第百二十二話「よく言うじゃん?『人々が助けを求める時、救い主は必ず現れる』ってさ」
どうも。承認欲求を満たしたいだけのクズです。
性懲りもなく戻って来ました。
これからは承認欲求になんかとらわれず、
自分の書きたいものを書いていきたいですね。
【ギャーッハハハハハハハァ!
こんな街、焼き尽くしてあげるわぁぁぁぁぁ!】
場面は螢都の繁華街。
妖魔戦隊ヘンゲンジャーに倒されたものの
謎の光線か何かの作用で巨大怪獣に姿を変えた媚累禍は、
その質量と怪力にものを言わせて街を破壊し始めていた。
【螢都よ! 陽元よ! エニカヴァーよ!
心して聞きなさい!
正義の使徒が今戻ったわァ!
お前たちに裁きを下す力を身に着けてねェ!】
しかもそれに加えて、
今現在この場には"こういう状況"に対応できそうな代物……
要するに怪獣との戦闘を熟せそうな巨大戦力がないってのが結構ヤバい。
地元の冒険者ギルドや警察、消防、軍なんかの組織が出張って来る様子はなく、
本来なら巨大戦力を持っているハズのヘンゲンジャーも
原因不明のトラブルに見舞われ身動きが取れないでいる。
まして"そういう状況"が実質ほぼ管轄外気味なあたし達じゃ焼け石に水か、
下手すると火に油を注ぐ結果になりかねない。
まさに絶体絶命かつ八方塞がり……
所謂"詰み"の状況と言えた。
「……矢張り自分が出向くしかっ」
「や、 だ か ら ダ メ だ っ て !
貪食の重力操作なら確かに一時的な足止めはできるかもだけど、
下手に長時間変身してたら精神汚染進行しちゃうじゃん!
そしたら建物とかが食べ物に見えて来たりとか色々ヤバいじゃん!
あのバカ倒せても結果的に君が街を破壊しちゃったら本末転倒だよ!?」
「然し、であればどうしろと……!?」
そんな状況下なもんだから、
あたし達もまあ混沌とした状態で……
(こりゃ早々に万策尽きたか。
暴走したダイちゃんをどうやって止めるかにシフトしなきゃダメかもわからんね……)
なんて具合に、
あたしはほぼ最悪レベルの妥協を強いられかけていた。
けど世の中、
得てして『十割絶望だけの状況』なんてのは然程ないモンで……
奇跡的な『救いの手』は、予想外の方向から齎されたんだ。
「ちっ、もうあんなに……! 出遅れちまったな……!」
「しょうがないよっ、私達だって大変だったんだし。
ともかく早くあれを止めないとっ」
「おう、そうだなっ。頼むぜ、"フミちゃん"!」
「うん、行こう"ハヤちゃんっ"!」
刻一刻、壊滅の時が迫る繁華街……
その片隅で人知れず、二人の冒険者は光に包まれ一つになる。
『神力励起……!』
『俺に宿り機動しろ、紅蓮闘将!』
赤と青、二色の光は加速度的にその強さを増していき、やがて激しく爆散。
『ッシャアアアアアアッ!』
光の奔流の中から勢いよく飛び出したのは、
身長凡そ百メートル前後、
丁度怪獣媚累禍と似たサイズ感の巨人だった。
『セアアッ!』
颯爽と都市に降り立つその姿は言うなれば
黒い作務衣の上から銀色のプロテクターを纏った細マッチョの赤鬼って感じ。
『ヴォッラアアッ!』
東方系の古風な意匠がありつつも
全体的にはメカっぽくスタイリッシュなプロテクターのデザインとか、
自然物とも人工物ともつかない独特な顔立ちなんか、
老若男女を問わず幅広く魅了するような、
神秘的でヒロイックな独自路線のカッコ良さを醸し出している。
或いはそれこそ、
ダイちゃんや妖魔戦隊の面々なんかとは別ベクトルの
"特撮で主役張れそうな"ビジュアルと言えた。
(ま、結局はダイちゃんの変身が一番イケてると思うけどね~)
とは言えこの場で頼るべきは間違いなく鬼巨人だろうってコトで……
一先ずは奴がしっかり怪獣媚累禍を倒してくれると信じながら、
イザって時にはすぐにでも出向けるよう臨戦態勢で策を練っておくのを忘れない。
「取り敢えず信じて大丈夫だよね、あの鬼?」
「ええ、まあ……
というか、この場では実質彼に頼らざるを得ませんがね」
「……それもそっか」
さて、それで実際の所鬼巨人の戦いぶりはどうなのかというと……
【あぁん!? 何よアンタいきなり出て来てっ!
ひとが気持ちよく正義遂行しようって時に邪魔立てとか、
ホント配慮の欠片もないわねっ!
いいわ、その短絡的な行動がどういう結果を齎すか思い知らせてやろうじゃない!
喰らいなさい、ポリコレコンサルバスター!】
怒り狂った怪獣媚累禍は、肩や背中を部分的に変化させ
鬼巨人目掛けてミサイルっぽい物体を幾つも放つ。
技名に対するツッコミは兎も角として、
ミサイル風飛翔体は数が多い上に一つ一つがそこそこデカいので、
直撃すれば幾ら巨人鬼だってタダじゃ済みそうもない
『シャアッ! ダアッ! ウラァァッ!』
……かと思いきや、巨人鬼はプロテクター腕部分からの光弾で飛翔体を次々撃ち落としていく。
「飛び道具も完備とはやるねぇ、あの鬼」
「しかも汎用性がやけに高いですからなァ。一体何者なのやら……」
あたかもシューティングゲームめいたその動きには無駄がなく、
程なくミサイル風飛翔体が打ち止めになると、巨人鬼は怪獣媚累禍本体に狙いを定める。
『ウラァアアッ!』
【がっ!?】
『ドェアアッ!』
【ぎゃっ!?】
『ディェエラッ!』
【ぐひーっ!?】
巨人鬼の強烈な徒手空拳――とは言えプロテクターがあるから実質鈍器攻撃と言って差し支えない――を前に、怪獣媚累禍は為す術もなくボコられていく。
まさに一方的な試合……
これが例えばテレビ放送されてる特撮作品で、
特に何も悪さをしてない通りすがりの怪獣を謎の巨人が意味もなくシバき回してるだけだったとしたら、
そりゃ怪獣側へ同情せずに居られなかっただろう。
けど実際目の前でボコられてるのは、町を襲い市井の平和を脅かすっていう明確な罪を、しかも悪意のもと故意に犯した紛れもない悪党だ。
よって同情してやる道理も当然ない。
『ッヘイアアアアッ!』
【ごぎゃああああっ!?】
一方的な蹂躙が続くこと暫し、
巨人鬼渾身の蹴りが怪獣媚累禍の腹へ直撃。
その勢いは見るからに重量級の巨体を軽く吹き飛ばし仰向けに転倒させる程で……
【ぐぁっ……こん、な、ハズじゃっ……!】
『ェオシッ! ハアアアッ……!』
倒れたまま起き上がれない怪獣媚累禍にトドメを刺すべく、巨人鬼は手元に光を収束させていく。
『――デラアッ!』
収束した光が晴れると同時、巨人鬼の手元には和風の装飾と機械的なパーツのついた槍が形成される。
持ち主との対比から察するに、長さは身の丈を少し上回るほど、太さは上腕より一回り細いくらいで、刃渡りは多分脛より少し短めの……
とにかく巨人鬼の体格と風貌にはこれ以上ないくらいピッタリの武器だった。
『ハァァーッ……ェァァーッ……!』
【なっ、何っ!? 何よあんたっ!
ち、ちち、近寄ってんじゃないわよっ!】
槍を手にした巨人鬼は、
腹を決めたかのようにゆっくりと、
倒れ伏す怪獣媚累禍に歩み寄り……
【あ、あんたっ! 私を誰だと思ってんのっ!?
私はね、泣く子も黙る天下の――
『ヴオルラアアアアアッ!』
【ほぎゃああああ!?】
その胴体……多分心臓がありそうな位置を、容赦なく槍で刺し貫いたんだ。
【グウウウエエアアアアアアア!
アッガギャアアアアアアッ!?
グゴゲエエエエエオオオオオオッ!】
「おおぅ……当然と言えば当然ですが、凄まじい苦しみぶりに御座いますなァ」
「まーねぇ、ああいうのはほんとマジで痛いからね……。
あたしも少なからず経験あるけど、できるなら二度と経験したかないね……」
「……そんなにですか」
そんなにだよ。相手の殺意まで神経に響いてくるからね……。
【アアアッグアアアアアア!?
ウウウウッガギギゲガゲゴオオオオオッ!
ブヴェアアアアアアッ!?】
『ヴァルルルラアアアアアッ!』
【グギョエエアアアアアッ!
アギャガアアアアッッ!?
グゲギャゲギャガガガアアアッ!】
巨人鬼の攻撃はその一発で終わらなかった。
街を荒らされてよっぽど腹が立ってたのか、
それとも元々そういう性格なのかは分からないけど、
ともかく彼は怪獣媚累禍の全身至る所を何度も何度も槍で刺し貫いていき……
『ジイイイイイッ!』
【アヴァアアアアアアアッ!?】
『ネエエエエエエイッ!』
【サヨナラァアアアアッ!】
最後には串刺しにして放り投げた所へ強烈な振り下ろしが炸裂する。
結果、脳天から正中線を唐竹割にされる形になった巨大怪獣は、
悲鳴とも別れの挨拶ともつかない金切声を挙げながら空中で爆発四散……
そのまま肉片一つ残さずに消滅した。
まあ勿論、
単に悪禍実が死滅して媚累禍としての姿を保てなくなっただけで、
素体になったあの中年女は衰弱しこそすれしっかり生きてたんだけどね。
『……ッシャアッ!』
「やー、終わったねぇ。あたし達の介入無しで無事に」
「ええ、無事終わりましたなァ。
部外者が割り込む余地のない、完璧な戦いぶりでしたな……」
その後、戦いを終えた巨人鬼は"もう一仕事"終えてから何処かへ飛び去っていき、街には平和が戻ったのさ。
……彼が飛び去る前にした"一仕事"が何なのかについては、話すと長くなるからまた別の機会にでも。
「さぁてダイちゃん、なんとか街にも平和が戻ったワケだし……!」
「ええ、参りましょうぞ。我らが螢都観光、夜の聖戦へと……!」
てなワケで後片付けを済ませたあたし達は、足早にその場を後にした。
さあて、こっからが本番だよっ……♥
次回はまだ未定です。すみません。




