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酷い、酷すぎる

「レオン、カノンちゃん見つかった? ……どうしたの?」

 一人で帰ってきたレオンに問いかけるイオ。

 けれどレオンは無言のまま、一人部屋へと戻っていく。

「あれ、まずくない?」

「……あれは思いあまって何かをしでかす危険度だ」

 そうイオとトランが話合って、それを聞いたルカが、顔を真っ青にしてレオンを追いかけたのだが。

 レオンは部屋に閉じこもり出てこない。

「おーい、レオン。ほら、トラン、秘蔵のエロ本出して」

「これはレオンにも見せていない掘り出し物だぞ」

 しかし部屋の中から何の返事も無い。次にルカが、

「あの、レオンさん、少しお話が……」

「……今はルカの顔は見たくない」

 ルカがはうっ、と小さく呻いて悲しげに廊下の隅に座り込む。なので、レンヤが軽くルカの肩を気にするなと叩いてから溜息をついた。

「……ルカの事で色々と経験があるので……話しませんか?」

「……レンヤ、それはどういう意味なのだ。我は……」

「……レンヤは入っていいぞ」

 そう言って鍵が開けられる。

 ルカがいじけた。

 そんなルカにレンヤが何かを囁くと、さあっと顔を青ざめさせてそれだけは許して、とルカが言っていたりした。

 そしてそのルカも散歩してくるといってふらぁと外に出て行ってしまった。

 ばらばらになっては仕方がないので、イオとトランは1階の食堂で待つ事にしたのだった。


「それで、レンヤに聞きたい。もしもあのルカが、女の人と顔を赤らめて恋するように話していたらどうする?」

「すぐさま連れて帰って言う事を聞かせます」

「そうだよな……。それくらいでないと、伝わらないのかな……俺は、まだ怖いのかな?」

「幸せだからでしょう。だから不安になる」

「傍にいて、捕らえられたと思ったのに、カノンがもっと遠くに行ってしまったような錯覚を覚えるんだ」

「それならば抱きしめればいい。そして、好きだと、愛していると囁けばいい。ルカも未だにそう言われるのが恥ずかしいようで、けれど、すぐにとても嬉しそうに笑います」

「そうか、そうだな……」

 もっと甘やかして蕩かせて、カノンがレオンの傍でないと嫌と思えるようにすればいいのだ。

 他の誰も、目に入らないくらいに。

 そんなレオンに、レンヤが続ける。

「それに、ここまで来るとあまり魔王をじらさない方がいい」

「……それは魔物だから、か?」

「いえ、その……魔王は生殺しが好きなんです」

「……え?」

「もともと、ルカが力を使えなくなったあの首飾り。あれを俺につけて、自分のものにしようとしていたのです。それが手違いでああなってしまったのですが。そしてそれがばれた時にルカが言った台詞が『傍にいてもらえれば良いかなって』でした」

「ええっと、それだけ?」

「キスぐらいはしてやるといっていました」

「……身に覚えがありすぎて怖い。でもそれって、あれか。魔王が攻めだった事に起因……」

「そう思っていたから、今までの勇者と魔王は上手くいかなかったのです。考えてみてください、好きで可愛いあんなルカやカノンに、べたべたくっつかれたりキスしたりするだけでそれ以上何も出来ない状況を!」

 レオンは考えてみて、今の状況を冷静に延々と考えてみて。

「……地獄だ。酷すぎる」

「でしょう。それも、好き、愛していると言われ続ければ……そういう事です」

「分った。少し積極的に行こう。そうだな……手に入ったから、無くすのが怖かったのかな」

「怖いよりも俺の場合手放したくない思いの方が強いですから」

「今まで俺は、欲しいものは皆他の人のものだったから……無意識の内に諦めていたのかもしれない。でも、もう一度がんばる」

 そう笑うレオンにレンヤは頷いたのだった。


 なんとなくカノンがこちらにいるような気がしてやってきたルカは、そこにいるカノンと一緒にいた女性を見て固まった。

 はやる気持ちを抑えて、出来るだけ落ち着くよう努力して、平静を装って。

「カノンさん、探しましたよ。あれ、こちらの方々は、地の四天王の……」

「ああ、ミユとユウトだ。すごいぞ、ミユは物知りだ! 恋愛の事、色々相談に乗ってもらっていたんだ」

「そうなのですか」

 そうミユを見ると、優しげに微笑む。

 ルカは抱きつきたい衝動に駆られながらも、必死で堪えた。

 そんなるカの様子に気づかず、カノンは迷いが吹っ切れて笑う。

「やっぱり、僕はレオンが好きだから、時には喧嘩もするけれど、それだけ近くにいるって事だから。だから、レオンと一緒にいる!」

 嬉しそうなカノンの様子に、ルカは頷いた。

 そうでなくてはルカだって困るのだ。

 それに、自分の気持ちに嘘はつけない。それをルカも知っていてカノンも気づいたから。だから、

「レンヤにごめんなさいって言ってくる。僕の方が大人なのに、大人気ない態度をとってしまったから。もう戻るよ。ありがとう、ミユ……そして、ユウト。黙ってミユと話させてくれたから、お前にも礼を言う」

「……勝てる気がしない」

「? 何が?」

「いえ……それで、いつごろ我が城に?」

「んー明日行くよ。近いだろう?」

「そうですね、転送陣を使えば」

 そう会話して、カノンは走り出す。それにルカも続いて。

 手を振る二人に、ルカが一度振り返って彼らの姿をまるで目に焼き付けるように見ている。

「ルカ、どうしたの?」

「いえ、何でもありません」

 そして二人は、レオン達のいる宿へと走っていったのだった。


 そんなカノンとルカを見送りながら、

「あれが魔王、カノンカース様に、その孫か。……どうした、ミユ」

「なんだかあのルカって子のほうが物凄く愛おしい気がしたのだけれど、何故かしら」

「あちらの方が、大人しい感じだからでは? しかし、もう少しこう亀裂が入るように……」

「カノンカース様をお兄様は泣かせたいのですか?」

「いや、そういうわけでは……」

「私、知っているのですよ? お兄様方が何か悪巧みをしていることを」

「な、何の事だ?」

「……朴念仁は黙っていろ。どうせ振られるだけだし」

「何で駄目な事前提なんだ!」

「寝取ろうとする奴は兄と呼ぶ気にもなれないもの」

「……あれ、人間だし、王族だぞ? 私は別にそんな……」

「……お父様達のような失敗だけはしないようにしてくださいね」

 そう言うと、ユウトは大人しくなる。

 ミユの言いたい事は分る。けれど、それでも人間に渡したくない、渡せない。

 魔王様を悲しませる訳にはいかないのだから。

お気に入り、評価ありがとうございます。とても励みになります。


次回更新は、近々……だといいな。

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