第百十七話「どういうこと!? 冗談抜きで本当に、どういうことなのこれ!?」
さあ、いざジョウセツと謁見!
……できたのは間違いないんだけど、なんっじゃこりゃぁぁぁぁああ!?
パルティータ「うん、作者が前書きで書いていい内容じゃないよねぇ~」
読者のみんな、御機嫌よう。
前回に引き続き今回もこのあたし、便利屋魔女のパルティータ・ピローペインが
主懇山は萃晢魄壌街に建つ宝玉燭曙陽狐宮からお送りするよ~。
さて、前回ラストでいよいよ念願叶って
第八天瑞獣"陽光のジョウセツ"との謁見にまで漕ぎ付けたあたし達は、
予想外の出来事に内心困惑せずに居られなかった。
『いやっはやぁ~、お客様方ぁ♪
遠路遥々ようこそ参られまして、どうもどうもっ☆彡
小生、生まれも育ちもここ主懇山☆彡
種は炎熱の霊玉獣、名はジョウセツ……
ひと呼んで"陽光のジョウセツ"と申しますればっ♪
不肖乍ら誉れ高き天瑞獣の八番手に名を連ねさせて頂きまして、
畏れ多くも「白煌聖獣」などと分不相応な二つ名まで賜り幾星霜♪
ここで知り合いましたも何かの縁なれば、
何卒宜しゅうお願い申し上げまするっ☆彡』
「ご丁寧に有難うございます。
ビットランスで便利屋やってます、魔術師のパルティータ・ピローペインです。
どうぞよしなに」
「ギルド『丸致場亜主』所属、
冒険者の財王龍と申します。
以後お見知り置きを」
といって別に、第八天瑞獣様の
やたら長くてクセの強い名乗り口上に困惑してた、なんてことはなく……
(……これが、第八天瑞獣?)
(事前情報との乖離が著しい……!)
あたし達二人を戸惑わせたのは、もっと表面的な……
っていうかぶっちゃけ、彼女様の形態で……
『仔細は我が親愛なる忠臣ゲンジョウより伺っておりましてなっ♪
悪禍実・媚累禍討伐へのご協力には心より感謝申し上げたくっ☆彡』
「いえ、どうぞお気に為さらず」
「そうそう、あたし達も元々興味本位で手ぇ出してただけですし~」
どんな感じか具体的に言うと『狐の耳と尻尾が生えたタケノコ』の一言に尽きる。
いやまあ、耳と尻尾が陽光とも炎ともつかないオーラを纏ってて無駄に神秘的で神々しいとか、
底面から菜箸みたいな細長い足が二本生えてて結構機敏に動けるとか、
高さ三十数センチ、幅十数センチとタケノコとしてはかなり大ぶりだとか、
他にも色々特徴はあるんだけど……と
もかく『狐の耳と尻尾が生えたタケノコ』としか言いようのない姿なのは間違いない。
……念のため断りを入れておくけど、
ジョウセツ様は本来『炎を纏うサラブレッド大の狐』であって、
断じてこんなギャグみたいな姿じゃない。
(……深手を負っているとは聞いていたが、それにしてもなんだこの姿は……)
(……ひょっとしてあたし達、幻術か何かでも喰らってるとかそういう感じ?)
あたし達は内心、揃って頭を抱えた。
確かに『一度の問いを躊躇う者は、時に一生を棒に振りかねない』なんて格言もあるし
この問題をここで放置しておいちゃいけないんだろうな、とは当然思う。
けど相手は天瑞獣……
神々程じゃないにせよ、それでも圧倒的に目上の存在だ。
魂絆証の交渉もしなきゃいけない関係上、
波風を立てるような真似なんてしないに越したことはない。
よって『第八天瑞獣、ビジュアルが明らかにおかしい問題』は
未解決のまま割り切るしかないと、そう諦観していたんだけど……。
『つーかジョウセツ、お前よぉ~。
礼だの謝罪だのサービス案内だのと、
恩人へ丁寧な対応すンのは大変結構なこったがよぉ~
なんか重要な説明を忘れてンじゃねえのかぁ?』
あたし達の困惑を察知したらしいゲンジョウ女史が、助け船を出してくれた。
『んん~、何を言うとるかねゲンジョウ。
小生は此方のお二人に大恩と負い目のある身、
恩を返し罪を償う以上に重要な事柄などありはすまい?』
『 大 い に あ る だ ろ っ 。
お前自身についての、極めて重要な事柄がっっ!』
『(゜々。)?』
ゲンジョウ女史の怒号も何のその……あたかも煽るように首(全身?)を傾げたジョウセツ様。
その前面には、まさに上述したような顔文字っぽい謎の図形が浮かんでいた。
意図は何となく察しがつくけど、果たしてどういう原理なんだろうと疑問に思っていると……
『変化術で変な顔を形成すんじゃねーっ! 煽ってんのかお前ぇ!?』
どうやらあれは変化術――察するに変身魔術みたいなものだろうか――の応用らしい。
『おお、すまんな。他意はないのだ。
ただ、今のこの姿は余りにも表情に乏しい故、
心底困惑している旨を如何にしてか伝えねばと思い立ってな』
『だったらフツーに首傾げてるフリだけしとけよ! それだけで察するよ私はっ!
先代から受け継いで以後何年お前の部下やらせて貰ってると思ってんだよ!?
寧ろその程度も察せねーで天瑞獣の部下が務まるわきゃねーだろっ!』
その時のゲンジョウ女史ときたら、
元々の黒い大狐ってビジュアルも相俟って迫力満点……
何ならいっそおっかないくらいだった
――未就学児が間近で見たら泣き出すくらいには――
『お、おおぅ……そういうものであろうかなぁ。
すまんな。小生の杞憂であったか』
『おおそうとも、杞憂だともよ。お前もっと部下を信頼しろよ全くよ~』
『んー、すまぬすまぬ。非常時につき無理はさせられんとの想いが拗れておったわ。
……してゲンジョウよ、問うてよいかな?』
『おう、なんだジョウセツ。何だろうと問えよ』
『ん、ではお言葉に甘えさせて貰うが……
貴君の言う「小生自身に纏わる極めて重要な事柄」とは、一体?』
『だわぁぁぁぁぁっ!』
あんまりにもあんまり過ぎるジョウセツ様からの問いかけに、
ゲンジョウ女史はギャグアニメか喜劇のキャラよろしく盛大にずっこける。
『お前っ……お前なあっっ……っく、しょーがねぇ……』
けれどそこは流石長年連れ添った忠臣とでも言おうか、
彼女はすぐに持ち直しあくまで冷静に対応する。
『ジョウセツ"様"よぉ~?
お前ェさん、そこなお二方への詫びたりすンのは結構だがなァ……
それより何より前に、お前のその容姿について
当人自ら説明すんのが筋なんじゃねーか?』
『∠(゜Д゜)/!』
『だから変化術無駄遣いしなくていいつってんだろ!
いいからさっさと説明するんだよ早くしろよオラァ!』
『う、うむ。わかった。
わかったから爪を引っ込めてくれ。
座布団が破れ、畳も傷付いてしまうでなっ』
『……あ、悪い。ついアツくなっちまってたわ』
手が出るのを堪えて力んだせいだろう、
ゲンジョウ女史の鋭く巨大な爪は
分厚く巨大な座布団どころか畳まで貫通してしまっていた。
(;州=_=)<さて、それで結局第八天瑞獣タケノコ化事件の真相はというと……
次回、ジョウセツを苛む災厄の正体が明らかに!
てかこんな状況で魂絆証云々の交渉上手く行くのか!?
大竜「……矢張り、作者が後書きで書くべき内容ではないな……」




