血迷った選択
イメージでは昔読んでいたような、少女漫画+少年漫画+BLなコメディです。疲れたときに読むと元気になる話を目指す予定です。
一般向けBLの方が良いのかなと最近書いていて悩んだので、こちらにも投稿することにしました。
はじめは設定の関係上、ちょった暗めかもしれません。
「久々の獲物だ、逃がさないぜ!」
「キャ――――!」
悲鳴を上げて逃げ惑う美少年約二名。
それを追い掛け回す剣を腰に下げた変態。
ちなみに、この変態は勇者である。
「HAHAHA、捕まえたぞ!。さあこれから俺と一緒に愛の楽園へ……」
「……レオン、いい加減にしろ!」
そう、カノンは魔法の杖で勇者レオンを殴って気絶させた。
とりあえず、逃げ惑っていた美少年には、すみませんと謝り、勇者レオンを回収していく。
そして、気絶したこのアホ勇者をずるずると引きずりながら宿へと戻る。
この分だと地面との摩擦でまたズボンが破ける事になるだろうが致し方ない。
お金の管理をしているカノンには頭が痛い話だ。
――何故僕がこんな事を……。
幾度となくした自問自答を再び繰り返し、カノンはうんざりする。
答えは決まっている。
それはカノンが勇者レオンの“幼馴染”だからだ。
――やっぱりアレだ。事前の下調べを面倒だったからしなかったのが敗因か。
初めて会った時、結構骨のある奴でこいつなら良いかも、と思ったのに。
なのに、まさかこんな奴だなんて。
幸いカノンの事は“幼馴染”だからだろう、対象外なので口説いたりはしてこ無い。
カノンはフードで顔が見えないようにしているが、本当はきらめくばかりの美少年なので真っ先に口説かれると予想される。
なのにそうならないのは“幼馴染み”フィルターのおかげだ。
そしてそもそも、勇者本人が自分で言っていたのだから、間違いないだろう。
はあとカノンは溜息をつく。
いかんせんこの勇者は弱過ぎる。
というか、美少年やら美少女やら美熟女やら美しき紳士やらを口説く前に剣の練習をしろと。
あの時は、もっと強い勇者だと感じたのに。
とんだ見込み違いだ。
はあと再び溜息をついて、宿の扉を開ける。部屋には勇者の仲間がいるはずだ。
カノンは魔法使いとして彼らの仲間の一員をしている。
ついでにお金の管理も。一番カノンが安心出来るからと、勇者レオンに渡された。
その時カノンは思った。
こいつの安心出来るは絶対信用しないと。
もう一回カノンは溜息をついた。
現在勇者達は魔王を倒す旅に出ている最中だった。
ちなみに、カノンは魔王である。
呻くように頭から血を流し睨みつける勇者。
すでに他の二人の仲間は、瀕死の重症だった。
そんな絶体絶命の勇者を、魔王カノンカースは不敵に見下ろした。
魔物の瞳である金の瞳に宿る冷酷さと傲慢さが見て取れる。死神とも言えそうな黒い衣装に、銀色の長い髪。
恐ろしく整った美しい容姿が、更にかの魔王の恐怖を引き立てていた。
「何だ、お前はこの程度か?」
「まだ……俺はまだやれる!」
勇者はふらつきながらも立とうとして、膝をつく。既に勇者も限界だった。
その様子に魔王は嘲笑う。
「無理をするな、人間。元々人間が我ら魔王に勝とうなど、思いあがりも甚だしいのだ」
「……く、それでも、俺は……勇者として……」
「他にも多くの勇者がいるのだ。お前が倒れた所で代わりは幾らでもいるぞ?」
「……だからといって、ここで……諦めるわけにはいかない!」
そう、最後の力を振り絞るように勇者は剣を振り下ろした。
それを馬鹿にしたように魔王は笑い、結界で防ぐ。
その結界にはじかれて勇者が転がった。再び起き上がろうとするも、既に勇者にはそんな力は残されていなかった。
魔王が勇者の前にかがみ、頭を掴む。勇者の口から血が零れた。赤い血。
魔王は魔物としての衝動で、勇者の口を伝う血を舌で舐め取る。
それに僅かに勇者が目を見張り、魔王を凝視する。その様子に、魔王は笑う。
「……なんだ?、頬が赤いぞ?」
「……るさい、一体……何の真似だ!」
「旨そうだったので、舐め取った。それだけだ」
「!」
「非常に美味だったぞ?、お前の血は」
魔王は艶かしく勇者に微笑み、そのままもう一度その血を舐め取った。
そしてゆっくりと顔を離し、右手で勇者の頭を掴んだ。
それが痛かったのだろう、勇者が苦悶の声を上げた。
「さて、お前の記憶を少し読み、書き換えさせて貰う。なに、全てではない。それに、ちょっとした拍子に元に戻ってしまうものだから、それほど恐れるものではない」
「止めろ……やめ……」
必死に勇者が声を搾り出す。けれどそれに魔王は薄く笑みを浮かべるのみ。
「今のお前の力では勝てないと分かっているだろう?。なに、次に目を覚ました時には、この事は忘れている。そして僕の事を仲間の一人だと思っている事だろう。ふむ、お前の幼馴染に魔物とのハーフが……しかも死亡している?」
「やめ……違……」
「ではその者に僕は成り代わろう。短い間であろうが、よろしく」
「やめろ――――――!」
そう叫んで、勇者は意識を失った。
その間に魔王は記憶の書き換え、および治療を仲間ともどもしてやる。
そして、瞳の色を、片方だけ金のままもう片方を青色に変化させて、魔法使いのような出で立ちに魔王は変装する。
元々、昔の話だが人のふりをしていたことがあるのだ。造作も無い。
ローブのフードをかぶり、顔が良く見えないようにする。あまり容姿をさらすとろくな事にならないのだから。
一通り変装が終わり一息つく。
そして倒れ込んでいる勇者を冷たく一瞥して、
「せいぜい利用させてもらうとしよう」
そう、魔王はにやりと笑ったのだった。
後になって思えば、それこそが運のつきだった。
つづきます




