カレーを食べたら…
「「「いただきます!」」」
みんなで手を合わせ、一斉に声を上げる。
私たちの目の前には理央先輩のリクエストによる甘口のカレーが並んでいた。
甘口なんて、いつぶりだろう。
「これ、椋夜くんも作ったの?」
「…あぁ。」
「凄いね〜!カッコイイ!」
理央先輩と、お兄ちゃんが同じテーブルで話している。
お兄ちゃんは最初、みんなと一緒に食べるのは嫌だ、と言っていたけど、洗い物が面倒なので一緒に食べてもらった。
「ねぇ〜マリンちゃん〜」
「…うるさい。」
本来学年ごとに分かれているはずのテーブルだが、何故か曜先輩は、マリンの隣にいた。
ほんとにしつこい男だ。
「曜先輩、しつこいですよ」
「うーるーさい!花夜ちんは黙ってて!」
「はぁ…」
何を言っても無駄。人の話なんて聞いてない。
「ねぇ、どうしてマリに話しかけるの?うるさいんだけど」
「俺が、マリンちゃんの事を知りたいからだよ」
「どうせ、アクアが目的のくせに…」
小さな声。
凄く小さい声だったけど、私と、曜先輩にはしっかりと聞こえた。
「何言ってるの?」
「え?」
「なんで、そんなことを言うのかが知りたいんだ。」
「なんでって……みんな、そうだから。」
「マリンっ!」
我慢出来なくなったのか、アクアが声を上げた。
その声は、思いのほか響く。
「なに、アクア。私間違ったこと言った?」
「考えが間違ってる。誰もマリンを利用なんてしてない。」
「は?笑わせないでくれる?皆そうだったじゃない。わかってるでしょ?
生徒会所属の姉と特に取り柄のない妹よ?アクアに近づくために決まってるじゃない」
途端に饒舌になったマリンに、みんなの視線が集まっていた。
「それは違うんじゃないかな?」
「は?」
いつもより少し低い、曜先輩の声が響く。
マリンの目が、曜先輩を睨みつけた。
「マリンちゃんって、人見知りでしょ」
「…ちがう。」
「嘘付かないで。
人見知りで、話しかけられるのが嫌だから、アクアちゃんの陰に隠れて、わざと不良を演じて、話しかけられないようにしてたんでしょ?もしかして、人見知りが恥ずかしいことだと思ってたりする?」
「…違う!」
マリンが声を荒あげる。
目にはうっすら涙が浮かんでいた。
図星のようだ。
「マリンちゃん、なんでもアクアちゃんに押し付ける癖があるよね。人と話すのが苦手で面倒だからでしょ?そりゃみんなマリンちゃんを通してアクアちゃんと話すはずだよ。」
曜先輩の言う通りだ。
昔からマリンは、面倒なことをアクアに押し付けるくせがある。
アクアも嫌がらずにやってしまうからそれが習慣のようになっていた。
それにしても、この短時間でよくそれを見つけたな。
曜先輩の観察眼は馬鹿にできない。
「マリンちゃん、もう少し自分に自信を持ちなよ」
「そうだよ!いつまでも私の陰に隠れないで…」
「……やり方が…分からないのよ…」
聞こえた声は、とてもか弱いものだった。
「人と向かい合うと、緊張して、うまく話せないの…頭ではわかってるのに、声が、出ないの…」
「簡単だよ!マリンちゃん!」
曜先輩が笑顔で声を上げる。
マリンの目尻に付いた涙を指で掬い、問いかけた。
「マリンちゃん、得意なことは?」
カレーを食べたら、みんなで作戦会議だ。




