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異世界の観察者  作者: 天霧翔
第十六章 サルマリア王国・王都リスルド
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17

 とりあえず今後の指針は決まった。3日後までに魔法印解析を終わらせ、その後サルマリアとエスペラルドの立ち入り禁止エリアを巡る。アキの予想だと、立ち入り禁止エリアで一気に事態が急転すると踏んでいる。明後日以降は事が終息するまでは落ち着く暇はないかもしれない。


「忙しくなるんですわよね?では明後日までいっぱいのんびりしましょう。」

「ありがとう、ミルナ。じゃあ今日の買い物はなしにする?」

「しませんわ。それはそれ、これはこれです。」


 何を馬鹿な事を言っているんですかとミルナに叱られた。うーん、理不尽だ。


「ええ、明日も覚悟してくださいね?たっぷり買い物しましょう。」


 ベルもアキを連れまわす気満々らしい。多分明後日のルティアもそうだろう。部屋のどこからか ただならぬ気配というか意気込みを感じる。まあ皆と出かける事は息抜きになるので別に問題ないが……彼女達の気合の入れ方がちょっと怖い。


 だがこれは好都合だ。それにミルナ達の言質は取った。


「もちろん。それに皆の方こそ覚悟してね?」


 アキがの言葉を聞いて、全員がしまったという表情を浮かべる。彼女達はすっかり忘れているようだが、ミルナ以上に買い物が好きなアキ。むしろ覚悟するのはミルナ達の方だ。自分達で買い物をすると言ってしまった以上、今更やめるとは言えないはず。自分の話術に上手く乗せられ、たっぷり楽しむと宣言してくれた。素晴らしい。


「よし、ミルナ、ソフィー、エレン、レオ。いくぞー。」

「「「「程々にね!」」」」


 うちの子達が必死に説得してくるが、それを無視してエレンとソフィーの手を強引に引っ張って屋敷を出た。ミルナとレオもちゃんと後ろをついてくる。なんだかんだ4人ともお出掛けが楽しみらしい。勿論アキも楽しみだ。






 ミルナ達は結局いつもの服装だった。おめかしすると騒いでいたのは何だったのだろう。不思議に思い理由を聞いたら、レオはいつもの格好だから、自分達も変えない事にしたのだと言われた。レオがリオナに戻ったら、みんなでアキに買ってもらった服を着てお出かけするのだという。なんともまあこの子達らしい理由だ。


「そうだね、じゃあその時はまた行こうね。」


 この4人は本当に仲良しだ。見ていて微笑ましい。アキがメルシアに加わった事で仲違いに発展しないかと心配した事もあるが、全くの杞憂だった。気付いたら4人仲良く自分を慕ってくれているのだから本当に笑ってしまう。


「そうだエレン、今日は化粧しているよね?」


 服装はいつもと一緒だが、雰囲気が少し違う。


「え……あ、う、うん。してるわ。」


 エレンが恥ずかしそうに俯く。気づかれるとは思っていなかったのだろう。たださすがにこの子達の事だったらすぐに気付く。彼女達がアキの些細な変化に気が付くように、アキだってこの子達の事だったらちゃんとわかる。


「綺麗だね、似合ってる。ソフィーとミルナも凄くいいと思うよ。」


 アキの言葉に嬉しそうに頷く3人。まあ素がいいのだから、化粧したら綺麗なのは当然だろう。しかしみんな化粧を少しするだけでぐっと大人になった感じだ。


 たださすがにレオは化粧をしていない。彼女が少年の振りを続けている限り、それは許されない事だ。


 少し寂しそうな表情を浮かべているレオ。アキは彼女にそっと耳打ちしてやる。


「リオナも化粧したところ今度見せてね。」


 堂々と言えたらいいが、街中でさすがにリオナと呼ぶわけにはいかない。 


「あ……う、うん!」


 レオが化粧したらきっと少年には見られないだろう。顔のパーツがはっきりしているので、化粧映えもするはずだ。間違いなく彼女は美人さんになる。


 しかしレオの化粧した姿を見るという楽しみが1つ増えた。これは本当に早く「リオナ」に戻してあげないといけない。アキは改めて強く決意する。






 ミルナ達との買い物はいつも通り楽しくてあっという間に時間が過ぎ去った。ただアキが暴走しないよう、必死になっていたうちの子達は面白かった。あのミルナまでもが「アキさん、次いきましょうね、次。」と止めてきたくらいだ。


「買い物バカのミルナに止められるなんてなんか悔しい。」

「アキさんに言われたくないですわ!買い物バカはアキさんです!」


 ミルナの言葉にソフィー達が激しく同意していたのが甚だ不本意だ。


 ちなみに買い物は、服ではなく、家具などの店を中心に回った。というか案内された。アキがエスコートしようと思ったのに、全部自分達が決めるからとミルナ達に連れ回された。家具が中心だったのは、せっかくサルマリアに来ているからという彼女達の配慮だろう。まあ自分達が着せ替え人形にされないようにと考えていた気がしなくもない。その為にアキのエスコートを全力で拒否したのだろう。そこまで拒否されるのはちょっと悲しい。


 ただアキがどうしても行きたいと言ったら、服屋にも入らせてくれたし、少しだけだけど選んだ服を着てくれた。


「アキに選んでもらうのは嬉しいわ。でも……」

「ぼ、僕も女性物を選んでもらえて嬉しいよ。でも……」


 エレンとレオに「やり過ぎなの!」と怒られた。でもみんな可愛いんだから着せたくなる。これは仕方のない事だ。


 ちなみに家具屋の方は圧巻だった。屋敷の家具を見てサルマリア製品の品質の高さはわかっていたが、家具屋で並んでいるのを見るとさらに驚いた。細かい装飾の数々は本当に美しい。店員が説明してくれたのだが、サルマリアの家具は機能性にも優れていて、間違いなく快適な生活を約束するとの事だ。


「全部買おう、そうだ全部。」

「待ってください!アキさん少し落ち着いてくださいませ!」


 店の家具を全て買おうとしたら、ミルナに必死に止められた。


「大丈夫だ、ミルナ。お金はある。」

「そういう事じゃありませんわ!ソフィー達も早く!」


 家具は今あるので十分だからとミルナが1つも買わせてくれない。

 さてどう説得するべきか……。


「アキさん、ほら。ソフィーの笑顔ですよー。アキさんの好きな笑顔ですー!」

「アキ、ほら尻尾、尻尾触ろうね!」


 説得方法を考えていたら、ソフィーとレオがなんとかして諦めさそうとしてくる。とりあえず目の前に差し出されたレオの尻尾を愛でるが、納得はいかない。こんな素晴らしい商品を指をくわえて見ていろというのか。


「エレンだけは俺の味方だよね?俺の大好きなエレンはわかってくれるよね?」


 ならエレンを落とすまでだ。


「えっ……す、好き……!?そ、そうね……・私はアキの味方よ。」


 エレンは頬を染めて俯きながら呟く。


「なら買ってもいいよね?」

「い、いいんじゃないかしら?」


 よし、許可が出た。やはりチョロいなこの絶壁。買ってしまえばこっちの物だ。


「騙されてはいけませんわ!エレン!」

「騙すとか人聞きの悪い事言うな。」


 なんとも酷い言われようだ。ミルナの言い方だとまるでアキがエレンを懐柔しようとしているみたいではないか。失礼な話だ。


「でも『チョロいなこの絶壁』と思ったのではないんですの?」

「確かに思ったけど。」

「アキ!!!あんたは!いつもいつも!!!ふざけんじゃないわよ!今日こそぶっころすわ!!!!」


 ミルナの誘導尋問のせいでエレンがお怒りだ。そして「買ったら殺す」に意見を変えられてしまった。これでは家具が買えない。


「誘導もなにもしてませんわ!さあ、アキさん、帰りますわよ!」

「まだ買ってないんだけど。ちょっと待って。」

「ダメです!さあソフィー、エレン、レオ、引きずり出しますわよ!」


 問答無用と言わんばかりに、アキはミルナ達に両腕を引っ張られ、屋敷まで連行された。なんだこの前代未聞のデートは。何故アキは美少女達に街中を引きずられているのだろうか。


 まあそんな最中もうちの子達は本当に楽しそうな顔をしていた。ならそれでいい。ミルナ達が楽しめたのならそれでいい。家具や服なんて正直どうでもよかった。この子達と出かけられるだけでアキも楽しいし、それだけで十分だ。


「それに明日はベル達だからな……いくらでも買えるはずだ……。」


 アキは小さく呟いてほくそ笑む。






 そんなアキの呟きを聞いていたミルナ。アキに気づかれないようにミルナも小さく呟く。


「ふふ、そうはいきませんわよ?」

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