其の九十二……『怪談小豆夜話:『排水口のナンパ師』の話』
今回も『ノナさん』が参加した、『不思議な魅力を持つ老齢女性:小豆さん』の家に集まってきた人々による『怪談座談会』が続く。今回の『語り部』は『福井』から『金沢』の大学に通うために『一人暮らし』をしている『女子大生』の『真理恵さん』が話してくれたものである。
『………この話の『始まり』は『私』の『友達』だった『アカネ』が『私』にしてきた『相談』だったの。なんでも『アカネ』は『金沢の築40年のボロアパート』に住んでたんだけど、その『アパート』の『キッチンのシンク』にある『下水の入り口』から『妙な匂い』がすることに気づいたらしいんだよね…………』と『真理恵さん』
最近『金沢』は主に『金沢駅西側』方面(県庁周辺)で『アパート』や『マンション』の建設ラッシュが続いており(といっても西側に限らず金沢全体で起こっている動きだが)、また『中心街の再開発(金沢駅東側のメインストリートの再開発)』も始まっているので『ボロアパート』はどんどん消えている。しかし『アカネさん』は『とにかく安ければいい』と思って『不人気のボロアパート』をわざわざ探してそこに住んでいたらしい(もちろん大学までの距離も考慮している)。
そしてその『ボロアパート』は確かに『古くてアパートの外装に蔦が這っている』という『見るからにダメそう』な見た目だが『立地』自体は『繁華街』に近かくすぐそばに『ドラッグストア』もあったので『不便』ではなかったそうだ。そして『部屋の中』は結構広く、『二人暮らし』でも全然狭いと感じないくらいだったらしい。それを『月3万(駐車場代は別だがアカネさんは車持ってない)』で借りられたそうだ。
『三万!? やっす! 金沢ならどれだけ安くても『五万』いくぜ!? 事故物件ってわけか(納得)』と『男子大学生』
『いやいや、実は『アカネ』が入居したのは『三月末』でさぁ、その『ボロアパート』は主に『学生向け』だったんだけど、『近くに新しいアパートやマンション』が建ったせいで『部屋』が全然埋まらなかったらしくて、急遽『値下げ』してたんだってさ。『見た目』でかなり警戒されたらしくて『大家さん』も『みんな勘違するから困った』っていってたよw』と『真理恵さん』
そしてその『アパート』には小さいが『キッチン』がついており、『シンク』にある『下水の入り口』から『妙な匂い』が『入居初日』から漂っていたそうだ。
『妙な匂い?? 臭かったってことです??』と『ノナさん』
『んにゃ(否定)、『ソヴァージュ』だよ』と『真理恵さん』
『はぁ?? 『蕎麦汁』??』と『男子高校生』
『『ソヴァージュ』、『男性用の香水』だよ、これくらい知らないと『女の子』にモテないぞ~?』
そう、なぜか『ボロアパート』の『キッチンのシンク』にある『排水口』から『人気の男性用香水』の『女の子が彼氏に着けてほしい香水ナンバー1の香り』が漂っていたそうだ。もちろん『アカネさん』は『排水口の奥に何かが腐ってる?』と思ったそうだが、『洗浄剤』を投入したり『消臭剤』を置いたりしてみてやっぱり『ソヴァージュ』の香りが漂い続けている。
『だから『アカネ』は『大家さん』に相談してみたんだけど、『大家さん』も『何が原因かわからない』っていっててさ。そんで『業者』を呼んで『排水パイプ』を見てもらったんだけど、『掃除された後で何もありませんよ』って言われただけだったらしいんだよね。でも相変わらず『ソヴァージュ』の香りが『キッチン』から『部屋全体』に充満してたらしくて、『アカネ』は仕方なく『そのまま放置』することにしたらしいよ』と『真理恵さん』
まあ『ソヴァージュ』は立派な『メンズ化粧品』だったし、何だったら『アカネさんの彼氏』も好んでつけていたそうなので彼女の方もそこまで『嫌』ではなかったらしい。なので『料理にまでソバージュのかおりつくかもw』とか軽く考えながらそのうち意識しなくなってたそうだが、『業者』に診てもらってから『二週間後』経ったくらいの時に、『夜7時ごろ』に『夕飯』を作っていると、
『やぁお姉さん。今暇? 俺とちょっと『お話』しませんか?』
明らかにそれは『若い男の声』で、若干『舌ったらず』な感じがいかにも『チャラい』印象を与えたという。なので『アカネさん』はフライパンから目を離して振り返り、
『え? 誰??』
だけど当然ながら『部屋の中』には『アカネさん一人』しかいない。『何かの聞き間違いかな?』と思ってまたフライパンに意識を戻すと、
『ねぇねぇお姉さ~ん、無視しないでよ~! ここだよここ、『いい匂い』が俺の『トレードマーク』なのよ~。ちょっとは『お話』しようよ~』
どう考えても聞き間違いではありえない。なので『アカネさん』が『返事してよおねえさ~ん!』と繰り返している『チャラい声』の出どころを探そうとして『手』を洗うと、『悲鳴』が聞こえてきたのである。
『うぎゃぁ!? ちょっと! いきなり水は無しだぜ~!』と『声』
『………え、もしかして『そこ』なの!?』と『アカネさん』
『耳』をそばだてるとどうやら『チャラい声』が聞こえてきているのは『排水口』からだったのである。なので『アカネさん』は『ソヴァージュの香り』の『発生源』に向かって、
『ちょっとあんた『何』なの!? 『幽霊』!? もしかして『死んだ前の住人』とか!?』
ちなみにだがすでに『大家さん』に『もしかして前の住人が自殺したとか的なやつあったんですか?』と聞いていたのだが、『大家さん』は『いや、『事故物件』とかじゃ全然ないですからw』と軽くあしらわれていたらしい。そして『声』も、
『やだなぁ、仮に『俺』が『この部屋で死んだ奴の霊』だったとして、なんで『下水管』に引きこもるなんて真似をするんだ?? 『寝室に残ってるシミ』とかの方がはるかに『其れっぽく』ない??』
『いや知らないから(苛立ち)。あんた何!? 『人間』じゃあないよね!?』と『アカネさん』
『『パイプ』の中に入って『会話』できる『人間』が世界中のどこかに『1人』はいるかもしれないよ~? そんな『稀少価値』のある『俺』のこと『格好いい』って思わないおねえさ~ん♡』
『えぇ…………何その考え方(困惑)。ていうか『幽霊』じゃないならあんたはマジで『何』なの??』
『じゃあ『排水口の妖精』とかでいいよ(適当)。そんなことより『お茶』しないおねえさ~ん♪』
『声』は『執拗』に『誘い』続け、『アカネさん』は『意味わからん』と思って最初は『無視』しようと思ったらしい。なぜなら『世の中のナンパ野郎』は大体それで『立ち去って』くれるからだ。だがこの『声』は『しぶとい』というか『動けない』というか、
『ねぇねぇおねえさ~ん! ちょっとは『お茶』くらいいいでしょう~?』と『声』
『ああうるさい! さっさと『私の家』から出てってよ! あんたなんてお呼びじゃないんだけど!?』と『アカネさん』
『そんな『冷たい』こと言わないでよ~! 『お姉さん』は『おっぱい』大きいから俺の『好み』なんだよね~! 『彼氏』いる? いないなら付き合ってよおねえさ~ん!』
『本人(?)』にとっては『誉めてるつもり』だったのかもしれないがただの『セクハラ』である。なので『アカネさん』は『いらっ』ときて、
『うるさい! 私は『彼氏』いるし、そもそも『排水口』に引きこもってるような『男』は好みじゃないってーの! もう出て行け!! あんたとは喋りたくないんだよ!!!』
すると『声』は、
『なんでだよお姉さん!? なんでだよ~! なんでだ!? なんで!? なぜ!? なんでだぁ!? なんでー!? なんで~!? なんなん!? なんでだよぉ~!! なんでだよ! なんでええええ!! なんでだぁ!? なんでなんでぇ!? なんでええええ!!!』
ひたすら『なんで』を繰り返すのだが、その『声量』がどんどん『大きく』なっていく。そしてそのうち『アカネさん』は『耳』を塞ぐが、『声』は『手』すら『貫通』して『鼓膜』を『鞭打ち』し続ける。
『なんでだよ~! なんでだ!? なんで!? なぜ!? なんでだぁ!? なんでー!? なんで~!? なんなん!? なんでだよぉ~!! なんでだよ! なんでええええ!! なんでだぁ!? なんでなんでぇ!? なんでええええ!!! なんなんだ!? なんでだよぉおおおおお!!!!』
『うぎゃああああああ!! やめてぇええええ!! (耳が)壊れるうううう!!』と『アカネさん』
そのうち『声』の『声量』はまるで『電車が通過する高架下』や『飛び立つ寸前のヘリコプターのそば』並みの『爆音』になり、そのまま『アカネさん』は『気が遠く』なって気づいたら『キッチン』で倒れたいたそうだ。
…………と、そんな『こと』があって以来『アカネさん』は自分の『アパート』に帰らなくなり、すぐに『引っ越し』したそうである。そしてその『引っ越し作業』を手伝っていた『真理恵さん』がその話を『アカネさん』から直接聞いたのである。
『………『排水口のナンパ野郎』?? なにそれ?? 『気絶』した後なんかあった??』と『真理恵さん』
『いや、『意識取り戻して』からは特に何もないし『声』も聞こえなかったけど、相変わらず『ソバージュ』の香りはしてたから『気持ち悪く』てさ…………だからもうあれから『一回』も部屋には戻ってないんだ~。しかもありえなくない? 『大家さん』にそのこと言っても『病院行った方がいいですよ』って信じてくれないんだよ~!?(怒)』と『アカネさん』
『はは、それはひどいね~(まあ当然の反応だわな)』
それで結局『アカネさん』が『引っ越し』た先で『特に何もなかった』のでこの『話』は終わり…………とはならなかった。実はその『数日後』に『真理恵さん』が『例のソバージュの香りがする部屋』に『入居』したのである。
『………え、なんで『真理恵さん』は『悪霊(?)のいる部屋』に引っ越したんですか??』と『尼御前さん』
『え、おかしい? だって『私』は別に『幽霊』とか怖くないし、ただ『ナンパ』してくるだけなんでしょ? やっぱり『家賃が安い』ってのが魅力なんだよね~。『古い』のも別に気にしないしさ! それに『ナンパ野郎』に絡まれるのは慣れてるからね♪』と『真理恵さん』
どうやらこの『真理恵さん』はかなり『図太い性格』な人らしく、『奇怪なナンパ野郎』が住み着いてることよりも『家賃の安さ』の方が大事だったらしい。なので早速『入居』し、『初日の夜』には例の『声』を聴いたのである。
『ねぇねぇおねえさ~ん! 俺とちょっと『お話』しない~!?』と『声』
『………あんたが噂の『排水口に引きこもってるなナンパ野郎』? へぇ、『声』を聴く感じは『普通の若い男』って雰囲気だね』と『真理恵さん』
『およ? 俺のこと知ってるの?? 知ってるのに住んだんだね~! 俺に『運命』感じちゃってる的な?』
『あんたのおかげで『家賃』が下がるかな? って思ってたんだけど、『大家さん』が『事故物件でも何でもないから家賃は下げない』って言われちゃって『目論見』が外れてるんだよね~(怒)。だから正直言うとあんたのことはかなり『嫌い』かな~?(笑顔)』と『真理恵さん』
どうやら『大家さん』は『アカネさんの訴え』を本気で『頭の病気』だと思っていたらしい(汗)。そして『声』も笑って、
『ひははは! それは残念だね~! でも『俺』としては『ラッキー』かな? なんか『俺がいるから』ってだけで『値段が下がる』ってのは、やっぱり『気分悪い』じゃん?? むしろ俺は『値段が上がる』方がうれしいわけでさ~、どう『お姉さん』? 俺ら二人で『この部屋』の『値段』をあげてみない?』
『ははは! なにそれ『値段をあげる』って具体的に何するわけ?(笑)』と『真理恵さん』
『こうやって『楽しい話』ができるってだけでも『値段が上がる』とおもわね? ほら最近流行りの『シリ』みたいな感じだよ、『俺』に『部屋にいい香りをつけて』とか言ってくれればすぐにでも『実現』するからさ!』
『『シリ』はもう『流行』とかじゃなくて『普通』だよ情報古くない? あんたおもしろいね~! でもちょっと私的にも『なし』かな~。だって私『チャラい男』嫌いだし。ていうかあんた『人間』じゃないでしょ? 残念だけど『人間』じゃないと私は『恋愛対象』にならないんだよね』
『えぇ!? そりゃあないぜ!? なんでだよ~! お姉さんってすごい『顎』が『尖がって』て俺の『好み』なんだよ~! 『韓国』で『プチ整形』したんでしょ? 付き合ってよおねえさ~ん!』
『それ『誉めてる』つもりならマジでやめた方がいいよ~、一発で『蛙化』されるからね~(笑顔)』
『なんでだ!? なんで!? なぜ!? なんでだぁ!? なんでー!? なんで~!? なんなん!? なんでだよぉ~!! なんでだよ! なんでええええ!! なんでだぁ!? なんでなんでぇ!? なんでええええ!!!』
またも『声』がひたすら『なんで』を繰り返し、しかも『声量』がどんどん大きくなっていく。さしもの『真理恵さん』も思わず『耳』を塞ぎながらも、負けじと叫んだそうだ。
『そんなに納得できないなら『出てこい』よ! 『排水口』から出て来てくれないことには『キス』の一つもできないでしょうが! 良いから今すぐそこから出てこいって言ってんの!!』
…………、
すると『ピタリ』と『大声』が止まり、最後に『か細い声』で、
『………ここから出して』
それ以後『ナンパ野郎』は一言も発さなくなり、気が付くけば『ソバージュの香り』もいつの間にか消えていたらしい。なので『後日』もう一度『大家さん』に確認をとったが、
『本当にあの『部屋』では『何もなかった』んですか? 絶対に何かありましたよね!? 『住んでた子供が行方不明になった』とかそういうことありませんでした!?』と『真理恵さん』
『ですから本当に『無い』んですって! ここ『十年』ほどあの部屋は『○○大学の学生』にしか貸してませんし、『アカネさん』以前の住民も『変な声が聞こえる』とか一言も言ってなかったんです! もし『悪霊』がいるのならそれは『アカネさん』が持ち込んだんじゃないんですか!? まあ私は『真理恵さん』にも『精神科』を受診することをお勧めしますけどね!』と『大家さん』
『失礼な…………(怒)。でも本当に何もないなんて…………あの感じは絶対『何か』あるはず…………』
最後に『真理恵さん』が話を締めくくって、
『………そんで『今』私は『アカネ』と一緒に『あのアパート』で本当に『いわくつきの何か』がなかったのか調べてるんだよね。でも本当に今のところ『其れらしい話』は見つかってなくて…………でも『残穢』みたいに『もっともっと時代を遡ったら実は呪われた土地だった』とか出るかもしれないって思っててね。だからもし何かが『みつかった』ら皆に報告するね』
『あら~、それは面白そうね☆ 報告楽しみにしてるわね~♪ …………でもこれはちょっとした『雑談』だけど、『精神科に行くべき』と言う言葉が『罵倒』と受け取られる『社会』は『よくない』と私は思うわ~。だって本当に『精神科』に受診した方が『幸福』になれる人は確実に存在するんですもの。それに『精神科で治療を受けてる人』に対する『差別』にもなって『治療』の妨げにもなるから、そういう『風潮』はなくした方がいいと思うわね~…………あ、『真理恵ちゃん』を責めてるわけじゃないのよ?』と『小豆さん』
『あ、いえ、本当にその通りです…………(殊勝)』と『真理恵さん』
『小豆さんは本当に『聖人君子』のようじゃのぅ、いや『天女か女神』と呼ぶべきか…………(恍惚)』と『ノナさん祖父』
『おじいちゃん…………(呆れ笑い)』と『ノナさん』
『小豆さん宅』の周りでは『除雪車』が道路の雪を運び出しており、『ウィンウィン』と大きな音が家の中にも聞こえてきていたそうだ。




