過穀奇襲
宝箱の中身――判明!ヤバいほど貴重!
同日 午後十一時三十分頃 某所
某所からは過穀の中心地から「ドカドカドカアアアアアンッ!!」と閃光を伴った爆発が目撃できた!その爆発の閃光の数――五十!しかもほぼ一斉である……!
「……!!」
「ゴオオオオオオオッ!!」という地を震わせ腹に響くような、それらの爆発による衝撃の音と波にも耐えきった月清一行。伏せていなければ万全の状態で戦えなかったことだろう!
それから間もなく、夜空に「パアアンッ!」と乾いた音を伴ってもう一つの閃光が浮かび上がった!予め決められていた色と同じ白い光を放つ照明弾である!
これを見た月清に付きの従兵が「殿下!“攻撃”の合図が!」と叫ぶ!
すると月清は「攻撃開始命令を出せ!一人も卒の地方団全将兵を逃がすな!」と号令をかけた!無論、本隊だけではなく中団の全部隊にである……!
この月清の号令を以て――陽玄を皇帝に戴く日汎帝国“尽”王朝と、釣幻を皇帝に戴く佞邪帝国“卒”王朝の戦闘が始まった!
そしてこれが、後に『尽卒戦争』と呼称される戦争の始まりでもあった!
その頃、別の場所で過穀からの数多の爆発を目撃した貴狼は――
「はっはっはっはっはっ!“害虫”共を吹き飛ばすのは気分が良いわっ!
はっはっはっはっはっ!」とギャハギャハと大笑い!ストレスも吹っ飛んでいる!
そんな貴狼を目撃した真藤は「あはは……!!」と苦笑うことしかできない……!
先の数多の爆発の元は――卒の地方団が血眼になって探し集めていた全ての宝箱!その“宝”は爆弾で、完全に宝箱の蓋が開くと、他の全ての宝箱も一斉に連動して爆発するように設定されていた!
魔札は卒の地方団を木っ端微塵にしやすくするための時間稼ぎ!目標に魔法に精通していても魔法が使えない苦風が指揮官だったことで、木っ端微塵の度合いは予定より上回っている!
大量の酒樽も、魔札の効果をより確実にならしめるための保険!
しかも苦風は位の高い部下から順に宝箱を配ってしまった!その気前の良さは完全に裏目に出てしまい、今の地方団には――頭の苦風のみならず隊長格といった幹部格のほぼ全員が宝箱の爆発で蒸発している!
その生き残りで戦えるものは半分にも満たないが、戦う気がある者は全くいなかった!
過穀奇襲
世歴八百四年四月十九日午後十一時三十分頃、過穀の中心地で尽の衛団と中団の両部隊が、爆発による大損害を受けた卒の地方団を急襲したことから始まった戦いである!これが尽卒戦争における最初に行われた“戦闘”である!
といっても既に幹部連中を喪っている卒側には、襲い掛かってくる尽と戦おうとする者なぞほぼおらず、ひたすら逃げようとする者ばかり!
戦いは逃げる卒兵を尽側が一方的に攻撃しているだけと言ってよかった!
必死にどこかへ逃げようとする卒兵も、尽の包囲を抜けられず――
「過穀には一人の民もおらぬ!おるのは筋金入りの罪人共だ!
皆殺しにして構わんから、全員逃がすな!」という月清の過激な言の下――卒兵は容赦のなく「ぎゃあああっ!!」とか「ぐわああっ!!」というような断末魔の悲鳴を上げながら討たれていった……!その痛みや苦しみが一瞬で済んでいるのが幸いか……。
中には尽兵の弓がのどに当たって、声を出せずに討たれた者もいる……!
結果――卒の地方団の兵力千名の内、生き残ったのはたったの二名!しかも俊雄の本陣へ伝令を担うべく、尽側の手でわざと生かされて捕らえられて……!
先の爆発から二人が捕らえられたこの間――僅か一時間のことであった……!
世歴八百四年四月二十日 午前七時頃 過穀 尽軍総本陣
今日の六時間前ぐらいから睡眠を取っていた真藤が起床して身支度の後、真っ先に!
貴狼の天幕へ「おはようございます!」と挨拶すべく天幕へ向かう。
向かった先で真藤は天幕の出入り口にいる門番に「おはようございまず!」と挨拶!
門番も真藤に「おはようございます!摂政閣下(貴狼)は既に起きていますので、中に入って挨拶をされても構いません!」と笑顔で返してくれる。
真藤は「ありがとうございます!」と門番に謝すと、天幕へ入っていった!
その天幕の中で貴狼は軍隊符号が上に置かれている地図を見ている。
きっと今後の進路でも考えているのだろう……!
「閣下!おはようございます!」と真藤が挨拶すると、貴狼は――
「おはよう!よく眠れたのか?」と返して訊いてみせる。
これに真藤は苦笑しつつ「はい……昨日のことが夢に思える程……」と答えてみせた。
次回予告:戦いの後の――尽軍!!




