見えそうで見えない
「レオンとカノンが女の子になったって……」
息を切らしながら、血の気が引いた顔でトランが飛び込んできた。
そんなトランを見て、イオが思い出したかのようにぽんと手を打った。
「そういえばそんな書置きをしてきた気がする」
「イオ……カノンならまだしも、俺がなるわけ無いだろう」
「レオン、僕ならまだしもってどういう意味?」
「……どういう意味か教えてやろうか?」
「え?」
そのまま、先ほどと同じ真剣な表情で、レオンがカノンの顎を手で掴み上に向かせてそのままゆっくりと唇を近づける。
カノンはそんな真剣な表情をしたレオンから目が離せない。
近づいてくる時間が、本当に長く感じられて胸がどくんと大きく音を立てている。
おかしい、こんなの。
一方的にレオンに主導権を握られて。
こんなに心が乱されて、顔が沸騰しそうに熱くて、逃げ出したいような逃げたくないようなそんな。
「何だ女装しただけか」
トランのその声に、カノンははっと我に返る。
そして逃げるように、レオンの手をはずして距離をとり、イオの後ろに隠れた。
「あれ、カノンちゃん、そのままキスされちゃえばいいのに」
「……なんか、いつも以上にレオンが……その、何というか」
そこでイオがにまーとイオが悪戯をしてやろうという顔で笑った。
「それはね、カノンちゃん。レオンが女装しているからだよ」
なんか変な話の流れにされそうな予感を覚えて、レオンがイオの口を手で封じようとする。だが、それよりも早く、
「レオンみたいな女の子ってカノンちゃん凄く好みじゃない?」
カノンがじっとレオンを見た。
見て、次の瞬間顔を赤らめて、そこから逃げ出そうとした。
そんなカノンをレオンが腕を掴んで引き寄せる。
「……逃げるなよ、カノン」
「う……だって、レオンが綺麗ですっごく女の子だったら好みで、だから……」
「俺も、カノンが女の子だったら凄く好みだ」
「そう……なんだ」
レオンに、カノンが女の子だったなら凄く好みだと言われて、嬉しいよりも何となくがっかりしたような寂しい気持ちになり、何で僕がこんな気持ちにならないといけないのだろうと頭にきた。
「ふん、僕は男でした、残念」
「ははは、俺も男だけれどな?」
「……それも残念かな」
「なのでカノンには、スカートを少しめくってもらおうと思います」
「何でだ!」
カノンは嫌々と、レオンから逃げようとして、けれど目を輝かせたレオンがカノンの目に映る。
「いや、そういうのってこうどきどきしないか?」
「もういい。この変態紳士、絶対に許さん。じわじわとレオンを……」
「勝ったご褒美」
「男のそんなのみたって楽しくないだろう、常識的に考えて」
「男なら恥ずかしくないもんな、男同士だし」
「……なんかレオンが言うと、ものすごく嫌な気持ちになる……」
レオンがショボーンとした顔のなる。
それを見て、カノンは悪い事をしたような気になる。
そもそもこの女装対決だって、カノンの思慮の足りなさが招いた事なのだ。
なのに、初めはそれを理由は分からないがレオンがやろうとして。
そして結果としてこうなってしまっただけで、レオンが勝った事には変わりはなくて。
やらなくて良い事に巻き込んで、勝てとお願いしたのはカノンだ。
だから、少しくらいはお願いも聞いてもいいんじゃないだろうか。それをレオンが望むのならば。
「……分かった、少しだけだから」
「「「おおー」」」
レオン以外にも、何故かカノンを見て目を輝かせているイオやら、ホーリィロウ達全員。よく見ると、寡黙なトランまでも、何かおかしい。
選択を間違えたようにカノンは思うが、ここまで期待されるとこたえないといけない気がする。
全員、死んでも良いよもう……と、心の中で毒づきながらカノンはスカートのすそを両手で摘んだ。
ニーソなるものをはいているので、肌が直接露出しているわけではないので、恥ずかしい事も何も無いはず。
そろそろと、スカートをめくりあげていく。
とりあえず膝の辺りで止めると、何故か非難のまなざしでカノンは見られた。
「確かそのニーソは一番上の所にレースがついていたはず! そこまで!」
「もういいレオン、踏んでやる、この! この!」
「ああ、何というご褒美」
「……痛くするぞ?」
「調子に乗りました、ごめんなさい。でもそこまで上げるのって、ミニスカートなら良くある事だと思うんだ」
「……普通はそれくらいまで、上げるものなの? 上げてもいいものなの?」
「そうそう、だからちょっと上げてみて」
周りを見ると、レオンの言い分はもっともだと言うかのように全員が頷いている。
随分世の中、けしからん事になっているなとカノンは思いつつ、再びそろそろとスカートをめくっていく。
そして、ようやく足の肌が見える所まで上げて、何故かカノンは酷い羞恥心を感じた。
別に見ているのは同性で、それほどおかしい事は無いはずだ。
なのに、もの凄く恥ずかしいのはきっと、
「……下着、穿いていないんだ」
カノンがそう呟いた瞬間、レオンがカノンのスカートを一番下まで下ろした。
「だめだ、それだけは駄目だ」
「レオン?」
「……カノン、何で下着を着けていないんだ」
「え? だって、女物の下着なんて恥ずかしくて付けられない」
レオンがイオを見た。
この服の組み合わせはイオによるものである。つまり、イオが……。
「だってカノンちゃん、女物なんて穿けないからこのままで良いって自分一人で納得して行っちゃうから……」
「そうか、カノンの自業自得か。それなら仕方が無いな」
うんうんと頷き、それから疲れたようにレオンがため息を付く。
ため息を付きたいのはカノンだった。本当に恥ずかしくて、でも、レオンがその瞬間隠すようにしてくれたのはちょっと嬉しい……くないわけでもないかもしれない。そこで、
「それで、君達が勝利したわけだけど、宴会としての楽しさは薄れてしまったね」
困ったように、ホーリィロウが口を挟んだ。
その目には何か企みがあるかのように揺れて、イオを見た。
それを見て、イオが意図を汲み取りにやりと笑う。
「その宴会に僕達も参加させてもらえるなら、プロの真髄を見せちゃうぞ」
「というわけだが他の皆はどうする?」
皆の答えは、既に決まっていたのだった。
お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。
次の更新は、不明ですがよろしくお願いいたします




