数枚の書状
尽子へ向かおうとする矢先……!
世歴八百四年四月二十日 午前十時頃 玉蓮藩玉蓮 卒軍総本陣
「分かった……下がれ!」と、過穀にいた地方団の生き残りである伝令役の二人を下がらせる俊雄!地方団がほぼ殲滅され、尽軍が自軍の丘幸を目指していることを聴いたにも関わらず、その言動は落ち着いている……!
こんな俊雄に、清乾は感心を抑えきれない……!
「「失礼致します!」」
伝令役を担った二人が挨拶をして、俊雄に背を向けたその時――
「うっ!?」と二人の内の片方がうつ伏せになるように倒れた!
その倒れた者の背には……一本の矢が突き刺さっている。既にその矢は倒れた者の心臓を射抜いている!そしてこれを目撃した生き残ったもう片方が、瞬時に後ろを振り向けば――矢を射ぬき終えた俊雄がいる!その手にはまだ弓が握られている!
「何を――がぁっ!?」
俊雄に何かを言いかけた片方だが、背後からの一人の衛兵に背を剣で貫かれた!
既に心臓を貫かれた片方は――卒の地方団の“最後の生き残り”としての生を終えた!
卒軍への動揺を防ぐための口封じにされてしまって……。
「よいか!先の二人から聞いたことは他言無用である!」と俊雄は自身の部下達に命令!
すると清乾が「しかしこれからどうするのですか、将軍殿下!?」と俊雄に尋ねる!
「こうなれば卒軍も早く尽の尽子を押さえるだけだ!」
「ですが、無理に尽の尽子を攻めたら、“緑”の介入を招きます!」
「攻める必要はない!包囲して尽子を人質に取るだけでも十分だ!」と清乾の反論に答えていく俊雄!あくまでも攻勢の姿勢を崩さない!だが……!
「将軍殿下!もし陛下の耳に、『殿下が“丘幸”を蔑ろにした!』という噂が入るだけでも、殿下の御身は危険に晒されます!
今の殿下のお考えは、この噂のように映っても不思議ではございません!」
「お考え直し下さいませ、殿下!仮に尽の尽子を奪えたとしても、尽に卒の丘幸を奪われては、釣り合いが取れませぬ!
それどころか先に丞相閣下が仰られたように、“緑”との望まぬ戦を得るだけです!」
「現在の事態は想定外の事態です!当然これに対抗するための玉蓮藩への勅命は用意されておりませぬ!玉蓮藩に対して“勅命なしで兵を動かしてはならぬ”という法が定められている以上――現在の両団(衛団と中団)は玉蓮藩の助けなしで、この事態を打開せねばなりませぬ!
玉蓮藩の兵が必要ならば、丘幸との連絡路は確保すべきです!」
「殿下!ここは丘幸をお救いする上でも、直ちに転進すべきです!
さすれば、丘幸に向かっている尽軍の背後を突けます!
それに先程遺体になっ兵達から、尽帝(陽玄)も戦場におるのです!
ここはその尽帝を人質にすれば、尽は卒に屈服するでしょう!」
以上のような様々な幕僚の進言に、「ううっ……!」と呻いてしまう俊雄!
「転進しましょう、殿下!丘幸を脅かす尽軍の作戦部隊を叩けば、卒軍は何の憂いもなく――尽の生殺与奪の権を握れます!
それに、お互いが双方の首都を人質にとっても“千日手”に陥るだけです!」
「……」
副司令官格の清乾の進言に、俊雄は腕組みを考え始める……。
それから一分も経たない内に、俊雄は――
「全軍!丘幸の方面へ転進せよ!」という号令をかけた!
世歴八百四年四月二十日 午後十一時頃 卒(旧佞邪国) 丘幸 宮殿
「それで……地方団を丸ごと失った挙句に、せっせと丘幸に戻ってきたわけか!
随分とご苦労なことだな!」と俊雄を見下しながら語りかける釣幻。
そんな彼の瞳は――ひたすらに虚ろ!絶対に機嫌が悪い!
「陛下の期待に応えられず、一個団を喪いましたこと――」
謝罪しかける俊雄の言葉を、釣幻は虚ろな瞳のまま――
「別に地方団の件はどうでもよい!」は遮った!
これに長目が嬉々として「両将がせっせと戻って頂き、助かりました!」と俊雄と清乾に告げた!ただしその時の長目の目は――笑っていない……。機嫌悪し……!
この釣幻と長目の機嫌の悪さに、並々ならぬ事態が起こっていると予測した清乾は――
「我らが丘幸を離れている間に、一体何が……?」と長目に訊いてみる!
この質問に長目は口で応える代わりに、数枚の書状を清乾に渡す!
その数枚の書状を受け取った清乾がその書状の内容を読んでみると――
「こっ、これはっ……!?」と驚きの声を漏らしてしまう!
「どうしたのだ!?」と清乾の反応に違和感を覚えた俊雄。
「こっ、これを……!」とまだ驚きの感情が抜けない清乾から件の数枚の書状を受け取った俊雄がそれら読んでみると……「何っ!?」と驚きの声を発してしまう!
それらの書状の正体は――卒の南部諸侯各国の皇帝即位の宣言書であった……!
次回予告:独立=卒業!




