外より内の方が好きなんです
「何に引っかかったのですか?」
よし、早速カノンに使ってやろうと決めてレオンはレイルに問いかけた。すると、
「バナナの皮だ」
「え?」
「どういうわけか、魔王の一族はバナナの皮が天敵らしい」
「……間抜けですね」
「そういうところも可愛いと思わないかい?」
「確かに」
レオンとレイルは話してみて、似たもの同士だと感じた。これは中々、お互い良き協力者となれそうだ。
「それで君は、やはり?」
「ご想像の通りだと思います。ただし俺にはあの力は無いので、出来損ないですが」
「……そんな事は無いと思うが……所で、先ほどの話しは参考になったかい?」
「いえ、全然」
あっさり首を横に振るレオンに、レイルはおかしそうに笑った。
「そうだろうな、ただ、トリューカースがその四人――というか四天王の魔物達ではあったのだが――に惚れられてた事は話したと思うが、もしかしたなら……」
「カノンに手を出してくる可能性があると?」
「ああ。それに元々全ての魔物は魔王を敬愛……強い恋慕のようなものを抱くものらしいから、それとは関係無しに襲いに来るかもしれない」
「カノンは俺の嫁です。誰にも渡しません」
「そうそう、そのいき。カノンは本当にファザコンだから、トリューカースに抱きついて見えない位置で、私に向って舌をだしたり、『将来は、父様のお嫁さんになる』とか言っていて……」
聞いた瞬間、レオンの額に青筋が浮かぶ。カノンを俺の嫁発言しているだけに、レオンはカノンに関しては心がとても狭かった。
「分かりました。カノンが俺以外に目が行かないようにしておけばいい、という事ですね」
暗い光を瞳に宿しながらくくとレオンは暗く笑う。
そんなレオンにレイルは昔の自分を重ねつつ、彼の協力が自分にとっても都合がいいと微笑む。
「そうして貰えると助かるよ。けれど、君はカノンの何処に惚れたんだい?」
「優しくて気の強い所です」
「それは、見た目に一目ぼれしただけでは分からないよね。君は一体何処でカノンに会ったんだい?」
レイルが探るようにレオンを見て、それがレオンにはおかしく感じる。
この人は覚えていないのだろうか。
「以前貴方は、王都近くのシルスの村にいませんでしたか? カノン達と一緒に」
予想外であったらしいその答えに、レイルは目を瞬かせて、思い出したというかのように手を打った。
「……ああ、あれが君か。そうか、それで……」
「多分カノンは覚えていないと思います。でも、俺はカノンの事があの時からずっと好きだったから」
「そうかそうか、あのやんちゃだった君が……あれ、お忍びで?」
「ええ、お忍びで」
「よく取っ組み合いの喧嘩をしていたものな。いつそうなったんだい?」
「お忍びで一時的に来れなくなった時告白したんです、一応。もっともはじめて見た時、貴方と一緒で一目惚れしたのですが関わっていく内に、その内面に惹かれて……あいつ以上に惹かれる者に出会わなかった事もあるのですが、ずっと好きだったから、絶対欲しいと思ったから」
「そうか、それでかな。カノンがある時から特に私達に口を出さなくなって、もともと人間に甘めだったが以前よりも人間への考え方を改めたようだったから。それに、忘れていないと思うよ。カノンはその時の事今も覚えている」
「……その割には俺達を全力で半殺しにしてきたような」
「いや、力が強くとも、間抜けだから」
「そうですね、間抜けですものね」
それで済まされてしまうのも、カノンを見ていると納得がいく。
本当にどうしてこう抜けているのか。そうそう、抜けているといえば、
「そういえばカノンが、キスを百回すると子供が出来るといっていたのですが……」
「え? 冗談……そういえば、トリューカースにキスするたびに、子供が出来るとか騒いでいたような気が」
「多分本気ですね……分かりました。俺が一つ一つ教えていきますよ」
「頼む。さすがにそれは不味いだろう。ああ見えて、百歳超えているし」
百歳越えと聞いて、レオンは何となく悔しくなる。自分が追いつけないくらい年上なのが、何となく嫌だ。
そして、それほど年上にもかかわらず、あの状態とはとレオンは思う。
「何であんなに純真というか……中途半端に無垢なのですか?」
「いや、色々あって引きこもりにトリューカースがなって、カノンの先先代魔王が亡くなってから、カノンが食料の調達やら、時には人間に扮してギルドに依頼を受けに行っていたらしい。トリューカースは果物しか食べないし」
「それで中途半端に人間なわけですね」
けれどそれならば、そこから切り崩していくのもありかもしれないとレオンが計算していると、
「それでもカノンは魔物だよ。トリューカースもそうだったが、そういった衝動に駆られることがある。特に満月の夜や、好きな者の前ではね。君はカノンに意識されているようだから、気よつけた方が良い」
魔物だから気よ付けろ、確かに彼らの闇は光を求め、光に属する人間を襲う。しかし、
「でも貴方は無事ではないですか」
それは矛盾だ。現に、彼はカノンの父に傷つけられることなく、そしてカノンに何かされるわけでもなく今レオンの目の前にいる。
けれど、それにレイルは肩をすくめた。
「満月の夜は、その前日に私はトリューカースを襲って、魔力の殆どを搾り出してしまうから。それに、トリューカースは偏食だしね。それで大丈夫なんだ」
「それでもカノンと一緒に暮らしていたんでしょう?」
「……あいつ、私の事が本当に嫌いらしくて、満月の夜に出くわした時に舌打ちされた。どうも嫌い過ぎると逆に大丈夫らしい」
「それは……良かったですね」
「ああ、良かったとも。だから、気よ付けろ。傷つくのはお前だけじゃない。カノンもなのだから」
「肝に銘じておきますよ」
「大体、話はこれでおしまいかな。君がどんな人間か分かって良かったよ。仲が悪いとはいえ、カノンはトリューカースの息子だから、気にかけていたんだ。そして、私も出来る限りお手伝いをさせて頂くよ」
「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」
「ついでにもう一つ、面白い話があるが、聞いておくか?」
「え?」
レイルはそう、いたずらっぽい笑みを浮かべてその事をレオンに話したのだった。
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