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ベルに引きずられるようにして屋敷に戻ると、ミルナ達が心配そうに出迎えてくれた。Sランク戦に出た事もそうだが、刺客達を殺した事が気になっているようだ。
「やっぱミルナ達といると落ち着くな。」
感情は確かに少し昂っていた。だが彼女達と話したらそんなものはどこかに飛んで行ってしまった。
「アキさん、怪我なくてよかったですー!」
今日はソフィーの膝枕だ。争奪戦を勝ち抜いたらしい。必要ないと言ったのだが、人を殺したから強制膝枕だと言われた。もう単純にこの子達がしたいだけだろうと呆れる。それはともかく、久々にソフィーに触れた気がする。太もも柔らかいし、いい匂いだ。
「ソフィーいい匂い。」
「えへへ、アキさんは匂い好きですよね。」
「落ち着くからな。俺の世界では匂いを楽しむ文化があるんだ。香水やアロマっていうんだけどね。でもソフィーの匂いはそれに比べものにならないくらいに落ち着くよ。もちろんミルナ、エレン、リオナもね。」
「やった、僕も今度膝枕してあげるね!」
レオが嬉しそうに尻尾を振っている。
「いつでもしてあげますわ!」
「感謝しなさい!私もよ!」
いつも通りの彼女達だが、何故かいつも以上に心が安らぐ。やはり人を殺したあとの気持ちの昂りのせいだろうか。いい加減慣れたいものだ。まあ人殺しに慣れるのもどうかと思うので、これでいいのかもしれないが。
「アキさんは早速魔法学校の女の子を2人も落としていましたね?」
ベルがにこにこしながら爆弾を落とす。余計な事をする王女様だ。
「してない。」
一応否定はしておく。
「えへへ、やっぱりお話ですー!」
「なんで嬉しそうなんだ、ソフィー。」
「アキさんにお話しするの楽しいですー!」
「俺は文句言われるだけなんだけど?」
まあ、うちの子達が楽しそうにしているから別にいいんだけど。
「諦めなさい!自業自得よ!」
「解き放たれた猛獣よ、落ち着け。」
「その名で呼ぶなっていってんでしょうが!」
エレンがガルルと猛犬の如く威嚇してくる。
「そうですわ、アキさん。自分が悪いんですわよ。」
「うるさい、純白のミルナ。」
「それは今関係ないから!純白じゃないから!」
顔を赤くしているミルナを見る限り、やはり今日も純白らしい。
「リオナだけだよ、俺に優しいの。」
レオが何か言う前に、先手を打って懐柔してみた。
「えへへ、そう?僕はアキだったら許しちゃうからね。」
「ありがとう、おいで。」
レオの尻尾を優しく撫でてやる。懐柔成功だ。
「アキさん、実況の方の兎耳に反応していましたね?」
レオの尻尾を楽しんでいたアキにセシルが告げる。
「してない。」
「嘘です。『触っていい?』って聞きましたよね?わかっているんですからね?」
絶対あの状況で聞こえているわけがないのにバレている。何故だ。
「アキさんが兎耳見たときの反応なんて私が一番よくしってます!ばかっ!」
セシルが拗ねてそっぽを向いてしまう。まあ、今はレオがいるからいいんだけど、と思ったがいつの間にかレオがにこにこしてこっちを見つめている。
「アキ、お話しよ。」
「いきなりどうした、リオナ。」
尻尾が逆立っている、ちょっと怒っている証拠だ。
「わからないからお話なんだよ?」
獣人関連の話題には敏感なレオとセシル。もしかしたら自分のアイデンティティを取られた気分になるのかもしれない。結局懐柔失敗だ。
「エリス。助けろ。」
「アキのバカ!Sランクの私を差し置いて他のSランクと仲良くするな!」
そこかよ、怒るとこ。相変わらずエリスはちょっとずれている。
「アリア。」
「アキさん、まだ増やす気なんですか?」
疑問形で文句を言ってくれるのは助かる。発言権を貰えるので言い訳がしやすい。もしかしたらアリアはそこまで考え、アキに弁解の機会を与えてくれているのかもしれない。さすが優秀なメイドだ。アキはそれに乗っかって彼女達に言い訳をする。
いや、待て。そもそも言い訳じゃない。これは説明だ。エアル達を落とそうとなんてしてないのだから。
「これ以上はいらない。ミルナ、ソフィー、エレン、リオナ。可愛くて特別な子達に慕って貰えている。アリア、セシルという最高の従者もいて、エリスのような美人騎士もいる。そしていつも頼りになるベル。俺には勿体ないくらいだ。いつもありがとう。」
アキの言葉に満足したのか、みんな穏やかな表情を浮かべている。
「わかりました。ではアイリーンベル王女殿下を含めた全員の下着の色をお教えしましょう。ちなみにミルナさんとソフィーさんは教えるまでもなくいつも通りです。」
「なんでだよ。脈絡なさすぎだろ。後、それは知ってる。」
アリアが斜め上の話題をぶち込んでくる。「お話」が長くなるような話題はやめて欲しい。だがミルナとソフィーが顔を真っ赤にしているのでもうお話は確定した。
「知りたいかと。」
「是非。教えろ。今すぐ教えろ。」
こうなったらヤケクソだろう。お話される前に聞ける情報は聞いてしまえという精神だ。だが結局、教えてもらえる前に、全員がアリアを必死に止めて、お話が始まってしまった。
まあ皆幸せそうだったからいいだろう。




