呼び方の話。
「こんにちはー。あ、曜先輩。」
「よっす、花夜。」
「なに気安く名前で呼んでるんですか。」
「いいじゃん。可愛いよー?花夜ちゃん」
「キモイ。」
最近は、先輩達ともよく話すようになった。
袴で弓を引く、曜先輩は、黙っていればカッコいい。
「先輩、ほかの人達は?」
「まだ来てない。」
「そうですか」
私も袴を着ず、ジャージで弓を引いた。
「花夜。」
「なんですか。」
「袴、着ないの?」
「着ません。」
「なんで?」
「似合わないからです。」
すると先輩は、大きな声で笑った。
「そんな理由!?」
そして、とんでもないことを言った。
「じゃ、今度の体育祭、袴着てコスプレリー出ろ」
「はぁ!?嫌だ!絶対無理!」
「先輩命令。」
うぅ゛……
そう言われたら、どうしようもない。
それに実際、部活の時に袴を着るのはキマリなのだ。
私が悪い。
それは分かってる。
「ダメ、ですか?やらなきゃ。」
「だめ。」
ジトっと、見られて仕方なく頷いた。
先輩の癖に可愛いなんて生意気だぞ。
「分かりましたよ。」
パチパチパチ……
突然響いた拍手の音。
「あ、扇原君!」
「彩樹、袴着るんだ。楽しみ」
「うぅ、見るようなものじゃないのに!」
「彩樹って、意外と真面目だよな」
「あぁ!平岡!なんでいるんだよ!」
拍手の主は、扇原君と、平岡だった。
扇原君も、袴姿。
そう言えば最近気づいたけど、弓道部は、美男美女が多い。
先輩はみんなお世辞抜きで整った顔立ちだし、
1年のみんなも、みんな可愛い。
扇原君だって、弓道部じゃないけど平岡もカッコいい。
クールなイケメンだ。平岡は、スポーツ系かな。
扇原君なんか、モッテモテだし。
ノンフレームのメガネに切れ長の目。
たまに毒を吐いたりして……。
アニメキャラかよ!
と、突っ込みたくなる。
「彩樹。」
「なに。扇原君」
「体育祭、楽しみにしてる。ちなみに俺、男女混合 二人三脚リレーお前とペアだからな。よろしく。」
「はぁ!?てめぇ!ざけんな!」
その日の道場には私の叫び声と、
みんなの笑い声が響いていた。
ちなみにこの日から私は、扇原君を、
扇原と、呼び始めた。