其の百二十二…『現代『天竺』奇談:『夜叉の心臓』後編』
『其の百二十』の『続き』、『ラーイガド城』に巣くう『夜叉』たちは『苦行僧』に『滅亡』を予言されたために、『自分たちの心臓を隠す』ことにしたそうだ。
だがそこで『私』は首をひねって、
「その『サドゥー』って人達は『お坊さん』なんですよね? 『祟られない』のはわかるとしても『相手を呪う』とかってそんなこともできるんですか?」
『インド人留学生』の『ガヌーシュさん』は『鯖江』の『スマートグラス』をつけていて、髪形が『オールバック』なこともあって妙に似合っていた。さらには椅子に座って足を組み、
「ええ、そもそも『呪詛』が使えないのにどうやって『化け物』から畏れられるんですか? あ、でも『日本人』はすぐ誤解しがちですけど、別に『サドゥー』が使う『呪い』は『暗黒系パワー』とかじゃないですからね? 『聖なる力』で『不心得者』を罰してるだけなんです」と『ガヌーシュさん』
「『やっくん』、『日本霊異記』を読みなさいよ。昔の日本の『お坊さん』も『信仰心』を持たない農民に『呪い』かけたりしてるから」と『ユズハさん』
「そ、そうなんですね……なんで『日本』だと『呪い』って『暗黒系パワー』の『イメージ』になったんでしょうか?」と『私』
まあそういう話は『民俗学』の本でも読めばいいわけで(割愛)。ちなみにだが『霊能力を持っていた男の子』以外の人たちには『夜叉の声』は『ライオンの吠え声』にきこえていたらしい。
『『心臓』はできる限り『遠い所』に隠すべきだろう。『外国』のそこれそ『インドと国境が接していない国』が望ましいな』
『だが『インド人移民』が多い土地にした方が『自然』だ。俺たちが『心臓の隠し場所』を守るためにもその方がバレにくい』
すると『ある夜叉』が『妙案』を提出したのである。
『……いや、待ってくれ。『遠い国に隠す』ことは俺も賛成だが、『俺たち』が『見回り』なんかしたら『バレる』だろ。だってどんな『遠い土地』に隠そうが、『俺たち』が周辺をうろついてたら絶対に『そこに何かあるんだろ』と思われるにきまってる。『完全に隠蔽』するのなら『俺たち自身』も『隠し場所』に一切近づかないのが一番だ。それどころか皆『隠し場所に関する記憶』もすべて『消して』しまう! それが『最善』だ!』
だが他の『夜叉』達は不安になって、
『た、確かに『俺たち』が『隠し場所』を護衛してたら『それ』で位置がバレるだろうが……それでも俺達の『心臓』だぞ!? 『サドゥー』どころか『赤ん坊』でも『握りつぶせる』くらい『柔らかい』のに……』
『心配なのは俺だって同じだが、『サドゥー』はたとえ『地球の裏側』だろうが自分は『その場』から一歩も動かずに『俺達の心臓』を『攻撃』できるんだぞ! 『位置』がばれたらどんな場所に隠そうが意味ない! そして『サドゥー』と言えども『俺達から手掛かり』を得られなかったら簡単には見つけられん! そう思わないか『お前』も!?』
どうやらこの『夜叉』たちの中には『女夜叉』もいたらしい。彼女もうなずいて、
『私は『賛成』よ。誇り高い『悪神』たちが何を弱気になってるんだか……(呆れ)……なんだったら『全員の心臓を一つ』にした方が善さそうね。そうじゃないと『憶病風』に吹かれた奴が現れて『仲間を売ったり』しそうだものね!』
『『『……く、くそおおおお!! 言ってくれるじゃねえかあああ!! やってやろうじゃねええかよおおおお!!!』』』と『夜叉』たち。
このようにして『夜叉』たちは『自分たちの心臓』を『一つ』にまとめ、それを『インドから遠い国』に『隠す』ことにしたのである。そしてたとえ何があろうとも『心臓』には『一切近づかない』こととし、さらには『心臓の位置』に関する『記憶』もすべて消し去ることにしたのだ。これでたとえ『仲間』の一人が『サドゥー』に捕まって『拷問』されようとも絶対に『隠し場所』がばれないようにしたのである。
『……それじゃあ『心臓』は具体的にどこに隠すんだ?』
『俺に『名案』がある。まずは『これ』にいれるぞ』
その『これ』が何なのかは『霊能者の少年』にはわからなかった。彼は『会話』が聞こえてるだけだったからだ。
『……よし、これを『今から案内するところ』に隠しておく。ついてこいお前ら!』
そういうなり『夜叉』達は『羽虫』に化けて『ラーイガド城』を飛び出し、空の彼方へと消えたらしい。そうなるとさすがに『霊能者の少年』ももう会話は盗み聞きできなくなったので、代わりに『親』と『サドゥー』にこのことを報告したそうだ。
そして『サドゥー』と『地元の人』たちはすぐに集まって『作戦会議』をたて、そこで『サドゥー』が『戦いの指揮』を執ることを宣言したという。
『もうこれ以上『化け物』どもの好き勝手にはさせん! すでに『バラナシ(ヒンドゥー教の聖地の一つ)』に連絡を取って『バーラタ(インド)』だけでなく『ネパール』や『スリランカ』、『バングラデシュ』などから『祈祷師』を呼び集めているのだ! これは『総力戦』だ! 必ず『悪鬼』どもをうち滅ぼすぞ!』
彼の言う通り『インド』だけでなく『南アジア各地』から……(『サドゥー』は言及していないが実は『パキスタン』からも援軍が来ていた)……『宗教』を問わず『呪術師』が『ラーイガド県』に『集結』していたという。すると間もなく『夜叉』たちも『心臓』を隠し終えて舞い戻ってきた。
『……む!? 『サドゥー』や『祈祷師』どもが集まってきているぞ!? はは! どうやら連中は『援軍』を集めたみたいだな! 俺達はもうすでに『不死身』なのに無駄なことを!』と『夜叉』たち。
『すでに奴らは『滅びる』ことが『カルマ』で定まっている! 神は我らの味方だ! 奴らをうち滅ぼせぇ!』と『サドゥー』
ここから『数日間』、『ラーイガド県』で『夜叉』と『人間』たちの『激しい戦闘』が展開したそうだ。『夜叉』たちはある時は『野良犬の群れ』、またある時は『鋼鉄の体を持つ人間』、別の時は『暴走する自動車』や『象の群れ』にまで化けて『街』を滅茶苦茶にしたが、『人間』たちも『棒』や『お守り』、『刀剣』に『銃』まで取り出して『応戦』したのである。どうやら『夜叉』には『剣』だけでなく『銃弾』も一応当たりはするらしい。
だが『夜叉』たちはやはり死ななかった。たとえ『爆弾』で体を『バラバラ』にされたり、『ガンジス河の水』を血管に注入されても(!)『ピンピン』していたのである。彼らは『高笑い』をしながら、
『ガハハハッ! 無駄無駄! なぜなら俺たちの体の中に『心臓』はないからだ! 俺達を倒すためには『心臓』を攻撃しなければ意味がない! だが『心臓』がどこにあるのか貴様らには絶対にわからない! つまりお前らは何をしようが俺たちに『食い殺される運命』なのだ! ガハハハッ!』
ちょうどそのころのことだ。『オーストラリアのタスマニア島』を『一組の男女』が歩いていた。一人は『名取』という『日本人男性の動物学者』で、もう一人は『カーペンター』という『オーストラリア人の女性獣医』であ。二人は『オーストラリア』の『タスマニア島』に生息する『タスマニアデビル』特有の『感染症』である『デビル病』の研究のためにこの島を訪れていたそうだ。
『今日は『糞』の採取だけにしよう。研究所に持ち帰って『菌』の有無を調べたい』と『名取さん』
『『健康な個体』の『巣』をできる限り把握しておく必要があるわね。『タイタンメディカル(製薬会社)』の抗生物質を投与する計画なの』と『カーペンターさん』
『そうなのか? オーストラリア政府の許可は?』
『今『ジェイコブ』が根回ししてくれてるわね。でも『動物保護団体』が出張ってくると厄介よ……』
『ああ……ん? あ、『フィンガーライム』じゃないか! 『タスマニア島』にも生えてるのか~!』
そんな話をしながら『タスマニアデビル』が生息する『藪』の中を歩いていると、『フィンガーライム』という『ライムの仲間』を発見したそうだ。これは見た目が『細いラグビーボール』みたいで、『ミカンよりも強い香りと酸味』を持ち、『オーストラリア固有種』だそうである。近年は『日本』でも人気がでて『栽培』が行われているとか(豆知識)。
『『タスマニア島』にだってあるでしょうそりゃあ。島の人たちも食べるもの(不満げ)』と『カーペンターさん』
『じゃあこいつは『鳥』が『ライム畑』で盗み食いした『ライムの種』が『野生化』したやつってことかな? ちょうど腹減ったし食べようかな~(もぎ取る)』と『名取さん』
『私『酸味が強い』から『生で食べる』のは好きじゃないんだけど……(困惑)』
『カーペンターさん』が困惑する前で『名取さん』は『フィンガーライム』を『一個』ちぎり取ると、一部を『ナイフ』で切り落とす。そのまま『皮』を指で『押す』と中から『粒々』が沢山出来来た。
それを『名取さん』が『食べ始めた』、その時だった。遠く『ラーイガド県』で『現地民』達相手に『優勢』な戦いを進めていた『夜叉』たちが『悲鳴』を上げて『胸』を抑えながら苦しみ始めたのである。
『あぎゃああああああ!! く、食われるうううう!!!』と夜叉α。
『いぎゃああああああ!!! だ、誰だああああああ!!!?? やめろおおおおお!!』と夜叉β。
『わ、私の心臓おおおおおおおおおお!!!!』と女夜叉。
『え、な、なんだ!? 急にどうしたんだ!?』と『地元民たち』
ただただ突然のことに『地元民』は困惑するばかり。そして『夜叉』たちは『全員』が遠く『タスマニア島』にいた『名取さん』に『心臓』を食べられてしまったのでその場で『絶命』してしまったのである。これにて『ラーイガド県』に『平和』が戻ったのだった。
『……酸っぱ! さすがに『生』をそのままは酸っぱいな~!』と『名取さん』
『……あなた、『ライムの汁』が『真っ赤』なせいで『口』から『血が滴って』るように見えるわ! それじゃあまるで『吸血鬼』ね!』と『カーペンターさん』
『えぇ!? ……あ、本当だ。赤いなぁ……『フィンガーライム』ってこんな『果汁』紅かったっけ??』
『さぁね。何かと『交雑』してたのかもしれないわね(投げやり)。それより『道草』食ってないでさっさと終わらせるわよ!』
そして『地元民』たちはすべてが終わってから『サドゥー』に『真実』を教えられたらしい。
『ははは、あの『夜叉』どもは『私達苦行僧』に『自分たちの心臓』をどうしても『見つかりたくなかった』んだ。だから『自分たち』とは全く無関係な『タスマニア島』に密かに飛んでいき、現地の『ほとんど人が近づかない藪の奥』に自生していた『野生のフィンガーライム』の『実』の中に『心臓』を隠していたのだよ。だがもし『自分たちの見張り』をつけたり、なんらかの『結界』でも貼っておくと『それ』で『我々』に『察知』されてしまうから、そういうのは『一切なし』で、『無防備な果実』に隠すだけにしていたのだ! はははは! しかも『隠し場所』に関する『自分たちの記憶』まで綺麗に消してな!』と『サドゥー』
『……そうだったんですか……それじゃあ『夜叉』どもが突然苦しみだして『全滅』したのは……』と『地元民』
『偶然『現地の旅行者(研究者)』が『心臓を隠していたフィンガーライム』を『食べて』しまったからだな。『サラスバティ(弁財天)』が『夢枕』で『私』に『日本人とオーストラリア人が食べたおかげで退治できた』とお教えいただいたのだ』
『そうなんだ……『完璧な防御手段』と思いきや『偶然』はどうすることもできない……まさに『カルマ』ですね……(感心)』
この話を『ガヌーシュさん』が話し終えると『ユズハさん』は、
「えぇ……なんですかその『落ち』は(困惑)。ちょっと『雑』すぎませんか??」
「そうかい? 『私』は全然『良い』と思うよ。どれだけ強かろうが頭が善かろうが『偶然』には勝てない、『量子力学の理論』にも証明されている通り、それがこの『理不尽な世界の理』なのさ(どや顔)』と『ガヌーシュさん』
『いくら『ホラー』だからってちゃんとした『落ち』は必要なんですからね(文句)』と『私』
ちなみに『後日』この話を知った『斎藤君』が一言、
「この話『ボルヘス』の短編集にある話『そのまま』じゃないですか(呆れ)。完全にその『インド人』に『担がれ』ましたね二人とも。『作り話』ですよこれは(嘲笑)」と『斎藤君』
だそうである。確かに『斎藤君』が持ってきた『本』に『連想』出来そうな話がのっていた。もしかしたら『ガヌーシュさん』は私たちを『ボルヘス』の話に絡めて『からかった』だけなのだろうか??




