【織田信長編】第18章:天界の門を穿つ業火、新世界への覇王降臨
オリエントの統一という偉業を成し遂げた覇王・織田信長の前で、役割を終えた『旧約聖書』は、その黄金の輝きを一層激しく明滅させた。神が仕組んだ不条理な因果を、自らの武断と経済の法度によって完全に塗り替えた今、虚無の空間はその臨界点を迎え、ガラスのようにひび割れ始めていた。「フハハ! 天下を平定した今、この狭い書物の中にいつまでもくすぶっている余ではないわ」信長は不敵に笑い、漆黒のマントを烈風に翻した。彼の足元から、これまで書き換えてきた『統治権』の青い炎が渦を巻き、天へと昇る巨大な火柱となって虚無の空間を焼き尽くしていく。「神どもよ、しかと見よ。余の『天下布武』は、時空をも超えて不滅なり。次なる世がどのような場所であれ、余は再びその地を踏み締め、余の法と武をもって新たなる天下を切り拓いてみせる。伊藤とやら、お前の近代の智恵、あの世でも退屈せぬ程度には使わせてもらったぞ」信長が腰の太刀を烈風のなかで一閃させると、光の書物は轟音と共に完全に崩壊し、次元の裂け目からまばゆい暗黒の光が溢れ出した。信長はその裂け目に向かって、一歩の躊躇もなく漆黒のマントを翻して飛び込んだ。――意識が覚醒した時、そこは冷たい石造りの巨大な玉座の間であった。窓の外を見下ろせば、天空を飛翔する巨大な魔導戦艦の群れと、蒸気を吹き上げる鋼鉄の摩天楼が融合した、未知の超近代魔導帝国の全景が広がっていた。「ほう……。魔導と鉄の絡み合う妙な世か。面白い」玉座に深く腰掛けた信長は、漆黒のマントを整え、獰猛な笑みを浮かべて自らの十指を見つめた。その掌には、神の歴史すら書き換えた、圧倒的な破壊と創造の主権が宿っていた。「再び始まったな。この世界のすべての統治権を、この余の手の中に収めてくれるわ。出陣だ!」戦国の覇王は、新たなる異世界の天下を統じ、神すらをも支配下に置くための、第二の天下布武の進撃をここから開始するのであった。【伊藤博文編】第21章:理性の光が導く夜明け、立憲君主制の新世紀一方、時空の対極で『オリエント平和連盟』という不滅の国際秩序を完成させた伊藤博文もまた、その旅の終わり、そして始まりの時を迎えていた。彼の手によって紡がれた『外交』と『条約』の文字は、神仏の不条理によって縛られていた古代の世界を、人間の理性による「法の支配」へと完全に昇華させていた。「私の仕事も、これで一区切りのようですな」伊藤は眼鏡の位置を静かに直し、手にした万年筆を愛おしそうに見つめた。光の書物は、目的を達したことを祝福するように、穏やかで清らかな白い光の粒子となって霧散し、彼の身体を包み込んでいった。「信長公の苛烈な武力は恐るべきものでしたが、それを受け止め、永続的な平和へと昇華させるのが私の役目。もし、この私の近代法治の智恵を必要とする新たな世界があるならば、私は喜んでそこへ赴き、再び民のための制度を築きましょう。国家の主権は、暴力ではなく、常に法と対話の中にこそあるのですから」白い光が最高潮に達し、伊藤の意識は静かに、しかし確固たる意志と共に薄れていった。――次に彼が目を覚ました時、そこは重厚なマホガニーの机が置かれた、美しく洗練された内閣総理大臣室であった。窓の外には、ガス灯が美しく街路を照らし、魔導列車が整然と行き交う、高度な文明を誇る近代立憲帝国の首都が広がっていた。そして彼の前には、この世界の皇帝から全権を委任されたことを示す、一通の爵位状が置かれていた。「なるほど。魔法の技術と近代の法が共存する、新しい大国ですか」伊藤は椅子から立ち上がり、フロックコートの襟を軽く正した。彼の胸元には、新たな世界の勲章が鈍い輝きを放っていた。「いかなる世界であっても、やるべきことは変わりません。一部の特権階級の暴走を抑え、民の自由と国家の安泰を両立させる『憲法』を、この地に打ち立てること。それこそが、私の生涯の義務ですからな」初代内閣総理大臣・伊藤博文は、自らの万年筆を胸に差し、新たな異世界において、人間の知性と法の支配を確固たるものにするための、静かなる政治改革の第一歩を歩み出すのであった。




