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もう少しでサルマリアの国境だ。アキ達はベルが手配してくれた馬車でサルマリアへひた走る。
ミスミルドを出立して2日が経った。爺さんにサルマリアでの屋敷の手配をお願いしたところ、やはり「わしも行く」との事で、アキ達の馬車に並走してついて来ている。当然ガランも爺さんの馬車に同行している。数日しかいないとは言ったのだが「刀の事で聞きたい事がある時にいないと困る」との事でついてきやがった。ミレーへ訪問する際は別移動だったが、今回はベルのプライベートな訪問なので、爺さんやガランの同行も問題ないらしい。
「でも護衛くらいは付けた方がよかったんじゃないか?」
ベルがアキのサルマリア訪問に同行していいか両親に確認したところ、なんら問題はないとの事。ついでに国務もしてくれば言い訳も立つらしい。国務がついででいいのか。まあどうせあの父親の事だから、ベルの頼みを断れなかったのだろう。
とりあえずベルがついてくる問題はいいとして、護衛や側仕えが1人もいないと言うのはどうなのか。ベル曰く「プライベートだからいいんです!」とのことだが、一国の王女についているのがアキ達だけなのは不味くないかと思う。
「何言ってるんですか。むしろアキさん達だからいいです。」
何でもエスペラルド所属のSランクが6人も同行しているのだからむしろ安全だとの見解らしい。確かにメルシアは全員Sで、エリスもSだ。前回アキ達がSランクになったことで、エスペラルドは8人Sランクを抱えている事になる。そしてそのうちの6人が今ここに居る。
「よく考えればこんだけSランクがいるのは凄い事か。」
「ええ、そして全員がアキさんに従っているんですから。」
さらには優秀な従者であるアリアとセシルもいる。ベルの身の回りの世話もこの2人がいれば問題ない。まあこの2人がベルの世話をするかは怪しいが。とりあえずエルミラやルベルシアが許可ししたのも、それを全て踏まえた上だという。
「確かにそうだな。優秀な人材が全員ベルの大事な仲間なんだからな。」
「別に大事になんか思ってないわよ!」
「そうです!腹黒王女なんて知らないですー!」
アキの発言にエレンとソフィーが口を尖らせて即座に否定してくる。
「そうですよ、アキさん。この方たちが私を大事に思っているわけないです。私も別に思ってないです。」
ベルも当然ですという顔で同意する。相変わらず火花を散らしているこの子達には呆れる。
「まあ……単純に全員がアキさんを慕っているからですよ?そしてアキさんが全員を大事にしてくださるからこうやってなんの問題もなく旅が出来るんです。」
ベルがはっきりとした口調でアキに告げる。
「えーっと……仲良くする気は?」
「「「「「絶対無理!」」」」」
全員が声を揃えて力強く宣言しやがった。
「でも恋する乙女が集まると強いんですよ?」
ふふふとベルが笑う。
「そうですわ。恋敵かもしれませんが、みんなアキさんを慕う仲間です。そういう意味ではどんな冒険者パーティーにも負ける気はしません。だから私達は最強なのですわ。」
ミルナもくすくすと袖口を口にあてて微笑む。
「とりあえず2人とも言ってて恥ずかしくない?」
アキが指摘すると顔を真っ赤にするミルナとベル。
「アキさんの無神経!いちいち言わないでくださいませ!」
「そうですよ!ばか!指摘しないでください!」
なら言わなければいいのに。
そこから数時間後、アキ達は無事サルマリアに入国した。エスペラルドとは違いサルマリアは高原地方となっているようだ。国境を越え、馬車で坂道をしばらく上り続けると広大な高原が目の前に姿を現した。標高が高いからか、エスペラルドに比べて少し気温が低い。見渡す限り草木の緑が一面に広がっていて、とても美しい。遠方には小高い山や山脈があり、木々が大海原のように広がっている。おそらく山脈に向かって大森林が広がっているのだろう。
ミレーは強いていうなら乾燥地帯。低木が多く森林が少ない。それでいて気温がエスペラルドより少し高い。サルマリアは逆で気温が少し低く、草原と森林が一面に広がっている。エスペラルドはその中間といった感じだ。
「花が綺麗だな……。」
馬車の窓から外を眺めると、高原に咲いている色とりどりの野花に目を奪われる。今すぐ馬車から飛び降りて寝転がり、花の香りや高原の風を感じたい。きっと木々のざわめきが心地いい音楽になるに違いない。
「少し、外で休憩します?」
アキの様子に気づいたのかベルが提案してくる。
「ううん、今は大丈夫。」
アキは窓から目を車内へと戻す。ベルの提案に乗りたいのは山々だが、今はそんな事をしている時ではない。皆でのんびりするのは全てが終わってからだ。少しくらいの寄り道はいいかもしれないが、サルマリアに来た目的を忘れてはいけない。今外に飛び出して寝転んだら、何もかもどうでもよくなりそうな気がした。
「でも色々片付いたらピクニックにでも来ようか。」
「いいですわね。」
ミルナが同意してくれる。
「いきますー!いいところ案内しますよー!」
ソフィーが元気よく参加を表明する。だが案内とはどういう事だろうか。
「ソフィーはサルマリアに詳しいの?」
「私はサルマリアの田舎出身ですよー。」
ソフィーが「言っていませんでしたっけ?」と首を傾げながら可愛いらしいポーズをしながら教えてくれる。そういや最近ソフィーの魔性の女ぶりが出ていない。まあアキと居るとずっと暴走エルフだからしょうがないか。
「ソフィー、笑って?」
それにあの花のような笑顔もしばらく見てない。
アキの言葉に不思議そうな顔を浮かべるソフィーだが、すぐに最高の笑顔を向けてくれた。
「えへへー、これでいいですか?」
「うん、最近見てなかった気がしてね。」
相変わらずこの子の笑顔は眩しい。見ているだけで楽しい気持ちになる。
しかしソフィーのおかげでどこか晴れやかな気持ちになれたし、普段しない話をしてみるのもいいかもしれない。それにソフィーのサルマリア出身発言がいい切欠だ。
「せっかくだしミルナ達の昔話でも聞かせてよ。」
「私達のですの?」
今度はミルナが首を傾げる。ソフィーがやると可愛いポーズだが、ミルナがやると何故かエロい。この違いはなんなのだろうか。「エ、エロいとか言わないでください!」となんかミルナが叫んでいるが、とりあえず苦情は無視して話を続ける。
「少し前、俺の昔話しただろ?せっかくだし皆のも教えてよ。嫌なら……」
そこでアキは言葉を止める。嫌なら言わなくていいと言おうとしたが、違う。そうじゃない。今の彼女達に対してならこう言うのが正しいはずだ。
「いや、教えろ。ミルナ達の過去を俺に教えろ。」
「アキにしては強引ね。」
エレンが意外そうな顔をしている。
「まあな。でもみんなこれからも俺といるんでしょ?一時的に協力しているだけなら『嫌なら言わなくてもいい』で構わないけど、これからもいるんなら教えてよ。ダメ?」
「そういうことね!そうね、当然いいわよ!」
エレンが嬉しそうに頷く。ミルナやソフィーも勿論ですと頷いている。エレンは出会った頃は名前すら教えないとか騒いでいたのにすっかり変わったなとつい苦笑してしまう。
「そうだったねー。『アキは一時的に入れるだけよ!』とか僕聞いたもん。」
「そうですわね、『あんな奴、役に立たないわ!』とか言ってましたわ。」
レオとミルナが懐かしそうに呟く。
「う、うるさい!言ってないわよ!ばか!」
エレンは否定しているが、顔は真っ赤だ。昔の自分を思い出しているのだろうか。
「とりあえずMERSIの順番通りに行こうか。出会った順番でしょ?」
「そうですわね、それでいいですわ。では私からですね。」
アキの提案に特に異論はないようで、ミルナが昔話を始める。




