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引いた時点でお前は負けだ

「何でジュース1本が500リンもするんだ! 適正価格ってあるだろう!」

「はいはーい、カノンちゃんどいてね。……おじさん、2リンでどう?」

「いいよ」

 あっさりと値引きをしたおじさんを見て、カノンは唖然とする。

 何だこれ。

 カノンが目を白黒させているのが面白いのか、イオは先ほど買ったジュースをカノンに一つ渡す。

 釈然としないながらも受け取り、席に着き、その飲み物に口をつけると優しい甘さが広がった。

 町の一角の喫茶店。飲みものをカウンターに買いに行ったカノンが凍り付いているのを察して、イオが助け舟を出してくれた。というか、

「……なんで?」

「うん、もっと値切れたっぽかったね。それともカノンちゃんが可愛いからおまけしてくれたのかな?」

「いや、そうではなく、何であんな値段に?」

「ああ、カノンちゃんは知らないんだっけ。この町、フーリエの町は商人の町でね。大抵、一番初めに吹っかけてきて、それを何処まで値切れるかという、そういう町なんだ」

「だから500リン?」

「そう、値切られる事前提。何も言わなければ店はぼろ儲け。他の町は商品についた値段をそのまま買うでしょう? だから初めてでこの町の文化知らなくて、多くの場合、相手の言い値で買ってしまうか、話もせず怒って拒否して帰っちゃったりするんだ」

「それじゃあ駄目なんだ。なるほど、だから値引き交渉を……」

「うん。それに初めにすごい値段にしておくと、普通の値段でも安く思えるでしょう?」

 賢い町だとカノンは思う。

 それに商人の町というだけあって色々な物も売っているし、何より先ほどイオに買ってきてもらい食べた果物も美味しかった。本当によそ見しすぎて危なくイオとはぐれる所だったのだが。

 現在新しい町に来て、イオとカノン、レオンとトランの二組に分かれて、買い物をしている最中だった。

 カノン達は、簡単な装備で、レオン達は少し重めの装備が必要なので二つに分かれたのだが。

「は! レオンがまた何かアホことをやっている気がする!」

「カノンちゃん、本当にレオンの事が大好きだね」

「な! イオ、そんな事……」

「"幼馴染"として大好きなんだよね!」

 にまにま笑うイオにカノンは嵌められたと思った。そして、ぶすっとして、

「イオはトランの事はどうなの? 好きなの?」

「好きだよ、性的な意味で」

 ここまであっさりと言われると、カノンは更に仕返しと思える言葉が浮かばない。

 悔しくなって、むーと唸りながらジュースに口をつける。

 本当にカノンには分からないのだ。確かにレオンといると居心地がいい……のか?。

 色々と今までの所業を思い出して、カノンは何故このパーティにいるのだろうと再度悩みかける。

 それでも、レオンはいい奴で。もう少しだけ一緒にいても良いとカノンには思えてしまう。

 そんなカノンをイオは面白そうに眺めていたのだった。


「何とこの鏡、好きな相手を映してある言葉を唱えるとあら不思議! 好きな人の色々なエロイ姿が!」

 山盛りの人だかり。全員男ばかりだが、そもそも全人口で女性の割合が少ないのだがそれを贔屓目に見てもアレである。

「おい、トラン、これは買いだよな」

「そうだな、レオン。これを買わねば男ではない」

 今なら可愛いお守りも付けて、いちきゅっぱのー、と話をしているおじさんに、これ買いますとレオン達は告げたのだった。


「で、それで装備はこれだけしか買えなかったと」

「お許しくださいカノン様。ほんの出来心だったのでございます」

「ささやかな夢を買ったのでございます」

「僕、まさかトランにまで正座でお説教する事になるとは思わなかったよ」

 ふふふと顔はにこやかなのに、どす黒い怒りの雰囲気をかもし出しながらカノンは仁王立ちになっている。

 そして一時間が経過した頃。

「カノンちゃん、そろそろ休憩したらどうかな」

「とりあえず、トランは開放。レオンは追加だ」

「何で!」

「気に入らないから! まったく無差別にそんな……」

「カノンだって興味は無いのか! ちょっと魅力的だなって子のエロイ姿!」

 言われて、レオンのが見てみたいな、とか頭に浮かんだものの、何でレオンのものが見たいんだ僕は、とカノンは打ち消した。

 そもそもレオンは目移りしすぎて良くない。まったくレオンは僕だけを見ていれば良いのに。

 "幼馴染"なんだから。

 と、そこでトランが悲鳴を上げた。

「な、何ということだ! く、こんな事って……」

「カノンちゃん、これにただの鏡みたい」

 そこでレオンが悲鳴を上げた。

「そんな! 俺の夢が!」

「レオンもそんな悲痛な顔をしないで。僕も残念だけれど、出店によくあるんだ、こう実際買ってみると……て」

「く、明日店主に……」

「明日は、僕と一緒に防具買いに行こうね、レオン」

 にっこりと笑うカノンがレオンの肩を叩いた。そんなの探すよりも、まずは防具だ。

 だってレオンは弱いのだから。

 それを見て、イオが、じゃあ明日はトラン、一緒に買い物に行こうねと誘っていた。

 ちなみに嘆きつつも、レオンがにやりと笑っていたのをカノンは気づきもしなかった。

 そんなこんなで、レオンは目を放したら駄目だ、買い物でも、とカノンは学習したのだった。


お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。


次回更新は未定ですが、よろしくお願いいたします


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