潜在的な欲求
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レオンはがばっと起き上がった。
「はあはあはあはあ」
汗でぐっしょりと濡れた服。それほどまでに恐ろしい悪夢を見たのだ。
息を整えながらレオンはゆっくりと、すぐ隣で眠っているカノンを見る。
すうすうと息をしながら、あどけない表情で眠っているカノン。
レオンはなんとなくむらっと来たが、先ほどの夢の事を考えるとそういう行動に移せない。
それほどまでの悪夢だったのだ。
そこで、こんこんとドアが叩かれてひょっこりとイオが顔を出す。
「おはよう、レオンにカノンちゃん、朝ごはん……あれ、カノンちゃんまだ起きていないんだ。それにレオンはすっごい汗だよ?」
「いや、なんか、恐ろしい夢を見た……」
「ほう……じゃあ、久しぶりにナンパでも……レオン?」
冗談のつもりでイオは言ったのだが、その途端レオンはがたがたと震えだす。
「やめてくれ……俺、本当にカノン一筋なんだ。それに、冗談でも今はその話はしたくない。恐ろしい夢を見たからな」
そう言いながら体を震わすレオン。
イオは、レオンが怯える悪夢とやらにちょっと興味がわいたので聞いてみた。
「じゃあ僕に話してみなよ、悪夢って話すと楽になるって言うよ」
「……嬉しそうだな……でもこのまま抱えているのもきついから話すけど……地味にありそうな夢だったんだ」
「くわしく」
「夢の中で、カノンにやらせてくれないからナンパに行ってやる、銀髪の可愛い側室ゲットだぜ! って言ったんだ」
「ふむふむ」
「そうしたらそのままカノンに押し倒されて」
「ふむ、続けたまえ」
「『やっぱりレオンに僕を良い様にさせるのがいけないんだね。大丈夫、僕の大好きなレオンへのやり方はなんとなく分るから、良い子に横になっていれば良い。僕の愛しいレオン……たっぷりと可愛がってあげるよ』と言われた」
「……つまり、レオンが受けになったと」
「ああ、しかも俺、夢の中で『あんあん』啼いてたし……これはない」
「潜在的な欲求とか?」
「そんなものあってたまるか! 俺の沽券にかかわる! しかもカノンは魔王っぽくてかっこよくて、しかも『一生僕の腕の中で可愛がってあげるよ、レオン』て甘く囁かれるんだぞ! 俺だってそういう雰囲気で、そういう最中にカノンに囁きたい……畜生……」
そう恨めしそうにカノンを見ると、幸せそうに時折笑いながら眠っている。
「……襲うか」
「……レオン、さすがにそれは好きな子に対してやっちゃいけない事だと思うの」
「だってこんなにカノンが可愛いのに! 良い匂いがするし! もう、もう……」
「レオン、好き、むにゃむにゃ」
カノンが幸せそうにそういった。どうやら寝言らしい。
それを聞いた瞬間レオンは固まって動けなくなる。そんな無言のレオンにイオは、
「…………………………………………」
「どうする、カノンちゃん寝言でもこんな事を言っているけど」
「しくしくしくしく」
「いや、まあ愛されているからいいんじゃない?」
レオンはいじけた様に俯いて答えなかった。と、
「カノンさん! 助けて!」
ルカが飛び込んできた。
そうすると眠っていたはずのカノンは目をパチッと開いてすぐにがばっと起き上がる。
「ルカ、どうしたの!」
「レンヤが、本当に回復魔法を……」
「? 意味が分らないけれど、ルカをいじめる奴は許さないぞ!」
と言っているカノンをみて、レオンは一回溜息をついてから、
「……もういい、欲望のままに生きよう」
「……え、ちょ、レオン? どうして押し倒して……や、皆が見て……レオンの馬鹿――!」
そうカノンの蹴りがレオンに炸裂したのだった。
むすー、と不貞腐れた表情でもくもくと食事を取るカノンとレオン。
「あ、あの……レオンさん、ごめんなさい」
「何でルカが謝るんだ。こんな約束守れない奴なんか放っておけばいいのに」
「……全部カノンが悪いんだ」
ぼそりとレオンがカノンのその言葉に言い返すと、辺りの空気が凍った。
お互い相手の顔を見ずに、手に持ったフォーク等を置いた。
「レオンはそういうことでしか僕に興味がないのか」
「カノンの方こそ、俺に対してもう少しデレてくれてもいいだろう」
「ふん、レオンは釣った魚に餌はやらない主義なのか?」
「カノンが餌をくれれば、もう少し考えてやるよ」
「……散歩してくる!」
怒った様にテーブルをバンと叩いて立ち上がり、カノンは外へと消えていった。
そんなレオンの肩をイオが叩く。
「レオン、追いかけなくていいの」
「何で俺が追いかけないといけないんだ」
「レオン……」
「……ちょっと外の空気を吸って来る」
そう素直じゃない答えをレオンは返して、外へと歩き出したのだった。
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次回更新は、近々……だといいな。




