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正夢が見れるなら高次元世界でも無双できる?  作者: ブルーギル
第2章 劣等生
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14話 歓迎会

 日曜日。

 今日は赤砂寮の歓迎会がある。


 赤砂寮は1、2、3年生、つまり低学年のCクラスが住む寮である。

 全7階建て、唯一の魅力は庭が広いこと。

 今日はその庭でバーベキューが行われる。


「肉でやんす! 肉でやんす!」


「えへへ、おしゃれして行こうかなぁ!」


 俺達ドクロ3人組は、尻口くんの部屋に集まっていた。


「開始まであと2時間くらいはあるでやんすね。どうでやんすか、このパリオカートでバトらないでやんすか?」


「おお! パリオカート! ボク、オバケ丸使ったら敵なしだよぉ」


 白熱したパリオカートが繰り広げられた。



 ◇◇◇



「ぐへへへー!!! また一着でやんすーっ!!!」


「くそぉ! 尻口くん強いねぇ!!」


「あっ! もう歓迎会始まる時間だよ! 行こう!」


 尻口くんがキメキメの服を着ると、俺達は外へ出た。

 すでに外の庭には既にたくさんの生徒がいた。


 定刻になると、濃いお化粧をした先生らしき人が前に出た。


「ワターシが赤砂寮の寮長、【ペペロンチーノ三世】なのでアール。新入生の諸君、今日は赤砂寮の先輩と触れあい、友達も作って、存分に楽しんで欲しいのでアール!」


 ワイワイ、ガヤガヤ


 目の前には何台ものバーベキューセット、そしてテーブルには飲み物が置いてある。

 その中には例のレシスぺもあった。


「おいら、あっちの女の子が集まってるとこいってくるでやんすーっ!」


 尻口くんはレシスぺ缶を持って走り去っていった。


「きゃーっ! この子可愛いーっ!」


「ねえ、私達とお話ししましょうよ!」


「えへへ、いいよぉ」


 幸坂くんも女子生徒たちに連れて行かれてしまった。


「幸坂くん、結構モテるんだな……」


「こんにちは、新1年生だよね?」


「えっ」


 俺に話しかけてくれたのは、短めの茶色い髪にピンクの髪留めをした女子生徒。


「私、3年の【三橋(みつはし) (みお)】って言うんだ。よろしく!」


「1年の九重です、よろしくお願いします」


「あ、お肉焼くね!」


「ありがとうございます。7階建てなのは知っていましたが、集まるとこんなに人がいるんですね」


「そうだね。青月館とか黄泉荘みたいに大きくないのに、入ってる人の数はほとんど一緒だからね」


 三橋さんは苦笑いを見せた。


 ジュ~~


「お肉焼けたよ! あ、レシスぺは初めて? よかったらどうぞ! キンキンに冷えてるよ~。乾杯しよ!」


「はい!」


 プシュッ


「じゃあ、入学おめでとう、九重くん。そしてようこそ赤砂寮へ!」


「「かんぱい!」」


 ゴクッゴクッ


「こ、これは……! 飲みやすい味で、スカッとする! おいしいです!」


「っぷはーっ! レシスぺ、ハマるよね~」


 レシスぺとは、【逆空間の次元】を活用した、未成年が飲めるお酒のようなものである。


 しばらく他愛のない話をした。

 しかし、レシスぺが進むにつれて、少しずつ三橋さんの心の声が出始めた。


「ねえ、九重くんは、赤砂寮のことどう思う? やっぱり、ちょっとガッカリしてる?」


「俺はそもそも学校にも通える立場でもなかったので、ガッカリなんて思わないですよ。まあ、青月館に住めたら夢のようだとは思いますが」


「そっか。ごめんね、歓迎会でする話じゃなかったかな」


「いえいえ。三橋さんは、赤砂寮のこと気に入っていないんですか?」


「そんなことないよ。私は何やってもどんくさいから、Aクラスの生徒みたいに期待されたくないもん。私にこの場所は合ってるんだ。……でも、自分のことは好きじゃなくなってきたかな。能力もないし、勉強もできないし、ははは……」


 カーストの底辺に位置する赤砂寮には、コンプレックスをこじらせた人が多いらしい。

 プライドが高い人ほどこじらせてしまって、フラストレーションが溜まり、治安も悪くなる。


 でも、全員が全員、そういう人ではない。

 前向きで向上心のある人もいた。


「こら三橋、そんな悲しい話題を出すな! やあ、新入生! 俺は【前原(まえばら) 勇人(はやと)】だ、よろしくな!」


「よろしくお願いします」


「ほら! 遠慮せずに肉を喰え!」


 前原さんは俺の皿にたくさんの肉を盛ってくれた。


「いいか、新入生! 前期の中間テストは筆記、期末テストは実技だ! そしてその実技は、全校生徒による【王座争奪戦】というトーナメント競技で行われる! そこにはAクラスのやつはもちろん、黄金世代の超能力者だって参戦する! 上のやつらと直接対決できるんだ! 俺達赤砂寮の無能力者にとって、これほどの下剋上のチャンスはない!」


「王座争奪戦……?」


「うん。王座争奪戦は1~6年生の各学年1人ずつからなるチームで争われる競技で、そこで勝ち上がることはとても名誉高いことなんだよ。……でも、やっぱり能力者が強くて、無能力者の私達に勝ち目なんて…」


「三橋! 勝負はやってみないと分からない! 今年こそ、俺はBクラスもAクラスも超能力者も倒して、王座を取って見せる! そのための努力は惜しまない!」


 見開かれて上を向いた眼差し。


「それに、俺達はまだ3年だ! Aクラスへ上がるチャンスはまだまだいくらでもある! あの【生命の次元】の超能力者、弥生先輩も2年まではCクラスで赤砂寮だったというしな!」


「心乃さんが!?」


 心乃さん、最初から超能力者だったわけじゃないのか。


「えっ、九重くん、弥生先輩と知り合いなの?」


「あ、ええ、まあ……」


「本当か! あの人は俺達赤砂寮生の希望だ! 俺は心より尊敬している!」


「おお~!! 九重くん、飲んでるでやんすか~~?? ここらで一杯乾杯しようでやんす!!」


 ベロンベロンの尻口くんが缶を抱えてやってきた。


「お! それはレシスぺの中でも特に強い『スーパーレシスぺ』じゃないか! 俺達も乾杯に付き合うとしよう!」


「え!? 私も!?」


「じゃあいくでやんすよ! 乾杯―――っ!!」


「「「乾杯!!」」」


 カチャン!


 ゴクゴクゴクゴクゴク!!!


「ぷはーーっ! 一番のりでやんす!!」


「ぷはっ!! いい飲みっぷりだな、新入生!」


「やばっ、世界がまわっへきた……」


 ……なんだこれ!!! さっきまでのほろ酔いとは全然違うぞ!

 世界が全然違うように見える! ドキドキと気分が高揚してくる!!


「なになにぃ~? ボクも混ぜてよぉ!!」


 今度はたくさんの缶を抱えた幸坂くんがやってきた。


「おお!! それは『スーパーレシスぺ』を超える、『アルティメットレシスぺ』!! よし、乾杯するぞ!!」


「わ、わたひも~~!?」


 三橋さんはレシスぺに弱いのを自覚していたらしく、最初に俺と飲んでいたのは『ほろスぺ』とよばれる一番ザコいレシスぺだったのだ。


「「「乾杯――!!!!」」」


 ゴクゴクゴクゴクゴク!!!!!



 ◇◇◇



 夜も深くなってきた頃、酔っ払いながら皆と肩を組んで踊っていた時、俺の携帯が鳴った。


 ピッ


「はひ?」


『糸~~!! 助けて~~!! 今、青月館で歓迎会開かれてるんだけど、雪夜がまたレシスぺを飲みすぎちゃっておかしくなっちゃったの!』


「おかひくなっちゃった?」


『そうなの! 誰とでも笑顔で飲んでくれて、闇も取り払ってくれて、今ならなんでもしちゃうかも!! 雪夜の黒歴史になる前に私達が助けないと!!』


「なにぃ? 今なら誰とでも雪夜が笑顔で一緒に飲んでくれて、闇も取り払ってくれて、なんでもひてくれるぅ~~???」


「「「なんだって!?!?」」」


 俺の電話を周りで聞いていた尻口くん、幸坂くんをはじめ、赤砂寮勢が反応する。


「『雪夜』って松蔭雪夜ちゃんのことでやんすよね!?」


「一緒に笑顔で飲んでくれるのぉ!?」


「闇も取り払って浄化してくれるだって!?」


「私、松蔭さんと話してみたい!」


「おれもおれも!!」


『今、雪夜を連れて青月館の外に逃げて来たから……って、うわわ!! 中からレシスぺ持っていっぱい追ってきちゃった!! とにかく、早く来てね!!!!』


 ガチャ


「よひ、青月館へ向かうぞ!」


「「「「おーーーーっ!!!」」」」


 大量の赤砂寮勢がレシスぺを持って青月館へ向かって走り出した。


 途中で草むらに酔っ払いが何人も転び、泥んこになりながら、飲みながら、黄泉荘周りに到着した。


「ちょっとストップ! ここらでレシスぺ休憩としようぜ」


「おう!」


 何人かは立ち止まってレシスぺを飲み始める。


 するとその騒ぎ声で黄泉荘の生徒が出てくる。


「なんだ、祭りか? って、赤砂寮の奴らじゃん。こんなところでどしたん?」


「お、お前らも歓迎会中か! 聞いて驚くなよ。今なら…」


「本当か!? あの松蔭雪夜が!? おーーい、お前ら朗報だーー!!」


「なにっ!! 俺も行きてえ!!」


「私も!!!」


「よーーーし、お前らレシスぺ持っていこうぜーーー!!!」


「オーーーッ!!!!」


 また増えた。

 酔っ払いの団結力は凄まじい。


 そんな中、先頭をフラフラしながら走っていた俺は、ようやく青月館へ到着した。


「すまん……遅くなった!」


 雪夜を肩から背負ったフィアスに声を掛ける。


「もう! 遅いよ糸……って、え!?!?」


「はーいでやんす♡」


「こんばんわぁ」


 俺の後ろには大量の赤砂寮勢と黄泉荘勢がレシスぺを持って飲みまくっていた。

 フィアスの後ろには大量の青月館勢がレシスぺを飲みまくっている。


「いたぞ!! 松蔭雪夜だ!!」


「きゃーーっ!! 可愛い!!」


「松蔭さん、おいらのスーパーレシスぺをあげるでやんす!!」


「尻口くんずるいよ! ボクのアルティメットレシスぺどうぞ!!」


「なにを! おいらの方が早かったでやんす!」


「ボクだって!!」


 フィアスの肩から自立し、雪夜は二人に笑顔で寄り添った。


「大丈夫でふわよ。両方飲みまふわ! さあ、みなはん、レシスぺはお持ちですか?」


「「いえーーーい!!」」


「いえーい!!」


「ちょっと!! 糸まで何やってんのぉぉ!!!」


「「「「「「乾杯――――!!!!!」」」」」」


 この後は雪夜を中心に、寮を超えて仲良く、激しい飲み会が行われた。


 後にこの騒動は伝説の歓迎会として語り継がれることになる。

 しかし、意外にも雪夜の黒歴史とはならず、むしろ普段は仲があまり良くない青月館、黄泉荘、赤砂寮を統一するほどの実力者という高評価が流れた。

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