第百二十三話「新年一発目の投稿、巳年なら蛇回……なんてことにはならならず、単にうちの彼氏がえっちなコスプレしてるだけの回」
「ャはぁぁ~♥ ダイちゃ~ん、
凄くよく似合ってるねぇそのコスプレっ♪
最高だよホントさぁ~♥」
「……そう、でしょうかね?
自分自身あまりそのような実感は湧かないのですが」
場面は螢都の繁華街に建つラブホテル『ピンクコヨーテ』の一室。
例によって『主懇陽拝党』と付き合いのあるその店は
サービスの充実っぷりもさることながら、とある"唯一無二の特徴"のお陰で人気を博し、独自の地位を確立していた。
その特徴が何なのかについての説明は中々面倒なんだけど……
「謙遜することないじゃないのさぁ〜♪
実際凄く似合ってんだからっ♥」
「……申し訳ないのですが、そもそも現状自分めは
"似合っている"との評自体に疑問を抱かずに居られんのでして……」
コスプレ姿を絶賛したにもかかわらず、
ダイちゃんの返答はどうにも不満げというか、自信が無さそうな感じ。
……心からの賞賛を素直に喜んで貰えないのは正直不本意だけど、
さりとてこの子がそういう台詞を口にしてしまう理由も分からなくはない。
何故って? そりゃあんた……
「と云うのもですよ、自分めの今のこの姿……
此れなるは"仮装"を通り越して"変化"の域に御座います。
己自身の姿かたちが丸ごと別のものになっているとあっては、
最早似合うとか似合わないとかの次元ではない気がするのですがね……」
……ダイちゃんの姿が――上の台詞で彼自ら語った通りに――
パッと見全くの"別種族"にしか見えないほど、全身隅々まで"様変わり"しちゃってんだからねぇ。
具体的に言うなら今の彼は『気品と色気に溢れた色素欠乏のイケメン人狼』ってトコかな。
ダイちゃんで狼というと燃え盛る憤怒が思い浮かぶけど、
あっちは全身真っ赤で如何にも凶暴な怪物っぽくて、
かつ一角獣や猿の特徴も混じったキメラなビジュアルだから全くの別物だ。
方向性の違いは服装にも表れていて、
今のダイちゃんが身に纏うのは高級感溢れる漆黒の執事服……
それもボディスーツの如く身体に密着する構造な上、
全身至る所へ革製のベルト――ボディハーネスってのかな――が拘束具みたいに巻き付いてるもんだから、
比較的厚手の布越しな割に引き締まって抜群なスタイルがくっきりハッキリ強調されててやたらとエロいったらない(あと眼帯で片目隠してるのも地味にシャレててエロい)。
特にあの両脚の、太腿か股関節辺りへVの字型に巻かれたベルトはなんなんだ。
あんな中途半端でいじらしくもどかしい位置に堂々と陣取って、無生物の分際であたしを挑発してるとしか思えない。
――『やい女、お前の彼氏の足に巻き付いた俺達を思い切り上へ引っ張り上げたいと思っただろう。絶対思ってるよなお前みたいな奴は』
――『そうしたら必然、私らは彼氏くんの股関節へぐいと食い込んで、まるでビキニパンツみたいにスラックスを区切るからねえ。たまらないよねえそれは』
やばいどうしよう、幻聴だ。両脚のベルトが喋り出した。
――『俺達が左右から圧迫してやれば、スラックスの中にみっちりぎっちり詰まった彼氏のイチモツとキンタマ袋がより強調される形になるからなあ』
――『そうともさ。しかも彼氏くんはマゾだからねえ。お股のもっこり圧迫されたら、そりゃあもうおちんぽでっかくしちゃうだろうさぁ』
ああわかるとも。わかるともさ。そうなったなら最高さ。
圧迫されたダイちゃんのダイちゃんが刺激されて"おっき"するなんて極上だよ。
(……ヤバいヤバい。幻聴に賛同するなんていよいよ末期じゃないか)
すんでの所で辛うじて正気を保ったあたしは、幻聴が入り込む隙を与えないように脳内を妄想で埋め尽くす。
(あぁ~もうホントたまんないよマジでさぁ~♥
ボトムス越しの"もっこりおマタ"はまさに可能性無限大っ……♥
撫でて良し擦って良し突いて良し揉んで良し掴んで良し握って良し引っ叩いて良し膝で圧迫して良し程よい加減で蹴り上げて良し……♥
焦らしに焦らし散らかしてから一気に脱がせて色々解放してやるのはロマンだけど、敢えて脱がさず限界まで弄り倒すのもまたオツなもんさ……♥
ま、どっちにしろ色々と弁えたり配慮したりしなきゃだけどもね~♥)
……おっと、そういえばこの子のコスチュームについて重要な部分の言及を忘れてたよ。
(で、そんな感じで全身エロエロドスケベな執事コス……
なだけでも正直大満足なんだけど、今回のコスチュームはエロだけじゃ終わらないんだなコレがっ♥)
ぶっちゃけると今回ダイちゃんが着てるのは『単なる執事服』なんかじゃない。
……いやまあ、密着だとかベルトだとかの時点で普通じゃないのはそうなんだけど、取り分け目に見えてストレートに異質な点があるんだ。
(近頃の作者や作者の相方の書き込みを諸方で追いかけてた読者のみんなは概ね察してるだろうけど、何と今のダイちゃん膝から下がないんだよね……)
勿論大まかなシルエットそのものは一応、五体満足っちゃそうなんだ。
ただ実際の所彼の両脚、その膝から下は丸ごと漆黒のメカメカしい義足になっててね。
単なる歩行用の義足にしてはあんまりにも厳つくて……
なんか如何にも変形しそうだったり、色々な武装が仕込まれてそうな、やたらとカッコいいデザインなのさ。
(蹴りの一発で並みの人体を半壊させられそうな威圧感と迫力……!
いいねぇ〜カッコいいねぇ、最高にクールでイカしてるよぉ~♪)
油断してると余裕で殺られそうなスリルは、量次第でエロい気分を引き立てる最高の香辛料になる。
不貞だ露出だ痴漢だと、世の中性行為にスリルを加えようとバカやる奴が数多いのもそういう理由からだろう。
……勿論あたしは連中ほど終わっちゃいないけど、心理そのものは理解できる。
例えば目の前で最愛の彼氏がエロエロなコスプレ姿を披露してくれてるのは最高だし、
ましてその上ガチの凶器なんか携えて『いつでもヤれるしいつでも殺られる』ような佇まいで居てくれるような――つまり、まさに今この時みたいな――状況は、あたしにとっちゃ願ってもない最高のシチュエーションなワケで。
溢れ出るリビドーにスリルが混ざり、刺激と粘り気を増してあたしの意識を浸蝕していく。
(……やっばいなぁ、早くもムラムラしてきちゃったよ♥)
……とまあ、正直今だって、襲いかかりたい衝動を抑えるのに必死なくらいなんだ。
けどダイちゃんはどうやらそうでもないらしく……
「……地球の諺に『馬子にも衣装』なんてのがありましてね。
要は見た目さえ整えてしまえば小物でも立派に見える、ぐらいの意味ですが……
今の自分はまさに"そう"なのでは――ッの゛ほヲあッッ!?」
つい衝動を抑え切れず、
やけにネガティブな彼を一旦黙らせる名目で股間をむんずと掴んでやる。
「ハイ、とりあえず卑屈になるの禁止ね~。
なんだってそんな自己否定しがちになってるんだか知らないけど、
とりあえず彼女が似合うって褒めてんだからそこは素直に受け止めて誇らし気に振る舞うのが彼氏の務めでしょーが」
「……ッッ。失礼、致し、ましたっ……。
"本家"が、余りに素晴らしいものでッ……!」
「……あぁ~
『自分如きが変化魔術まで使ってコスプレしていいのかわからない』ってヤツ?
……別にいいんじゃない? てかそんなの気にするのもバカらしくない?
極論、本家本元には何の影響もないってかさ~
そもそも"そのキャラ"選んだの、他ならぬダイちゃんじゃん?
心から"彼"を推してて、
憧れ通り越して尊敬の対象ですらあって、
だからせめて"彼"みたいに在りたいって願望を抱いて……
その結果"思い浮かべた"んならさ、それは誇りこそすれ恥ずべきようなモンじゃないでしょうよ」
「……確かに、仰る通りに御座いますなァ……」
どうにか反省できた(?)ようなので、一先ず股間から手を放す。
そして改めてダイちゃんの"コスプレ姿"をまじまじと至近距離で、まさぐり嘗め回すように観察する。
「しっかし、ホント凝ったビジュアルだよね~。
情報量が多いっていうか、属性過多っていうか……」
「加えて内面も"そう"ですからなァ。
一粒で二度ウマいどころではない、
多彩な魅力に脊椎を生やし毛皮と執事服で包んだような、
そんな傑物でしたので」
「ホホーウ、そりゃ凄いねぇ……。
なんか気になって来たし、ヤる前に改めて聞かせて貰っていい?」
「ええ、パル殿さえよろしければ是非とも……」
てな感じであたしはダイちゃんから、
彼がコスプレしてるキャラについて色々と話を聞いていく。
(州=∀=)<……とまあ、その辺は気になるなら各自調べて貰うとして……
(州=∀=)<なんかいきなり理解の外過ぎる展開で読者のみんなも困惑しただろうし、
次回冒頭からはあたし達が今に至る迄の経緯についての回想パートと洒落込もうか。
(州=ω=)<序でに『ピンクコヨーテ』が誇る"唯一無二の特徴"についても解説するよ~。




