまり、まんまと私たちの作戦にひっかかったようだ。


「へえ、それはそれは」


 にやける顔を隠しながら、点検を済ませたポールを見送った。

 そして、大切にとっていたベリージュースの瓶を開けた。


 ポンッ


「今日はお祝いだー!」


 頭の片隅では「本当にうまくいったのだろうか?」という疑念があった。

 しかし、今はこの安堵を謳歌しようとベリージュースとクッキーを楽しんだ。








 数日後。

 家で長老に頼まれていた仕事をしていた時だった。


 ゴンッ


「?」


 家の近くに、何か重い物が置かれたような音した。

 この家の周辺には、ご近所さんがまったくいない。

 つまり、誰か知らない人が来た可能性が高い。


 一体誰なのかと窓から顔を出す。

 

「………」


 ガチャ


 そして、そっと窓を閉めた。


「あれ、おかしいな。外に狩人さんが見えたような」


 確かめるために、もう一度窓を開く。


 ガチャ


 いる。

 私を強制退去させた狩人が庭にいる。


 荒れ果てた庭と狩人。

 非現実的な光景に、脳が理解することを拒否している。


 しかし、現実は非情だった。

 窓で呆然としていると庭にいる狩人と目が合ってしまった。

 まったく逸らされない視線に屈し、私は庭へと向かった。




 

 ところが、最悪の想定とは裏腹に事は進んだ。

 狩人がここに訪れたのは、元の家に戻ってもいいということを伝えるためだった。

 そして、とんとん拍子で元の家に戻り、私は平穏な日々を取り戻した。




 ……だが、その平穏も長くは続かなかった。

 集落の近くに、別の大型のモンスターが現れたから。






「総員、準備はいいか!!」


「「「ウオオオォォォーーー!!!」」」


 狩人たちの雄たけびが集落中に響き渡る。

 門の前に集まった彼らは、討伐隊のメンバーだ。

 “ダルク”の中でも上位の実力を誇る狩人たちだと耳にした。


(大型のモンスター……か)


 今回目撃されたのは、虎のような見た目をしたモンスターらしい。

 名前はあるのかと聞いたところ、ベンガルトという名のモンスターだそうだ。

 普段は森の奥に住んでいて、人里に降りてくることはないと言っていた。


 そんなモンスターがどうして集落付近にやってきたのかは謎だ。


(まあ、レオンから目が逸れてよかったというべきか、集落の危機だからよくなかったというべきか)


 複雑な心境の中、闘志がみなぎっている狩人たちを見送った。












 狩人たちを見送った日の夜。


『クルルッ!クルルッ!』


「………っ!レオン?!」


 家のそばには来るなと言っていたはずなのに、家の庭にはドラゴンがいた。

 土についた足跡に冷や汗をかいていると、レオンの様子がおかしいことに気が付く。


「レオン……?」


『クルルッ!』


 執拗に鼻先で自分の背を指している。

 どうやら早く背中に乗れと言っているようだ。


「一体なに―――」


『クルッ』


 グイ


「うわわっ」


 服を引っ張られ、レオンの背中の傍に来る。

 尋常ではないレオンの様子に、覚悟を決めた。


「わかった、連れて行って」


 私が背中に乗ったことを確認し、レオンはすぐに飛び立つ。

 向かった先は、例の大型のモンスターがいると言われていた方向だった。























「これは……!」


 キュー キュー


 レオンに連れてこられた洞窟で、檻の中に入れられた3匹の小虎を見つけた。

 周囲には金属で作れられた罠のようなものがある。


 一目を忍んでいるような洞窟に、捕らえられたモンスターの子ども。


「……密猟者」


 あるいは狩人だ。

 モンスターであっても、子どもを攫うなんて私の道理に反する。

 しかし、この世界でモンスターがどう扱われているのかを私は知らない。


 狩人たちに報告すべきだろうか?

 いやでも、子どもであってもモンスターは駆除対象だったらダメだ。

 私はこの小虎たちを逃がしたい。


『クルル』


「大丈夫、任せて」


 すり寄ってきたドラゴンの顔を撫で、小虎たちが囚われている檻へと歩き出した。































 グルルルルァァアア!!!


「右に行ったぞ!!」


「包囲しろ!」


「指図すんなッ!」


「今はそんなこと言っている場合じゃないだろう!」


 様々な怒号が飛び交う中、狩人たちは各々の武器を手に戦っていた。


「なんでこんなに数が多いんだよッ!」


 悪態をつく狩人が言う通り、今回の狩りは異常だった。

 単独行動しかしないはずのベンガルトが、集団になって襲ってくるのだ。

 唾を吐きたくなるのも仕方がない。


「どけ」


「ンだとォ」


 ザシュッ


「あ」


 ドスをきかせていた狩人の背後に鮮血が舞う。

 背後にいたベンガルトを切り捨てたのだ。


「あ、ああ、助かっ―――」


「邪魔だ」


「……っ!“赤い狩人”……」


 二つ名で呼ばれたユランは、それに反応することなくモンスターを切り捨てていく。

 その横顔は狂気に染まっていた。

 獲物を狩るのが愉しくて仕方がない血に飢えた獣。


「相変わらずの狩りっぷりだな」


「オレらの出番はなさそうだ」


 背後で呑気に歩いているのは、上位の狩人たちだ。


 基本、“ダルク”の狩りの仕方は決まっている。

 先鋒が若手や実力を伸ばそうとしている狩人たちが出る。

 彼らがどうしても狩れなかった場合に、上位の狩人たちが出るのだ。


 しかし、ユランは例外だった。

 彼はいつも先を行き、先に狩り、先にモンスターを殲滅する。

 そうして、最も血を浴びる彼についた二つ名が“赤い狩人”。


「………多いな」


 頬についた血を拭いながら、()()()()()ベンガルトの数を数える。

 ユランは気づいていた。

 今回、ベンガルトがこんなにも現れたことには何か裏があることを。


「まあ」


 ザシュ


 グルルアアァァ


「狩ればいいだけの話だ」


 しかし、ユランにとってモンスター側の事情など知ったことではなかった。

 彼はモンスターを狩ることさえできれば、他はどうでもいいのだ。











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