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第百十五話「言うなれば三竦みの構図。非武装の政治家は猛獣に食われ、飛び道具のない猛獣は軍人に撃ち殺され、市民に過ぎない軍人は……」

お 待 た せ 。


誘拐犯コンビとの激闘、いよいよ決着!

そして第八天瑞獣ジョウセツを追う旅に目に見えた進展が!?

 

 読者のみんな、御機嫌よう。

 例によって便利屋魔女のパルティータ・ピローペインだよ~。

 いつも本作を読んでくれてありがとう。

 とりあえず近頃は常日頃からヤバめな作者がいつにも増してヤバくなりつつあるから、

 そろそろ感想とかレビューとかよろしくね~。

 じゃないと、作者が何やらかすかわかんないからね~。


 さて、それじゃ挨拶もそこそこに本編行ってみようか。

 


『この大馬鹿モンどもがぁ……

 お前ら、自分が何やったかわかってんのかぁぁ!?』

「ひっっ……!」

「そ、それはっっ……!」


 舞台は例によって黒縄岳こくじょうだけの一角。

 ついさっきまでそこそこの激闘が繰り広げられてたにも関わらず、その空気感は一変していた。

 例えるなら『やらかしのバレたバカ学生が教師に説教喰らってる』ような感じ……

 っていうかまぁ、空気感とか通り越して

 『まさにそんな感じのシチュエーション』だったワケなんだけど。


『ンだぁ? 言いてえコトがあんのかぁ?

 だったらハッキリ言ってみろよ。聞くだけ聞いといてやるし

 お前らに情状酌量の余地があンなら許してやらんでもねぇからよ』


 冷静に淡々と、けれど紛れもなく威圧的な態度を崩さない……

 いわゆる"説教をする教師"な立場にあるのは、

 中型肉食恐竜ほどのサイズで全身真っ黒なキツネっぽい怪物。

 ハスキー気味な女声で結構饒舌に喋ってるのに加え、

 膨大な魔力を宿すわ、超自然的な大物特有の雰囲気を纏ってるわと只者じゃなさそうだ。


「――……っっ! だ、だったら言わせて貰いますけどねぇ!

 オレらのコレはッ、

 あくまで螢都の街を得体の知れねえ怪物と、

 わけわかんねー余所者の脅威から守る為の行動なんですよッ!」

「そ、そーっスよッ!

 私らは"懐刀"としテの役割を果たしたダケじゃないデスかッ!」


 止せばいいのに口答えするのは、

 ついさっきまであたし達とバチバチにやり合ってた誘拐犯コンビ。

 もとい、力天使の八剱カナタと、()()()クム="V.C.D."・ケイソンズの二人。

 ……詳しくは追々説明するけど、ケイソンズの巨竜としての姿はどうやら変身だったらしい。


「呉空の妹を攫ったのだって、

  呉空家ヤツらが余所者と絡んでるって証言の真偽を確かめる為っ!

 下手すりゃ呉空家が怪物と裏で繋がってる可能性さえゼロじゃねーなら、

 褒められこそすれ叱られる謂れなんて――


『 や か ま し い わ ァ ッ ! 』


「「ヒィン!?」」


 水を得た魚が如く反撃を試みた八剱だったけど、巨大黒狐の怒声がそれを許さない。

 熱波か突風で水が吹き飛んで、泳いでた魚が一気に陸へ跳ね回るような……

 二人の態度は大体そんな感じだった。


『なんだぁお前らっ、ちいとばかし期待して耳傾けてやりゃ、

 調子こいてバカみてえな妄言ばかりべらべらとっ……

 「街を守る」ぅ? 「"懐刀"としての役割」ぃ?

 そういう気取ったセリフはなぁ〜、

 定期考査で赤点幾つも取るようなバカが言っちゃなんねェだろーがっ!』

「ひいいっ!」

「ぬんぐううっ……!」


 快晴の岩山で赤裸々に暴露されたのは、どうにも情けなさ過ぎる二人の汚点……


「……やー、カッコ悪いったらないねぇ〜。

 見なよダイちゃん、あんだけ大物ぶってたのがウソみたいに縮こまっちゃってさぁ〜。

 ああいうのをエニカヴァー(こっち)だと

 『日差しを浴びた氷柱』とか『汚水の中のプラナリア』とかって言うんだけどさ」

「ホホゥ、それはまた興味深い……。

 地球こちらで言うところの『青菜に塩』『丘に上がった河童』に相当する諺ですなァ」


 そんな奴らの醜態を見物しつつ、あたし達は出前で取り寄せた飯をつつく。

 色々無茶な注文をしたせいで料金はやけに高くなったけど、

 金を出すのはあたし達じゃないから特に気に留めるようなことでもない。


『ともかくっ、此度のお前らのやらかしは明らかな規約違反に他ならねぇ!

 謹慎なり罰金なり何かしらの罰は確実に下してやっからそう思えぇっ!』

「そんなぁっ!? この程度で処罰なんてあんまりにもあんまりじゃないですかっ!」

「ドっ、ドーカッ! ドーカ何トゾそれだけはご勘弁をッ!」

『じゃーっかあしぁぁぁーいっ!

 こちとら前々からお前らの実家に学校、

 教委から政府省庁にまでつつかれまくってて下のモンが限界来てんだよっ!

 ただでさえウチの"()()()()()"の件で色々めんどくせぇ状況になってんのに、この上お前らを甘やかしたとなってみろっ!

 国内どころか国外からの評判にもかかわるし、

 ひいては蛍都の経済にも大打撃となりかねねーんだぞっ!?

 何十何百じゃ済まねえ数の人間が金に困り路頭に迷ったとして、

 お前ら如きたかが女子高生如きの分際にその辺責任取れるっつーのかっ!?』


 巨大黒狐の説教は、その後延々と一時間半も続いた。



 (;州ー_ー)<てかそもそも"あの前回ラスト"からなんだってこんなことになったのかって話だけど……凡その経緯は大体↓みたいな感じだった。



「があああっ!?」

『ヘッ! ヨーヤット片腕飛んだかヨッ!

 反撃もせずイートコまで踏ん張った割ニャア情けネーナッ!

 全く滑稽オワライだゼッ! そのまま達磨ンなっチメェーッ!』


 時は遡り二十分ほど前、巨大黒狐の介入で戦闘が強制終了する以前。

 日差しの照り付ける黒縄岳の岩地で、

 あたしはとうとうケイソンズの操る熱線光球に右肘から先を焼き切られてしまった。


ううあああっ! メぇッっチャいでェェェェッ!)


 筋線維も骨も関係なく断ち切る灼熱の光線は

 血や魔力の流れを止め傷口周辺の細胞さえ死滅させるほど強烈で、

 不可殺者アンキラブル十八番(おはこ)の急速再生にも若干の手間がかかってしまう。


(けどっ……だから、こそ……この状況こそが、好都合っっっ!)


 強烈な痛みに耐えながら、あたしは思考と魔力を巡らせる。

 隙なく迫り来る熱線を掻い潜りながら

  ――そんな様子を嬉々として観察するケイソンズに感付かれないよう――

 術式を組み上げ、所謂"心の声"とか"脳内再生"の要領で唱える。


(――"強化効果付与・遠隔リモート・バフ・エンチャント"-"対戦車砲弾変成トランスミュート・ロケットボム-自動追尾ホーミング"!)


 瞬間、切り落とされた右腕は白銀のロケット弾に姿を変える。


「―― 吹 っ 飛 び な 」


 口から漏れ出す、微かな呟き。

 小声だけど、確かな敵意と殺意が籠もってる。


 白銀の弾頭が、尻から火を噴き突き進む。

 切り落とされた右腕が変じたそれは、標的ケイソンズ目掛けて飛んでいき……


『ぐごわあああっ!?』


 イキり散らかすメストカゲのスカしたバカヅラに直撃して、炸裂。

 目立った外傷こそないものの、派手に吹き飛ばし転倒させた。


『ぐ、ゥゴぉぉぉっ……!』


 気絶にこそ至らない迄も、決して軽視できない脳への衝撃に、魔術"搦殺熱線領域デストラップビーム・キルゾーン"は強制解除……

 宙に浮かぶ光球の群れは、発動者の気絶と共に熱線共々消滅した。


「――ふッ」


 華麗に(?)着地したあたしは、身体の再生・修復に注力しつつ策を練る。

 けれども……


「うおおおあっらああああああ!

 必殺スローンズ・ヌンチャ――ぐオ゛うッ!? っあばっ!?」


 時を同じくして、ダイちゃんと交戦中の八剱がヌンチャクの扱いをミスって股間と頭を立て続けに強打。

 自滅する形で間抜け面のまま再起不能に追い込まれた。

 ……どうやら流石の力天使も、弱点に大ダメージを喰らうとヤバいらしい

 (よく誤解されるけど、女の股座にも神経が集中してて強打するとクソ痛いんだよ……)。



「いや~、なんとか終わったねぇ」

『ええ、全くで……』

[GOOD JOB.THAT'S A FEAT.]

「素人と思わせてその実無駄に有能なもので、予想外に手古摺りましたなァ」


 戦いを終えたダイちゃんが変身を解除するのと同時、

 気絶したまま仰向けに倒れていたケイソンズの様子がおかしいのに気付く。


(なんだろう……)


 距離を取りつつ注視してみれば、途端にヤツの全身が不自然に波打ち溶け始め……

 程なく橙色の巨竜は跡形もなく消え去り、

 入れ替わるように背と乳がやたらとでかい竜人(ドラゴニュート)の女が姿を現した。

 つまり……


(なるほど、変身してたのか……)


 察するにあの竜人こそケイソンズの正体で、

 多分魔術でドラゴンに姿を変えてたとかそんな感じなんだろう。


(どうりでやけに魔術ばっかり使ってくるわけだわ。

 ま、こいつらがどんな存在だろうと関係ないけども。

 とりあえず叩き起こしてスバルちゃんの居場所を吐かせないと……)


 ってことで気絶した八剱とケイソンズを叩き起こそうとした、その時……


『待ちなご両人。そのバカどもの処分は私に任せて貰おうか』


 ふらりと現れ語り掛けて来たのは、件の黒い大狐。

 怪物じみた見た目に知覚種族ぽい挙動、かつ間違いなく只者ならざる雰囲気のそいつに、

 あたし達は思わず身構えるけど……


『……止してくんな。お二方へは戦意も敵意もねぇ。

 ただそこでノビてるバカ二匹は当方の身内でな、始末をつけに来たってだけだ』


 当の大狐自身はこう言ってきた。

 勿論、その一言だけでこいつを信用するわけにもいかないので

 ――下手に刺激しないよう注意を払いながら――探りを入れていく。


「……本当ですかぁ~? 大変失礼ですけど、まさか騙し討ちとか考えておいでじゃないですよねぇ?」

『ああ、本当だとも。嘘を吐く理由も騙す動機もねぇ。

 何だったらそちらには力の限り詫びなきゃならんって認識してるぐれぇだ』

「……"詫び"とは、具体的にどのような?」

『どのようにでも、だ。

 そちらがご所望される内、当方で実現可能と在らばどんな要求でも聞き入れよう。

 因みに言っとくと、呉空んとこの娘っ子については心配いらねえぞ。

 私が命令してしっかり親もとへ帰したからなァ』


 思い掛けない幸運だった。

 まさに『釣った鯰が銭を吐く』ような……

 当然大狐の提案に乗ったあたし達は

 『第八天瑞獣ジョウセツ、若しくは彼女の関係者に取り次いで欲しい』と頼み込む。

 さて、大狐からの返答は……


『……なんだ、そんなもんでいいのか?

 なら簡単だ。あのバカどもの始末つけたらすぐにでも彼女に取り次ごう。

 結構弱っちゃいるが、会って話す分には問題ねえしな』


 大狐の口ぶりは、あたかもジョウセツとかなり親しい間柄にあるかのようだった。

 けどそれもそのハズ、この大狐の正体ってのは……


『そういえば、自己紹介がまだだったな。

 名乗らせて頂こう、ご両人。

 私はゲンジョウ。先祖代々第八天瑞獣(ジョウセツ)に仕える一族の六代目をやってるモンだ』


 あたし達の予想を遥かに上回る、超がつくほどの大物だったんだ。


で、この後……


ゲンジョウ、詫び足りないからと他に要望があるかと二人に聞く

二人、腹が減ったので飯を要求

その場で食う二人。

一方ゲンジョウは八剱とケイソンズを叩き起こして説教

↑これが冒頭までの話

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