其の…『怪談小豆夜話:『金沢東山牡丹『闘』記『其の六』と『霞を食べる仙女ダイエット』』
『今回』は『其の百十七』の『続き』である。『東京から来た不思議なお婆さん:小豆さん宅』で開かれた『怪談座談会』で『滝本君』と言う『男子高校生』が『自分の経験談』を話している。
『…………まあ『戦場の霧』云々の話は正直『俺』もよくわかってないんであんまり詳しい説明はできないんですけどね……でも『これから話すこと』を聞いてるときに『霧』を頭の片隅に入れておいてもらえると『ちょっとはわかりやすいかな?』と思いますよ。ただいかんせん『俺自身』が『あの時何が起こっていたか』をちゃんと『判ってない』から『マジでわかりづらい』と思うんで……』
すると先ほど突然『乱入』してきた『牧人さんズ』のうちの一人が喋り始めた。
『『10年前』のことだ。『南加賀』の『若い女性』の間で『不思議なダイエットマシン』が流行したことがあった。題して『食べられる霧発生装置』で、見た目は『小型の加湿器』で中に水を入れて『水蒸気』を発生させるんだが、その『水蒸気』を口や鼻から『吸う』と不思議なことに『満腹』になって何も食べなくてもよくなるんだ。『小松』の郊外………ほぼ『加賀(加賀市)』みたいな地域にあるボロい小屋に住んでいた『小汚い男』が売っていて、『女たち』がその『ボロ小屋』に行列を作って買い求めていたわけだ』
『南加賀』とは『石川県加賀地方』のうち『小松市』を中心に『能美市』、『川北町』、『加賀市』一帯を指す地域名である。おおよそ『手取川以西地域』と呼びかえることもでき、同じ『加賀地方』と言いながらも『手取川以東』の『石川中央(金沢都市圏)』とは全く別の地域といえる。例えば『ハニベ巌窟院』と言われても『金沢都市圏民』は全然わからないだろうが、『小松都市圏民』なら知らない人はいない、という具合だそうだ。
といっても『交流』は普通にあるので『かかわりがない』わけではない(そもそも『小松』よりさらに西の『福井県』と『石川県』の『交流人口』が『一日2000人』に達するのだから当然なのだが)。
まあそんな『ローカルネタ』はさておき、この『牧人さんズ』の話に耳を傾けていた『小豆さん』がちょっと『ワクワク』した様子で、
『へ~! そんなものが流行ってたのね~! それで? 一体その後どうなったのかしら?』と『小豆さん』
『…………別にどうもなってない。結局『霧』は『霧』だったから『栄養失調』で倒れる女が続出した。だから『警察』がその『業者の男』を捕まえようとしたら『山中温泉』へと車で逃亡し、そこで『車』を乗り捨てて『山』の中に入ってしまった。以後は『行方不明』で、なぜかこの『男』がいなくなると『ダイエットマシン』の『効果』も消えて『普通の加湿器』になってしまった。それだけだ』と『牧人さんズ』
『あら~! と言うことは『狐に化かされた』ってことかしら? 『ちゃんと説明しない怪談』って私は好きよ? だって『詳細な説明』が入るとなんだか『作り話っぽい』ですものね♪ 『牧人さん』だったかしら? あなたなかなか『お話』のセンスがあるみたいね~?』と『小豆さん』
『…………ふん、下手なお世辞だ(照れ)』と『牧人さんズ』
『小豆さん、いくらなんでも多少は『拒絶』してくださいよ………(心配)』と『ノナさん祖父』
さてさて、『滝本君』と一緒に『行動』していたのは『氷室麗華さん』と『福沢京子さん』、そして『富野明日香さん』の『合計四名』だけである。そしてその『四名』がふと、少し離れた場所から何やら『怒号と悲鳴と破裂音』のようなものが響いてきているのに気づいたそうだ。
パン! パン! パン!
うがああああああ!! ばけものおおおおおおお!!
ぎゃあああああああ!!
『滝本君』がすぐに振り返って、
『あ、あっちの方だよな? あっちで『化け物』と『討伐隊』が戦ってるんじゃねーか? 早く駆けつけた方が………』
だが『富野さん』が彼の肩を叩いて、
『落ち着き給え少年。ただ『声や音が聞こえる』というだけでは判断できないんです。だって『化け物』が『声真似』をして私たちを『誘っている』のかもしれないので』
『…………ええ、『怪異』との戦闘で最も重要なことは『常に冷静さを保つこと』よ。ちょっとした『音や声や姿』をみただけで慌てて駆け寄ってはダメ。たとえどれだけ『真実らしく見えた』としてもね………』と『氷室さん』
すると『騒音』は『ピタリ』とやみ、しばらく『無音』が続いたのちに今度は『路地の向こう側』から『1人の男性』が姿を見せたのだ。遠目からだと『討伐隊』の『一人』に見える。
『東山地区』は『城北大通り(国道359号)』こそ『大きな通り』だが、そこから横道に入ると『車一台』が何とか通れる程度の『道幅』かつ『グニャグニャ』に折れ曲がっていてまるで『迷路』のようになっている。そんな『細道』に『民家』と『古民家の店舗』が入り乱れており、しかも『観光客』が山のように通るのでものすごく『ややこしい』場所である。といっても『夜間』に『観光客』はいないのでまだ多少広くは感じるが。
だが今はその『入り組んだ細い迷路』のせいで『視界』が悪く、いったいどこの建物の陰から『何者』かが『飛び出してくる』かもわからない。そんな風に『滝本君』が心配していたら案の定、『通りの角』から『一人の男』が姿を見せて叫んだのである。
『! 『氷室さん』か!? 俺だ! 『中沢』だ! 『化け物』が『宇多須神社』を『突破』してきたから、俺達は『龍国寺』に一旦立てこもったんだ! 他の仲間たちも『龍国寺』に集結してるから、君もそっちに向かってくれ! 一応『慈雲寺』、『蓮昌寺』、『西養寺』、『宗龍寺』、『真成寺』はまだ『陥落』はしていない! だが『協力的』なのは『龍国寺』だけだ!』と『中沢さん(?)』
『中沢さん』は確かに『討伐隊』の参加者の一人であり『滝本君』も多少だが『面識』はあるそうだ(近所に住んでるので。だが直接話したことはないらしい)。そして『宇多須神社』は『浅野川』に近い『東山一丁目』に鎮座し、そこからすぐ『北』に『慈雲寺』、『蓮昌寺』、『西養寺』が一直線に並んでいる。
そしてそこからさらに『北』に『真成寺』と『龍国寺』が建立されているのである。これらの『寺社』はちょうど『卯辰山』と『国道359号』を『区切る』ように配置されており、なるほど、確かに『寺院線』と呼んでもいいかもしれない。そしてこの『寺院線』のうち『宇多須神社』が『南の端』にあり、『龍国寺』が『北の端』にあると思えばいいだろう(実はさらに北にも寺社はあるのだが)。
その『地図』を『滝本君』達は軽く確認した。そして『中沢さん(?)』がこっちに『近づこう』とすると、すぐに『氷室さん』が鋭く制したのである。
『待ちなさい! そこで止まって! 貴女は自分が『人間』であることを『証明』しなければいけないわ!』
『えぇ!? 俺は見ての通り『中沢』ですって! どうやって証明しろっていうんですか!?』と『中沢さん(?)』
そこで『滝本君』に『福沢さん』が言った。
『クスクス…………ねぇ、こういう時の『人間であることの証明方法』ってどんなものがあるか知ってるかしら?(クスクス)』
『え? えっと………あ、『狐の窓』とか聞いたことあるぜ!』と『滝本君』
『クスクス…………『正解』だわ。でも『其れだけ』じゃないのよ。例えば『眉唾』なんて言葉がある通り『眉毛に唾を塗る』だけでも相手が『化けているのか、そうでないのか』を見破ることができるわ。また有名な方法としては『もし』を繰り返すってのもあるわね』と『福沢さん』
『『もし』を繰り返すって??』と『滝本君』
すると横から『富野さん』が、
『聞いたことありませんか? 遠くから『もしもし』って呼びかけるんですよ。古来『怪異』は『同じ言葉を繰り返すことができない』とされてまして、普通の人間なら『もしもし』って声を掛けられたら『もしもし』と返すわけですが、『怪異』だと『もし』としか言えないってやつですよ』
『ああ、なんだその話は聞いたことあるぜ(合点)。『福沢さん』の言い方が分かりづらいから分かんなかったぜ。最初から『もしもし』って言ってくれたらわかったのにさ』と『滝本君』
すると『福沢さん』が腕を組んで、
『私その『伝承』は『嘘』だと思ってるわ。だって『私』は何度も『怪異』からかかってきた『電話』をとったことがあるけど、普通に『ますます』とか『もろもろの』とか『人々』とか言ってたんですもの』
『でもなぜか『怪異』は『もしもし』だけは言えないんですよね。ですからこの『確認方法』はちゃんと『有効』ですよ』と『富野さん』
『『もし』を繰り返せない人は『人間』にもいるわよ』
そこで『滝本君』は『強い違和感』を抱いた。なのでなんとなく『福沢さん』に向かって、
『…………ちょっといいすか? 『もしもし』』
すると『福沢さん』は、『口を三日月』の形にして、
『…………『もーし』』
『…………………『もしもし』』と『滝本君』
『…………………『もーし』』と『福沢さん』
『…………………』
『…………………クスクス』
そして『氷室さん』の方は『中沢さん(?)』に対してこの『確認方法』を要求していたのである。
『あなたが『牡丹燈籠』かそうでないか知りたいから確かめさせてもらうわ! 『もしもし』! 同じ返事をして頂戴!』と『氷室さん』
『判ってますよ! 『もしもし』! これでいいですか!?』と『中沢さん』
『…………………ありがとう。確かにあなたは『本人』のようね。疑ってごめんなさい』
『いえ、今は『戦闘中』なのですから当然の心構えですよ』
そういって『中沢さん』が近づいてきて『合流』した。彼が持ってきた『情報』をすぐに『共有』する。
『先ほど『化け物』の襲撃で『討伐隊員』達の大半が『龍国寺』に一旦逃げ込みまして、現在そこから『再出撃』を行っています。現状我々『討伐隊』は『三つのチーム』に分かれてますね………』
そういって彼が『スマホ』で『地図』を出して、
『…………ここが『龍国寺』ですね。今現在『住職』と『宮野さん』と他『4名』がここの『守備隊』になって『化け物』が『境内』に入ってこないように警戒しています。一方『石井さん』をリーダーとして『自分』を含む『五名』が『西養寺』を『確保』しに向かってますね。そして『坂下さん』と『四名』が今現在『音信不通』です……』
その『坂下さん』たちは実は最初『滝本君』と一緒に行動していた大人たちである。『化け物』に連れてかれそうになった『滝本君』を助けた後、なぜか『行方不明』になっているのだそうだ。
そこで『中沢さん』がまた聞こえ始めてきた『騒がしい音と声』の方を一瞥してから、
『…………………ただ『彼らが戦ってるらしき音』が先ほどから『断続的』に聞こえてくるんですよね。方面的に『宇多須神社』の方ですので、あそこを『奪回』しようとしてるのかもしれません………が『電話』しても全く連絡が取れないので『不明』です。『隊員』の中には『すぐに宇多須神社に向かうべきだ! あそこを取り戻せ!』と主張してる人もいますが、私は『誘っている』とみてますね………今後はどうするべきか我らを『指揮』してください『氷室麗華さん』。あなたの言葉なら『全員』大人しく従いますから』と『中沢さん』
『『三つのチームに分かれてる』って言うけどそのうち『一つ』は『生きてるかどうかも分からない集団』ってことかよ………(蒼白)』と『滝本君』
『クスクス…………かなり『質のいい情報』が早々入ってきたわね。『運』がいいわよ『私たち』は。もしかしたら『今回』で『倒せる』かもね?(クスクス)』と『福沢さん』
すると、そこで『富野さん』の『スマホ』が鳴り始める。彼女が『画面』を眺めてから、
『……………『お嬢』、早速かかってきましたよ、『坂下さん』からです。出ますか?』
彼女が示した画面には確かに『坂下さん』と書かれていたのだった。次回へ続く。




