宝箱
盗賊時代の本領発揮!?
世歴八百四年四月十九日 午後十一時頃 過穀 地方団本陣
「なんじゃこりゃぁ!? これっぽっちしかねぇのか!?」と猛る苦風!
そんな彼の目に前には――山!ただしガラクタの塊に近い……。何せ、その塊のほとんどは蹴飛ばした戸や薪、井戸用の桶ばかり……。
他の場所にも酒樽だけが大量に集められている……。
一時間近く探し回っても、戦果は“これだけ”!それまでの労働と見合わない!
せっかく地方団の校尉自らも“宝探し”に加わったというのに……。
「てめぇら……猫糞してたら――殺すぞ!!」とますます猛る苦風!
剣を抜いては、部下達にその剣先を向ける始末。その顔にも血管が浮き出ている……。
こんな苦風に剣先を向けられた部下達は恐れをなして震えるばかり……。
その内の一人に至っては内股のまま両脇を締めている。“乙女”かと呆れてしまうぞ……。
「これで全部です!これでも過穀にあった家と建物全部探しました!」と一人の痩せ細った部下が怯えながら苦風に答える。この者の名前は――どうでもいい。
「そうっすよ頭……!それにお宝はなかったけど、お酒はたんまりありますよ……」と一人の太った――否、恰幅のいい部下も怯えながら苦風に答える。
この者の名前は――どうでもいい。何せ、上司の苦風さえ知らないのだから……。
「まぁないもんはしょうがねえ……あの酒飲めや!」と先の部下二人に酒を勧める苦風。
先程の猛り狂った言動は嘘のように引っ込んでいる……!怪しい……!
しかし部下二人の内の痩せ細った方は「ええっ、いいんすかっ!?」と、残った恰幅のいい方も「自分達が先に頂いてもっ!?」と何も怪しまずに訊き返すだけ……!危ない……!
そんな部下二人に、苦風が「もちろんだ!校尉の俺が許す!」と再度酒を勧めると――
「「いっただっきまーすっ!!」」と二人は酒樽が集められている所へ走っていくと、そのまま酒樽の一つを開けてそれを杯に移して――口の中へ投入!
結果――二人の内の細い方は「うんめえええっー!」と興奮!
恰幅のいい方も「か……格別っすーっ!」と大いに感動!
二人の反応を見た苦風は「はははっ、そうかっ!! 酒の味は大丈夫そうでよかった!」と笑った!内心で――毒は入っていないようだな……。と安堵しながら……。
苦風は二人を罠対策の毒見役にしていたのだ。しかし、その二人は生涯自身がその役目を知らず知らずのまま担っていたことに、露程も気づかなかった……。
もし毒が入っていても、そのことで誰も苦風を咎める者さえいないというのに……。
――地方団の命はどうでもいいが、戦力が減るのは不味い……。と考え事をしている苦風に向かって、「頭ーっ!お宝ありましたよーっ!」という声。
これに苦風が「本当かああああぁっ!?」と声のする方を見ると――
「見てください、頭!宝箱ですよ!宝箱!」と先の部下二人とは別の部下が走ってくる!
先の二人との違いは中肉中背の中年男性といったとことか……。名前は知らない……。
同時にその後ろから自身の後輩達数名が、各々の脇に鉄木混製の宝箱を抱えて持ってきている。その大きさは真空管テレビを少しだけ小さくようなところか……。
それにしてもそれらの宝箱の外見――よくゲームで見かけたようなタイプだ……。
「おおっ!! どうやってこれを見つけた!?」と苦風が興奮しながら、走ってきたばかりで「はぁ…はぁ…」と息を切らしている中年の部下に尋ねると、そいつも――
「廃屋敷の奥に地図が隠されていました!それで地図上の点を頼りに、街中の穴掘りまくってたら――という訳ですよ!」と興奮して答えてみせた!
直後――細い方の部下が「てめぇ、何で地図のことを真っ先に頭に言わなかった!?」と咎めてくる。――手柄を先に盗られた!と嫉妬したが故に……。
中年の部下は、盗賊歴が自身より長い年下の細い方に――
「何せ本当かどうか分からなかったもんで……!」と必死に弁明する他ない……!
「まぁいい……で宝箱の鍵は……?」と苦風がその中年部下に訊くと――
「針金使って鍵を開けたんですが――変な札が張られて開かないんですよ……。
しかも全部の宝箱に同じように……」という答えが返ってくる!
すると「何っ!? 見せてみろ!!」と苦風は宝箱を持っていた兵からひったくるように手に取って、その宝箱に張られた札をよく見てみると……。
「確かに札が張られているな……!しかも魔札だ!」と結論を下した苦風。
これに「あの……『魔札』って魔法が練り込まれた札っすか?」と恰幅のいい部下と訊いてみると、苦風は「ああ……」と肯いた直後に――
「だが問題ねぇ!このタイプは鍵が開けられてから、時間が経てば自動で解かれる!」と笑みを浮かべて補足を述べてみせる!その時の笑みには少量の涎も付いている。
この捕捉に「つまり……しばらくは開かないと……?」と少し残念がる細い方の部下。
「なんでこれを張ったんすかね……。どうせ開くのに……」と恰幅のいい方も同意。
そんな部下二人の言葉を、苦風は耳から外へ流して――
「細けぇこたぁいい!せっかく酒があるから――宴会やるぞおおおっ!」と大号令!
これにその場の地方団の全将兵は嬉々として「うおおおおおおおっ!!」と叫ぶ!
軍務中故に、酒が支給されなかった――その鎖からようやく解放されるのだ……!
次回予告:宝箱の中身は何か!?




