其の八十三…『石川今論、北陸奇談『その三:『二少年、金沢市内デ遭難ス』』
これは『黒百合丘学園』の『二年生』である『石動先輩』と『不動寺先輩』という『二人の先輩』の身に起ったことだそうだ。この話は『石動先輩』が『昼休み怪談部』の『部室』を尋ねて来て語ってくれたことである。
「…………これは『少し前』の、あの『金沢の街中』でも『一晩』で『30センチ以上』も『雪』が積もった『あの日』のことだ、『俺』と『純也(不動寺)』は『朝』は全然『雪』は降ってなかったから『自転車』で登校したんだけど、『帰り』は『猛吹雪』になったから『自転車』を押して『徒歩』で帰ってたんだよな……」と『石動先輩』
「え? でも『あの日』は『数日前』から『遅い時間に急激に積もる』って『天気予報』で言ってましたよね??」と『私』
「『積もるかも』だったし『遅い時間』は『下校後』だと思ったんだよ(ぶっきらぼう)。ほらあるだろ? 普段『自転車通学』してると極力『自転車』で通学したくなるんだよ、だってそれが一番『楽』だからさ。わかんないかな?」と『石動先輩』
「ま、まあわかりますけど……(汗)」と『私』
「まぁあぁ(汗)。とりあえず『自転車』を押して帰ったんですね! この『怪談』自転車は重要です??」と『ユズハさん』
「いや全然。途中で『捨てた』し……えーと、どこまで話したっけ……ってまだ最初だったか……』と『石動先輩』
その『大雪の日』は『昼過ぎ』くらいから『風が強くなっていた』ために『二人の先輩』は『市街地』を『吹雪』に吹かれながら歩いていた。『目』を開いて前を向いて歩いていると『大粒の雪』が『眼球』にぶつかってくるのでそれだけで『痛い』し、さらに『風』自体が『アイスピック』みたいに鋭く突きさしてきて『顔を前に向ける』ことすら辛い。そして『瞬間的』に『見えない壁』みたいな『突風』がぶつかってきて『二人』は思わず『足』を止める。
ビュゥウゥンッ!!!
『ぶわ!? 今日はちょっとやばすぎだ! 近くのコンビニに避難しようぜ!!』と『石動先輩』
『そうしようぜ! 確かちょっと先に『ローソ〇』があったよな……』と『不動寺先輩』
ちなみに二人が歩いていたのは『金沢市内』を流れる『犀川』にかかっていた『若宮大橋』の近くだったそうだ。ちょうど『金沢駅前』から『野々市北部方面』を通って『国道八号』につながる『交通量の多い通り』であるわけだが、『二人』が『突風』でとじた『目』を開くと『絶句』したそうだ。
『『…………ここどこだ??』』と『二人』
彼らが『周囲』を見渡すとそこには『道路沿い』に並んでいる『雑居ビル』や『店舗』も『一つ』もなければ、もちろん『帰宅ラッシュ』でゆっくりと走る『自動車』も『一台』すら見当たらない。というか『足元』には『道路』どころか『コンクリート』すらなく、『膝まで積もっている雪』から足をあげるとその下もやっぱり『雪』だ。
そして『周囲』はただひたすら『真っ白な世界』が続いているだけで、まるで『濃い霧の中』にいるような感じだった。だけど『吹雪』がずっと吹いているので『視界を埋め尽くす白色』が『霧』ではなく『雪』であることは『二人』にもわかった。
「…………『吹雪』で視界がすっげぇ狭くなってる……てことか!?」と『石動先輩』
「確かに『吹雪』は吹いてるけど……でも『俺らの回り』はそんな『すんげぇ感じ』じゃねーよな!? なんか『建物と車』が『消滅』したみてーじゃねーか???』と『不動寺先輩』
するとそこに『ザクザク』と言う音ともに『数人の集団』が『白い吹雪』の中をかき分けて『二人』に近づいてきたのだが、その格好が『登山者』だったらしい。
『…………え? なんで『登山ルック』…………?? ここは『山』か??』と『不動寺先輩』
『…………あ、そういえばこの『光景』なんか『デジャヴ』だと思った……昔『親父』と『登山』したときに遭遇した『吹雪』とそっくりじゃんな……』と『石動先輩』
その『登山者の集団』の『先頭の人』が『杖』を片手に大声で話しかけてきたそうだ。
『君たちは『学生』か!? なんで『こんな所』で『そんな格好』で歩いている!? しかも『自転車』だと!? もしかして君たちは『幻覚』なのか!?』と『先頭の人』
後ろの人たちも『当惑した様子』で『二人の先輩』たちを取り囲み、『自転車』を触って『ほ、本物だよな……??』と口々に『驚愕』している。どうやら『石動先輩』と『不動寺先輩』を『登山者』が『低酸素』や『疲労』で見てしまう『幻覚』だと思っているようだった。
『いやいや! 俺等は『幻覚』じゃないっすよ! つーかここどこっすか!?』と『石動先輩』
『俺らは普通に『吹雪』の中を『家』に帰ってただけですよ! そしたらいつの間にか『ここ』に来てまして……ここってもしかして『雪山』とかなん……』と『不動寺先輩』
だが『二人の先輩』はそこで『あること』に気づいて『言葉』を停止させてしまった。よく見ると『登山者たちの集団』の『全員』の『顔』に『黒い筋と、そこから黒い液体が流れ落ちた痕』のようなものが『大量』にあることに気づいたからだ。
(え、なんだこの人たち……あれって『ケガ』か??)と『不動寺先輩』
(ぜ、『全身血だらけ』ってことか?? な、なんでそんな状態で……)と『石動先輩』
『二人』はその時点で『登山者集団』と『距離』をとろうとする。そして『登山者』たちの方はあまり気にしてない様子でこんなことを言ってきた。
『……どうやら『君』たちは『遭難者』のようだな。このままだと『凍死』するから『私たち』に『ついて来て』くれ。『私たち』が『道案内』しないと『人里』まで戻ることはできない、こんな『視界不良』の状態じゃあ『素人』が『勘』で動くのは危険すぎるし、かといって『ここで待機』なんて『もってのほか』だからな……その『自転車』は『荷物』になるから『捨てて』くれ! さぁ出発するぞ! ついてきてくれ!』と『先頭の人』
そう叫んで『登山者』たちが『元来た道』を引き返そうとする。だがその時だった、『二人の先輩』の『右側』の『真っ白な壁の向こう』から『聞きなれた声』が聞こえてきたのである。
純也ああああ!! そっちはだめだあああああああ……!
和弘おおおおお!! そいつらについて行ったらだめだあああああああ……!
それは明らかに『石動先輩のお母さん』と『不動寺先輩のお父さん』の『声』だったらしい。しかもそれだけでなく『他の家族の声』も聞こえてきて、『皆』が『こっちにこい』と叫んだそうである。
こっちだあああああ!! 二人ともこっちにきなさいいいい!! 『そいつら』についてくと帰れなくなるぞおおおお……!!
しかも『声』が聞こえてくるのと同時に『白い暗闇』の『向こう側』に『光』が見えてきたそうである。逆に『登山者たち』が向かう先は『光の届かない白い暗闇』だったが、『登山者』たちが叫ぶ。
『騙されるな! 『あれ』は君たちの『家族』じゃない! 『雪女』たちが『獲物』を誘ってるんだ! 『我々』は『ここ』をよく知ってるから分かるんだ! さぁこっちに来なさい! そっちに行くと確実に死ぬぞ!!』と『登山者』
騙されないでええええええ!! 『そいつら』があなた達を騙そうとしてる『雪男』たちよおおおおお…………!!!
『…………そ、そんなこと言われても……(しどろもどろ)』と『石動先輩』
『わかんねぇよ……つーか『今の状況』についていけてねーよ……(半泣き)』と『不動寺先輩』
正直なところ『二人の先輩』にとっては『どっちもどっち』だった(当然)。そして『登山者』たちが『焦った』のか『二人の先輩』の『腕』を掴んで強引に『引っ張ろう』とすると、『不動寺先輩』が反射的に『突き飛ばして』から離れたのだ。
『あ!? 待て! 私たちのことを信じて……』と『登山者』
『信じられるか!! つーかなんなんだよこの『状況』はよ!? 何が起こってるんだよマジで!!(激怒)『雪男』だか『雪女』だか知らねーけど『俺』にとってはどっちも『心霊現象』なんだよ!! でも『俺』はあの『声』の方を信じる! だって『家族の声』だからな! その点『お前ら』は『血だらけの知らないやつら』じゃねーか! 怪しすぎだろ!! もう俺に構うんじゃねぇ! 俺はあっちに行くからな! 和弘! お前も行くぞ!!』と『不動寺先輩』
だが『石動先輩』はここで『あることに気づいた』らしい。
『…………なぁ、今気づいたんだけどさ『純也』。俺等ってさっきからずっと『動いてない』よな?』
『…………はぁ?? 何が言いたい??』と『不動寺先輩』
『いや、だってさ、俺等ってもともと『いつもの道を前を向いて歩いていた』わけじゃん? そんでいつの間にか『雪山(?)』に『ワープ』してたことに気づいたけど、その時点で『俺ら』はずっと『同じ方向』を向いたままだよな?』と『石動先輩』
『…………『和弘』は確かに動いてねーな。俺は今動いたけど』と『不動寺先輩』
確かに『石動先輩』は『雪山(?)』に『ワープ』する前はずっと『前』を向いて歩いていて、『雪山(?)』への『ワープ後』もずっと『同じ方向』に向いたままだった。そりゃあ当然だが『突然の異常事態』に『唖然』として固まっていたからだ。もし『自転車』を引いてなかったら『動き回って』いたかもしれないが、『自転車』があったので『首』だけ動かしていて、『体の向き』自体は変わっていない(偶然そうなっただけらしいが)。
そして『石動先輩』は『前』………つまり『登山者たちが来た方向』を指して、
『…………『普通』に考えたらさ、いきなり『雪山』に『ワープ』するわけないし、ましてや『血まみれの登山者』とか『雪女』とかに遭遇するなんてことも『あり得ない』わけだろ? そういう『あり得ないこと』に遭遇した時はさ、普通はこう思うよな? 『夢』か、あるいは『集団幻覚』』とか……』
『…………つまり俺らは『幻覚』を見てるだけで、ずっと『若宮大通り』のあたりにいるってことか?』と『不動寺先輩』
『そりゃあだって、『異常な現象』を素直に信じられるほど俺は『素直』じゃねーからな。だから確実に俺は『前』を歩く。べつにこの『血だらけのおっさんたち』を信じてるわけじゃない。俺は『自分』を信じてるだけさ……なぁ『純也』、お前は『俺』を信じてるくれるか?』と『石動先輩』
そう『優しく語りかけた』わけだが、『不動寺先輩』は首を横に振ったらしい。
『…………すまん『和弘』、俺はどうしてもその『血まみれのおっさん』たちが『怪しい』と思っちまってるんだ。だってお前よく見てみろよ! そのおっさんたちの『青い顔』をさ! しかもさっきから『白い息』が全然見えねーんだよ! ぜってー『呼吸』してねーだろ! だから俺は『家族』を信じるぜ!』と『不動寺先輩』
『おい待てって『純也』! おい! 待ってってー!!』と『石動先輩』
どうやら『不動寺先輩』は『登山者』たちの見た目が『どうしても生理的に受けいれられなかった』らしい。なので『一人』で『光』の方へと歩きだし、『石動先輩』が慌てて追いかけようとしたが『登山者』たちに止められた。
『よせ! もう『超えて』しまった! もう手遅れだ! 今ああやって彼『歩いてる姿』が見えてるが、あれはもう『偽物』だ! 彼はすでに『死んでいる』ぞ!』と『登山者』たち。
『はぁ!? 何言ってんだよまだ『追いつける』だろ! ……ああくそ! 見えなくなっちまったじゃんか!!』と『石動先輩』
結局目のまえで『不動寺先輩』は『吹雪』の中に溶けるように消えて見えなくなってしまったそうだ。しばらく『石動先輩』は『登山者』たちに怒っていたが、かといって『追いかける』ことはできなかった。諦めて渋々と『登山者』たちの案内で『前』に歩き続ける。
待つんだあああああああ!! そっちにいくなあああああ……!! こっちに来るんだあああああ!!
キキーッ! ドン……、
……………………、
…………、
チッ…………、
……、
…………またも『目を開けてられないほどのもう吹雪』が『石動先輩』の『顔面』を打ち付け、また『目』を開けるとそこは見慣れた『若宮大橋』にほど近い『大通り』だったという。ちょうど彼は『赤信号』の横断歩道の前で止まっていて、周りには『自分と同じ』ように『雪まみれ』になっている『サラリーマン』がいたらしい。
『…………戻ってこれた…………って、『純也』は!?』と『石動先輩』
彼が『振り返る』とすぐに『行方』がしれたらしい。ちょうど『人だかり』ができていて、今しがた『警察』と『救急車』が到着したばかりのようだ。『周辺の野次馬』をかき分けて『血まみれの不動寺先輩』が『救急車』に搬入されたのが『チラッと』だが見えたらしい。そして『車の運転手』が『警察車両』に乗せられたのも見えた。
もはや『野次馬』達に聞く必要もない。『石動先輩』はそこで『この怪談』を締めくくって、
「………『純也』は『素直な奴』だったんだ…………俺が『飛び出す』前にちゃんと止めるべきだったって今でも『後悔』してるよ…………」
今度『昼休み怪談部』で『墓参り』することを『ユズハさん』がその場で決定したのだった。




