ありきたりだと思ったか?
そう問いかけると、カノンはふふと笑った。
「レオンの優しい所が好き~♪」
よくありそうな答え。
優しいから好き。
別に良い。レオンもそう言ってもられるのは嬉しい。
カノンには優しくしていたしそれが伝わっているから。
でも、それならば、レオンでなくても良いんじゃないだろうか。
レオンでなくても、それこそホーリィロウや、あの四天王になる予定の魔族でも。それに、
「……俺はそんなに優しくないよ?」
そう言うと、カノンは不思議そうに目を瞬かせる。
「嘘だよ」
「本当だよ」
「そんな事無いって」
「……レオンは優しいよ。僕は分かっているから」
何を分かっているんだろう、そう不安になるレオンにカノンは続ける。
「優しい人は本当に少ないんだ。強くないといけないから」
「俺は強くないよ」
「そうだね、レオンは力が弱いよね。僕は簡単にレオンを殺せるもん。でも、僕が言っているのは心の強さだよ」
「心?」
「そう。他の人達が助けようとしない中で、レオンは昔イオ達を助けたんだろう?」
「別にたまたまさ」
「その人が悲しんでいる事が分かれば、考える事ができれば、酷い事はできないから、手を差し伸べられるから、それがレオンの繊細さで、優しさだよ。そして、人を傷つけるという快楽に走らずにそれを止める意思の力、それが心の強さなんだ。それにいつだって仲間の事を心配して……上手く回るように調節しているでしょう?」
「!」
「イオもトランも気付いている。レオンがレオンとしているだけで、このパーティは成り立っている。何をすれば悲しむのか、何をすれば楽しいのか、何をすれば嬉しいのか……考えているだろう? 賢くて優しくて強くて……そんなレオンが、僕は大好き」
レオンが思っていたよりもカノンはレオンの事を見ていた。
そして好いてくれていた事をレオンは知る。
それが少し恥ずかしくて、照れたように頬をかきながら、レオンは答える。
「かいかぶりすぎだよ」
「……そうかも」
「……さっきといっている事が違うじゃないか」
「んー、自分の身の程を知っているレオンも僕は好きだから」
「なんだよそれ」
レオンは酷く幸せな気分だった。
レオンだから好きなのだと言われた気がしたから。
そこで、ぼんやりとするようにカノンが呟く。
「僕、魔王なんだ」
言ってしまって良いのだろうかと思うも、レオンはカノンに意識は無いと判断して、話をあわせるように頷いた。
「昔来た勇者が傑作で。実力がまったくなかったんだ」
「え?」
「勇者の称号は、基本光の神が信託だか何だかでするだろう? 元々勇者なんて僕達魔王への嫌がらせのようなものだし。そして結構ある一定以上強い剣士とかがなるものだったんだけど……あの時は違っていた。一人しか勇者が選ばれなかったんだ」
「そう、なのか」
「そうそう。しかもとても弱い剣士で、けれど勇者の力……魔物の殺された時の恨みや呪いを浄化できるのは、人間の王族にもあるらしいが、それよりも重要な魔王城をこじ開ける力を持っているのはそいつだけだったんだ」
「そうなのか」
「魔王城は、魔王を守るためのものでもあるから。それをこじ開ける鍵を光の神が勇者の力と称して与えるものでもあるんだ。そして、一人しかいないから実力も無いのに讃えられ、賞賛されて……傲慢でどうしようもない人間に更になっていた」
「……そうか」
「そして僕の前に現れたあいつ、汚らわしい。今でも思い出すと怖気が走る。……結局、勇者の仲間達と話し合いにより、しばらく襲わないという、戦わずに約束をする特例を行った。そもそもあの頃もそうだが、四天王の助力を得られないし得たくもなかったから直接魔王城に来て……もしもそうであったなら魔王城にもたどり着けなかったかもしれない。そして、その勇者は風の噂ではその後の人生は悲惨で、最後は酒に溺れて死んだらしい」
「……そうか」
「だから、レオンに強くなって欲しい。力でも。実力が伴わずに、自分が素晴らしいと思い込んで傲慢に狂っていくのは、そんな勇者は嫌だ。そして、魔王である僕の元に勇者として来て欲しい」
「カノン……」
「レオン、好き、僕のものになって。レオンが欲しい」
「カノン……」
「他の誰も見ないで、僕を見て。強くなって僕の元に来て」
切なげに懇願するカノンにレオンは答えられなかった。
だって、本当はレオンは、勇者ではないから。
それにぞっとして、カノンの願いに答えられないレオンは、カノンから逃れるように手を話して湯の淵の石に触れて……。
「痛っ!」
指を切ってしまう。
けれど切れてしまい血の滲む指をカノンはじっと見つめて、その瞳は気が付くと両目ともに爛々と輝く金色の瞳となっており、そのままカノンは指を口に含む。
そのままちゅちゅと美味しそうに舐めて吸うカノンは、確かに魔物なのだろうと思わせるに十分なのだが、何というか変な気分になってくる。
正直言うとむらむらしてくる。
生殺しじゃないかと思いながら、カノンは幸せそうにレオンの指を吸って、それから口を指から放してレオンに抱きついてくる。
湯船にはカノンの髪が浸っているにもかかわらず、さらりとカノンの髪が揺れて、石鹸の匂いがした。
「レオン大好き。だから、強くなってね」
と、レオンの胸に顔を埋めてそのまま、身じろぎしなくなる。
「カノン?」
心配して様子を見ていると眠っているようだった。
眠っているのなら余計に襲えないよなと思いつつ、レオンはカノンを抱き上げる。
のぼせてしまってもしょうがない。
そして、湯から上がっていくと、ルカとレンヤにレオンは鉢合わせしたのだった。
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つい書いてしまったorz。本当にこれからしばらく更新できないです。前にも書きましたが、本日web拍手を一話更新しておいたのでよろしくお願いします。
次の更新は未定ですがよろしくお願いいたします。




