爆弾
一夜明けて……!
真藤は「そういえば、自分が寝る前に捕らえたあの二人は?」と貴狼に訊いてみる。
「お前が天幕に来る直前に、解放してやった!
今は玉蓮(卒の自治領である玉蓮藩の首都)へ向っている!」
「先の二人は……またこの前の戦のように、“伝令”としてですか?」
「そうだ!尤も、あの二人がこのまま卒の丘幸へ戻っても、“役立たず”の烙印を押されて首を刎ねられる末路しかあるまい!
逆に戻らねば、元の“盗賊”に戻って討伐される身にもなってしまう……!
となるとあの二人が頼るのは塔秀(俊雄の氏名)しかおらんよ……!」
ここで真藤が「それでその二人に何を伝えさせるんですか?昨日の爆発のことを伝えさせて、卒を怯えさせるんですか?」と訊いてみると――
「いや……!爆発の件は――しばらく秘匿にしておく!
あの二人からは魔法を使って、昨日の爆発に関する全ての記憶を消しておいた!」という貴狼の口から自身が予想だにしていない答えが返ってくる!
「……!?」
「この世界にも昔から“爆弾”と言う兵器はあり、我ら尽はその材料も保有している!
しかし今――我ら尽が備蓄している材料の量は多くはない!
それに今の時代は爆弾は非常な脅威でな……最悪の場合は同盟関係が破綻し、数多の敵国が連合して尽に対抗しかねん!
故に旧日汎王国圏内の諸国は『自国は爆弾を有していない!』という建前を貫いている!尽もそうだ!」と貴狼は――信じられない!と言わんばかりに驚いて固まっている真藤に、解説を述べてみせる!
「……!?」
意識がありながらもまだ固まっている真藤に、貴狼は平然として――
「なぜこうなったかという歴史は戦が終われば……教えてやる!
それと昨日言い忘れていたが……昨日の爆発の件や火薬等の材料を保有していることは――機密事項だ!重々注意しておくように!」と告げる!
これに真藤は「はい……」とまだ固まった表情のまま応える……。
今の真藤の態度に何かを訝しんだ貴狼。即刻で――
「どうした、真藤!昨日のことで戦が怖くなったのか?」と訊いてみる。
真藤は慌てながら「いえ、そんなんじゃありません!」と否定した。
「ひょっとして……昨日の地方団の倒しようが気にかかっているのか……?」と貴狼に核心を突かれた真藤は急に暗くなって「はい……」と静かに答える……。
昨日の『過穀奇襲』における卒兵の倒しようは、一方的な虐殺と言っても過言ではなかった!何せ逃亡中と言えども武器を持たぬ卒兵が尽兵に討たれる場面は少なくなく、実際に貴狼と真藤の二人はこれを目撃している!
ちなみに、尽兵に命乞いをする卒兵は一人もいなかった!“盗賊”としての矜持か、それとも命乞いしても助からぬと判断したのか……。
――“平成”の日本人には応えたか……!とそう結論付ける貴狼。
「真藤……命乞いをした卒兵が討たれた犠牲者の中に入ってない以上、尽軍に非がないことは分かるな……!?」と真藤に問う!
「はい……仰る通りです……」と真藤は貴狼の言葉を受け入れる他ない……。
「できれば――卒の地方団を卒側に引き込もうとする欲はあった!」この貴狼の言葉に、真藤は意外そうに思って――
「それって勧誘ってことですか?」と貴狼に訊いてみる。
「そうだがな……!卒の地方団をよくよく調べると、そのほぼ全員が――盗賊や凶悪な犯罪者!塔高(釣幻の氏名)に兵役と引き換えに、“過去に犯した”罪どころか“今後犯す”罪も許されていた卒の地方団だ!
そんな奴らを勧誘して卒兵に引き入れたとあらば、諸外国から白い目で見られ信用もガタ落ち!そうなっては今後の外交にも影響する!」
「つまり……命乞いをしてこない以上は殺すしかないと……?」
「そうだ……!それに卒の地方団を無理に引き抜いたところで、民から迫害され、味方からも避けられる運命だけが待っている……。
そんな生き地獄を味あわせるよりは、いっそのこと……」と貴狼が語ったその時――
「貴狼、真藤!励んでおるか!?」という声が天幕に響く。
その声の主は――陽玄!彼の両側に月清と鋒陰も連れている。
「「おはようございます!陛下!」」
陽玄に向かって畏まって挨拶する貴狼と真藤。
その二人に陽玄は「昨日はよくやった!礼を言うぞ、貴狼!そして真藤!」と謝す!
この陽玄の言葉に、これに貴狼は照れを隠すように――
「戦はまだ終わっておりませぬ!礼を賜るのは少々早いかと……」と苦笑い!
すると陽玄は笑みを浮かべて「うむ……!では期待しておるぞ!」と激励してみせた!
「それで次の進路は?」と鋒陰が嬉々として貴狼に訊くと、貴狼が口元を緩めて――
「賢明な太師(君主の師)閣下のことだ!既に分かっておろうに……!」と返す!
これに鋒陰は「まぁね!」とニヤリとしてみせたのである……!
次回予告:尽子へ向かおうとする卒軍に……!




