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第百二十話「妖〜魔、戦隊〜♪ ヘ・ン・ゲ・ン・ジャ〜♪ ヘンゲンジャ〜♪ ……サブタイで何歌ってんだろう、あたし」

いざデート開始!

かと思ったら……

「ぎゃあああああ! 化け物おおおおお!」

「助けてくれーっ! 殺されるーっ!」

「なんなんだよっ!? どう言うことだよぉぉぉ!?」

「ウエエエエアアアア!

 ママァァァァ! パパァァァァ!」


【ふっざけんじゃないわよぉぉぉ!

 折角異世界に来てここから本気出せると思ってたのに

 どいつもこいつも私の崇高な思想を否定してっ!

 もう頭来たっ! 全部ブチ壊してやるわぁぁぁ!】


 時刻は街も賑わう夕暮れ時。

 螢都のとある繁華街は突如現れた媚累禍ビルカによってちょっとした地獄と化していた。

 見た感じロン毛で痩せ型の中年女が変化したらしいそいつは、

 金のないバカが作ったクソつまんない映画の敵役みたいなビジュアルで、

 電撃や火球を放ち街を破壊していく。


「……やれやれ、参ったね。

 まさかこのタイミングで媚累禍と遭遇するなんて……」

「仕方ありますまい。

 多少手間とは言え協力すると誓った以上、

 撃退せねばなりますまいて」


 そんな場面に運悪く遭遇してしまったあたし達は、

 一先ず奴をぶちのめすべく、一旦物陰に隠れて態勢を整える。


【さぁ、私のスウィート・ベィベェーたち!

 この悪がまかり通る世界を目覚めさせてやりなさい!】

【【【【【ウォォォォォク!】】】】】


 対する媚累禍は戦力増強の為だろう、

 大量の戦闘員っぽい奴ら(使い魔? 眷属?)を生み出した。

 揃って主に負けず劣らずの残念な見た目だけど、

 その割に能力や装備はそれなりなようで、

 ほっとくと何をしでかすかわかったもんじゃない。

 っていうか……


「…… め ん ど く さ 〜 っ !

 ンモー、ただでさえ媚累禍の解析って手間かかるのに、

 そんな数増えたら対応しきれないじゃん!?」

「いっそ全員の動きを止めますか」

[SIN'S DRIVER!!]


 言うが早いか、ダイちゃんはシンズドライバーを起動しにかかる。

 口ぶりからすると冷気を操る怠惰か、重力を扱う貪婪に変身するつもりなんだろう。

 ただどっちに変身するかは決めかねているようで、

 ここは状況を分析して的確なアドバイスをするのが年上彼女の務めかな〜

 なんて思っていると……


【全く、どこもかしこも配慮の無さに吐き気がするわね……。

 さて、じゃあまずは

 どこからぶっ壊してやろうかしら――

「そうはさせるかァ」

【はぁん? 何よいきなr――ギャスッケェ!?】

【コンッ!?】【コドッ!?】

【ブラッ!?】【トバッ!】

【【ストワッ!?】】

【【【ウィーッシュ!?】】】


 刹那、媚累禍と戦闘員たちに死角からの攻撃が炸裂。

 奴らは変な悲鳴を上げながら面白いように吹き飛んでいく……まるでギャグみたいに。


【ぐっ、このっ……!

 ちょっと、誰よ!?

 いきなり死角から攻撃してくるなんて

 卑怯だと思わないの!?

 姿を見せなさい姿をっ!】

「非武装の民間人を襲う方がよっぽど卑怯だろ」


 怒り狂う媚累禍へ正論を返しつつ颯爽と現れたのは、

 やけに個性的でカラフルな男女が十一人ばかり。

 パッと見じゃ断言できないけど、多分それぞれ種族は違う。


「ようオバハン。しょーもない真似やってんな」

「ひょっとして、暇?」

「いい年した大人が何やってんだか」

「いやァ~、年齢とか関係なくゥ~

 人としてどうかと思いますよこれ私ィ~」

【う、五月蠅いわね! 私は今重大な使命の真っ最中なのよ!?

 てかあんたらッ……どいつもこいつも美形ばっかりだし肌も白いし!

 配慮ってものを知らないの!?

 非常識ったらないわ! 腹立たしい! 恥を知りなさい!】

「なんか意味不明なキレ方してて草ッ」

「やべーなこのBBA(ババア)

「これが更年期ってヤツぅ?」


 対面から暫くの間、媚累禍と他愛もない(?)言い争いを繰り広げた男女十人組。

 唐突過ぎて今一よくわからなかったけど、

 察するに彼らはどうやらこの辺りで活動する自警団のメンバーらしく、

 市街地を荒らす媚累禍を排除しに馳せ参じたのだそう。


「そんなワケだ、容赦しねーぜ化け物ババア」

【ハッ! 口ばかり達者な見掛け倒しどもが言うじゃないの!

 真なる正義と公平に"目覚めた"私たちの前に平伏すがいいわ!

 行きなさい我がスウィィィット・ベイベェェェたちっ!

 思い知らせてやるのよ!】

【【【【【【ウォオオオオオオック!】】】】】】


「ふーん、言うじゃん。

 よしみんな、速攻でカタをつけるぞ」

「おっけー」

「任せな」

「しょーがないなぁ」

「はいな~」

「行くよ~」

「「「了解っ」」」

「さぁて、暴れるかい」

「そうね、暴れましょう」


 媚累禍と戦闘員軍団の群れを前に臨戦態勢の十一人は、

 虚空なり懐なりから何やらメカメカしい小道具を取り出しては各々独自に構えて叫ぶ。


「「「「「「アヤカシチェンジ!」」」」」」

[[[[[[ア・ヤ・カ・シッ! ヘンッ・ゲェェェ〜ッ!]]]]]]

「「「風刃化断フウジンカダン!」」」

[殴打!][切斬(セツザン)!][薬塗(ヤクト)!]

[[旋風三悪吹抜集結センンプウサンアクフキヌケシュウケツ!]]]

「「開演」」

[[オンッ・ステェェーィジ!]]


 そのまま小道具を起動、十一人は"変身"する。


(へぇ……なるほどね。面白い奴らが居るじゃないか)


 光やオーラなんかを身に纏っての"変身"を見たあたしは、

 思わず奴らへ鉄火場でのダイちゃんを重ねずに居られなかった。


 そして各々"いかにもヒーローっぽい姿"に変身し終えた奴らは、

 実際芝居がかってヒロイックな素振りで"名乗る"。


「燃え盛る好奇心……

 響かせる探究心……

 アペヤキ・レッド……!」


甘酸辛苦かんさんしんくは調理してっ、

 みんな美味しくイタダキマスッ!

 フタクチオンナ・イエロー!」


「この声を聞け、響くままに。

 この想いよ届け、風に乗せて。

 そう僕こそが、カラステング・ブルー……」


「どんだんず~

 ワの名メはメドツピンク……

 って、いっけねェ~

 つい地元のことば出ちまっだ~

 ま、いっか~。

 とりあえず~オメはマイねぇ。

 こごで倒すはんデェ、そのヅもりでいろォ~?」


「集いしは願い! 奏でるは未来!

 フルコトヌシグリーン!」


「栄光目指して道切り拓く。

 私こそはそう、アミキリネイビー」


「打ち付ける突風、スマッシュブラック」

「切り刻む疾風、スラッシュホワイト」

「惑わす旋風、オイントメントヴァイオレット」

「「「カマイタチトリニティ、推して参る」」」


「紳士淑女の皆様方、毎度お世話になっております。アカエイテイマーです」

「GOOD MORNING, EVERYONE ÷ω. どうも、カシャアクターです」


「種も郷も」

「「違えど集いし」」

「「十一の」」

「「「我らこそ」」」

「「貴様らひとやへ 送る者」」

「とくと知り しかと覚えよ 我らが名。

 いざ言うぞ 耳目と心で聞き取れよ……」

「「「「「「「「「「「我ら、魔にして義に生きる者!

 ひと呼んで、妖魔戦隊ヘンゲンジャー!!!」」」」」」」」」」」

「神に連なる八百万の力、その身で思い知るがいい!」


 変化球とも王道ともつかない彼ら十一人の名乗りは、

 謎のアツさを感じさせて無駄にカッコよく、

 年甲斐もなく声を張り上げて応援したくなるような熱気に溢れていた。

 よって、あたしは結論を出す。


「いやはや、面白いことになってんねぇ~。

 どうよダイちゃん、この場は一旦奴らに任せてみない?」

「ほう、それはまた奇遇な……。

 実は自分めも似た提案をさせて頂こうと思うておりましてな。

 あの程度の媚累禍ならば、いざという時は我々が介入すればどうにでもできましょうし、

 一先ず彼ら妖魔戦隊とやらの活躍を見守るのが安牌であろうなと」

「おっけー、決まりだね。

 隠れてるのも地味にキツいし、どうせなら魔術でガチの擬態でもしちゃおっか〜」

「お願いします。では自分は被害に遭われていない近場のコンビニエンスストアかスーパーマーケット辺りで飲食物でも買って来ますかね」

「お、いいね〜。あたしも頃合い見てどっか行こっかな〜」


 てな具合に身を隠したあたし達は、

 ヘンゲンジャー対媚累禍軍団の試合を肴にちょっとした宴会と洒落込んだのさ。



まぁ、これもな……デートっちゃデートだわな……


次回、新戦士登場で戦況は予想外の方向に!?

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