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第5章:エルサレム遷都と政教分離の断行

ダビデはサウル王の死後、全イスラエルの王として即位した。光の書物が次に映し出したのは、彼が難攻不落の要塞であったエルサレムを攻略し、そこを新国家の首都と定めた『エルサレム遷都』の場面である。元の聖書では、ダビデは遷都と同時に、神の臨在の象徴である「契約のアーク」をエルサレムに迎え入れた。その際、ダビデは神の前で狂喜乱舞し、衣服がはだけるのも構わずに踊り狂ったとされる。それは、国家の中心に神を据えるという、完全な神権政治の確立を意味していた。「おい、伊藤。この男は何を踊り狂っているのだ」織田信長は、幻影の中のダビデを見下ろし、心底あきれ果てたというように眉をひそめた。「王自らが理性を失い、神の箱の前で衣服を乱して踊るなど、威信の失墜以外の何物でもない。臣民の手前、示しがつかぬではないか。余が足利義昭を奉じて京に入った時も、神仏への敬意は払ったが、決して自らの権威を宗教の下には置かなかった。王の権威は、宗教を『利用』することはあっても、宗教に『平伏』してはならぬのだ」「全くもって同感です、信長公」伊藤博文もまた、冷静な目でその光景を見つめていた。「遷都の本質は、古い部族間の利害関係を打破し、中央集権国家を確立するための『政治的決断』であるべきです。そこに宗教的な熱狂を持ち込みすぎれば、国家の最高意思決定が神官や預言者の託宣に左右されるようになり、近代的な合理性が失われてしまいます。ここは、大日本帝国憲法を制定した際の経験を活かし、明確な『政教分離』と『君権の独立』へと書き換えましょう」伊藤は万年筆を強く握り、光のページに青い理性の文字を刻み込んでいった。ダビデの狂乱のステップを、冷徹な統治者の歩みへと修正していく。『ダビデはエルサレムを首都と定め、国家の政治機能をここに一元化した。彼は民の心の安定のために「契約の箱」を都に迎えたが、それは宗教の権威に国を委ねるためではなく、宗教を国家の秩序のもとに管理するためであった。ダビデは祭司たちに厳かに告げた。「祭祀の儀礼は汝らに任せる。しかし、国の法を定め、兵を動かし、民を統治するのは、法に則った王の職責である。神の領域と、国家の政を混同してはならない」』伊藤の筆によって聖書が書き換えられた瞬間、エルサレムの街を満たしていた狂信的な熱狂が、一気に静まり返った。幻影の中のダビデは、衣服を整え、威厳に満ちた姿で玉座に腰掛けた。彼の周囲に集まるのは、神託を告げる預言者ではなく、統計や法を重んじる冷徹な文官たちであった。契約の箱は、国家を支配する主権者としてではなく、国民の精神的統合の象徴モニュメントとして、美しく整備された神殿の奥深くに静かに安置された。「ふむ、これで政治が宗教の手から完全に離れたな」信長は満足そうに腕を組んだ。「宗教は民の心を安んじる道具であればよい。国を動かすのは、常に生きた人間の意志と法だ」「はい。これでエルサレムは、中世の宗教都市ではなく、法と行政が機能する『近代国家の首都』へと生まれ変わりました」伊藤は万年筆の先を見つめながら、静かに息を吐いた。しかし、彼の表情にはまだ緊張の色が残っていた。「ですが信長公、ダビデの物語には、この後に最大の汚点が控えています。彼の欲望が引き起こす、あの『ウリヤの妻バテシバ』をめぐる事件です。人間の自由と権利を認めた我が憲法のもとで、王が自らの欲望のために法を破った時、歴史はこれをどう裁くのか。次が正念場です」「フッ、王の不祥事か」信長は獰猛な笑みを浮かべた。「どれほど偉大な王であっても、法を越えて私欲に走れば国を危うくする。余の『天下布武』の法が、身内の不始末をどう律したか、見せてやる時が来たようだな」光の書物は、悲劇の予兆を孕んだ重々しい音色を響かせながら、次のページを静かに開き始めた。

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