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森のきのこはご用心

 何故ここにはキノコの魔物しかいないのだろう。

 先ほどから延々と現れては腰?、を揺らしながら踊るキノコを切ったり、ナイフやら矢で突き刺したり、火炎系の魔法でバーベキューにしたわけだが。

「よし、これでしばらく食事には困らないな!」

 レオンが山盛りになった焼かれたキノコの前で高笑いする。

 確かにこれだけの量があれば当分食事に困らないだろうとカノンは思う。

 但し、連続してキノコを食べる事に耐えられれば、の話だが。

 そこでイオが残念というように首をふる。

「残念だけどそうもいかないんだ。それ全部毒キノコだから」

「え? 本当に?」

「だよね、トラン」

「ああ、その類の魔物は食べられない。確か養殖しようとして間違えて毒キノコの魔物を量産して、手に負えなくなったから放置したとか何とか」

 そんな事で魔物が増えたのかと思うとかノンは頭が痛くなる。

 ちなみにカノンは魔王なので魔物が増えるのは喜ばしいはずなのだが、現在魔王である事を隠しているので力が使えない。

 故に襲われる。

それを差し引いても、どうしてこんなに嬉しくないんだろう。

「じゃあどうした方が良い? 毒物を放置していいのか?」

「……勇者としての力で浄化すれば終わりです」

「そういえば、俺、勇者だったな。忘れていた……カノン、嘘です。だから杖を構えないで」

 仕方が無いといったようにレオンが剣を構えて、そこでふとトランが何かを思い出したように言った。

「赤いキノコだけは、結構な高値で売れる。猟師の間では隠れた小遣いになる」

「じゃあ分けるか。宿代やら食費やら出るかな?」

 ちょっとレオンは嬉しそうだ。そこで、ふとイオが気付いたように、

「トラン、これなんで高く売れるの? 毒でしょう?」

「毒と薬は表裏一体。ただそれは、“大人”が嗜む物だ」

 “大人”という下りにレオンが反応したので、カノンは杖で軽くレオンの背中をつついて牽制する。

 しかしそんなレオンの行動など気付かず、イオが更にその意味を問いかける。

「……つまり?」

 そこでトランがこぶしを握って言い切った。

「自分の中にあるエロ願望をひたすらしゃべってしまうという薬だ」

「聞いた事がある……。その薬により、数多のカップルが分かれたという伝説の……」

「ああ、恐ろしい薬だ」

 そうトランは額の汗をぬぐう。

 カノンは思った。こいつらがレオンについてきた理由が何となく分かった。

 似た者だからだ。

 となるとカノン自身も彼らに似ているという恐るべき事実が……ないな。

 それにそもそもそんな薬、どうでも良いじゃないか。、

「……別に、エロ願望口走るぐらい、いいじゃないか。誰かを傷つけるわけでも無いし」

 が、その言葉にレオンがやけに反応した。

「カノンは分かっていない! いいか、人間の脳内にある妄想が一番エロいんだぞ!」

 だからどうした!、とカノンはツッコミ対願望を抑えつつ、そう熱意を持って力説するレオンに、お前ならそうだろうなとカノンは溜息をついて、

「いや……頭の中にあるものを言葉なり、文字なり、絵なりで表そうとしても、その限界は存在する。そうでなければ言い間違いや聞き間違いは起きないはずだから……」

「うお、珍しくカノンがまともに話してる」

「……さっき散々説教した事を忘れてるみたいだから、もう2ターンぐらいお説教しとこうか」

「ああ、俺の繊細な心がそんなに怒られちゃうと硝子のように砕けちゃう!」

「繊細だったら少しは行動を改めろ! うっかりこの前胃薬を買おうか迷ったじゃないか!」

 胃薬常備の魔王ってどんなだよ、そもそも魔王って偉そうにしてればいいものなはずなのに、どうしてこうなった。

 カノンは心の中でむせび泣く。と、

「ちなみに買ったのか?」

 レオンがちょっと心配そうにカノンを見る。

 心配されて嬉しいと思ってしまったカノンは、すぐさまその諸悪の根源がレオンだと思い出す。

 なので少し恨めしそうに一言。

「……残金が」

「ごめんなさい」

「まったく……いっそ、レオンにそのキノコを食べさせて恥ずかしい思いをさせるかな。その方が薬になるだろうか……」

 そこでイオが慌てたように口を挟む。

「だめ、カノンちゃん。それだけは絶対止めた方が良い!」

「イオ、でもそろそろレオンにお灸を……」

「もしもカノンちゃん、レオンにエロエロな感じで口説かれたらどうするの!」

「待て、イオ、何故俺が口説くのが罰ゲームになっているんだ?」

「そうだな。危なかった。イオ、ありがとう」

「……おい」

「どういたしまして。いやね、カノンちゃんにパーティ抜けられると本当に戦力的にきついからさ」

「……無視しないで」

「はは、それはどうも。でもイオの短剣の扱いは中々だと思いますよ?」

「……あのー」

「本音を言うと、カノンちゃんの事気に入ってるから、いて欲しいなって」

「わー、嬉しいですねー」

 ちなみに記憶操作する前に、カノンはイオをフルボッコにしていたりする。

 そんな考えをおくびにも出さず、にっこりとカノンは微笑んだ。

 そこで、耐えられなくなったのか、レオンが叫んだ。

「む・し・す・る・な――――――!」

 その言葉と同時に、特に大きい踊るキノコの魔物が現れたのだった。


「ふう、何とか倒したな。お?」

 レオンの体が薄く光っている。

「これは……レベルアップの予感!」

 カノンはこういう時は口に出さなくてもいいのでは無いかと思った。

 一応黙って立っているだけで様になる容姿なのに、口を開くとどうして格好が悪くなるのだか。 

 そこでいつもと違い、白い粉がくるくると回って、

「あ、じゃあアレで。ええ、その技でお願いします」

 そうレオンが独り言を呟くと、それは消え去る。

 今までに見たことが無いので、カノンは問いかける。

「今の何?」

「ああ、技を覚えたんだ。どれがいいか選択したんだ」

「どんな?」

「うーん、強化系?、かな」

「どうして、?、がつく」

 カノンは嫌な予感がしたのだが、そこでレオンがカノンに抱きついた。

「俺ようやくまたレベルアップしたよ、褒めて褒めて!」

「え、いや、あの……」

 カノンは突然レオンに抱きつかれて、顔を真っ赤にしてどうしようかとおろおろする。

 助けを求めるようにイオとトランを見ると、トランはいつも通りの無表情で、イオはにまにまと笑っているだけで助けるつもりは無いらしい。

「カノン、褒めてくれないのか?」

「……ああ、はいはい、いいこいいこ」

 頭を撫ぜてやると、レオンは更に嬉しそうにカノンに抱きついてきた。

 それが嬉しいと思う反面、カノンは、これは“幼馴染”に対する好意なのだろうと悲しくなる。

 何で僕がこんな思いをしなくちゃならないんだ、これも全部レオンが悪いとカノンは心の中で思ったのだった。


読んでいただきありがとうございました。今日はもう一回更新したい

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