第百十四話「どうやら奴ら"それなりにデキる"タイプっぽいけど、当然それだけでどうにかなるあたし達じゃない」
誘拐犯コンビとの激闘はまだまだ続く!
読者のみんな、御機嫌よう。
近頃は感想無さ過ぎて腐った作者が
『小説家になろう』の質問版で八つ当たりの如く質問繰り返してるけど、
とりあえず『つい☆ブイ!』の連載を打ち切ったりとか
筆を折ったりとか自殺したりとかの予定はないみたいだから安心して欲しい。
「うおぁぁっらぁぁぁァッ! ジャスティスボムフィストぉぉっ!」
『甘いわアッ!』
「ぬおわっ、拳に蜘蛛の巣がっ!? しかもクソ硬ぇこれっ!
ええいめんどくせぇ! 一か八かこのまま投げ飛ばして――」
『そィイヤァっ!』
「うわ、なあっ――ぐぼべっ!?」
舞台は岩山"黒縄岳"頂上近辺の一角。
壮絶な戦の開始点と化したそこで怒れる女学生天使の八剱カナタを相手取るのは、
我が愛しの彼氏にして本作主人公……
冒険者の財王龍こと我らが七都巳大竜に他ならない。
「ぐっうう、がぁぁっ……!」
『威力良し、精度好し、速度善し……一介の学生とは思い難き実力っ。
なんともはや有意義"っ……!
まさしく我が果無き我欲を満たすに相応しき逸材よ……!』
「ケッ、気色悪ィ面で気色悪ィ戯言吐かしやがって余所者がぁ……!」
必殺の跳び蹴りならぬ"飛び殴り"を追見舞いしようとした八剱は、
けれどその直線的な軌道が災いしてダイちゃんの張った"蜘蛛の巣"に引っ掛かり、
そのまま抵抗空しく投げ飛ばされ岩だらけの地面に叩き付けられる。
『足りぬ足りぬ。もっと寄越せ、学ばせよ……!』
さて、"蜘蛛の巣"って単語とダイちゃんの台詞を囲う"『』"を見れば一目瞭然だけど、
八剱と戦う羽目になった彼は今シンズドライバーで怪物に変身している。
選ばれたのは『鋳固める強欲』
狐と蜘蛛、小鬼の特徴を持った黄金色の怪物だ。
『……天使系種族は希少、
比較的上位に在る力天使ともなれば猶更ァ。
なればこそこの機は断じて逃せぬ……
我が底無しの学習意欲を満たさせて貰うぞ、八剱カナタ……!』
例によって精神汚染もガッツリ発動中……
七大罪の強欲といえば概ね金銭や物品を欲しがるイメージだけど
『鋳固める強欲』に変身したダイちゃんは、
近頃の傾向だと"新しい技能"とか"貴重な経験"なんかを求めるようになる。
例えば固有能力の金属操作で普段使わないような武器を作って実戦訓練をしたり、
あんま見ないタイプの敵と積極的に戦いたがるとか、そんな感じ。
ともすれば希少種族を相手取る対戦カードだって願ったり叶ったり。
この場の誰よりも"戦いを楽しんで"いるかもしれなかった。
「クソがっ……! 見た目も台詞もマジでキショク悪ィんだよこの化け物野郎がっ!
てめーは螢都に居ちゃいけねェ生物だぁ!
この世から駆除してやるぜ、クソッタレぇ!」
『コャァ~ン……
実に安っぽい、ともすれば高貴なる出自の希少種族らしからぬ発言っ。
なれどその熱意と殺意はヒシヒシと、
全身の毛筋一本一本より伝わって来るかのよう……
中々どうして侮れん……
好かろう、ならば此方も全力で相手取らせて頂く迄……
後学の為にも、殴り殺されぬ程度にご指導・ご鞭撻の程願おうかァ!』
「だーっ! 敵相手にイチイチ変なタイミングで遜ってんじゃねーっ!
そーいうトコがキショいっつってんだっクソがぁぁぁっ!」
(州ー▽ー)<さて、一方その頃あたしはというと、当然無事では済まされず……
『手始めにそのシラガ、真っ黒ケに染め直してやンよォッ!』
「――うおっ、とぉっ!?
生憎だけどこの髪色は気に入ってるんでねぇ、
余計なお世話なんだよメストカゲ!」
ダイちゃんが八剱と交戦する最中、
あたしは必然余ったケイソンズを相手取っていた。
聊か分かり辛いけど、上記の場面であたしは奴の吐いた火炎ブレスを避けている。
その威力と来たらそりゃもうエグいの一言で、
頭髪黒焦げどころか首から上が炭になっても可笑しくないレベル。
「まぁ気持ちだけは受け取ってやらんでもないけどね!
てワケでお返しだ、しっかり焼いてきなッ!
"赤熱戦輪-連射"!」
『グぅっ!? な、何て数撃ちヤガルっ!
幾ら消費が軽ィからって限度てモンがあンだろッ!
――チイッ、
"吸熱防壁"ッ、 "-多層"ッ!』
すかさずあたしも赤熱戦輪をお見舞いするけど、
対するケイソンズは羽搏いて距離を取り、
"吸熱防壁"
――対面した対象の熱エネルギーを奪い
動きを止めて無力化する防御魔術――
でもって全部防いでしまう。
(しかもそこでわざわざ吸熱防護壁なんて使ったってことは――――
『よっシャア! イイ感じに溜まったゼェーッ!
喰らいやガレッ、
"詠唱破棄-熱量魔力変換"ッ!
からのッ、細切れになれヤァ!
"搦殺熱線領域"ッ!』
「ぎゃーっ! 寄りにもよって特に面倒臭いヤツーっ!」
あたしの悪い予感はとびきり最悪の形で的中した。
というのも、"吸熱防壁"で"赤熱戦輪"を無力化したケイソンズは、
そのまま吸い取った熱エネルギーを魔力に変換する形で
結構面倒なタイプの攻撃魔術を発動して来たんだ。
その名も"搦殺熱線領域"。
術者の敵だけを全自動で追尾して熱線で焼き切る小型の光球を
任意の数だけ生成・配置するって代物で、
狙いは正確だわ火力は高いわでとにかくバカ強いったらない。
「ふっ! ほっ! づあっっ!?」
『ホレホレホレェーッ! 逃げろ避けろ立ち止まンなッ!
上手く動かネーと熱線で焼き切られて
コマギレのサイコロステーキになっチメェぞォッ!』
(自ら手を出さず高みの見物とは、見掛けに依らず陰湿なヤツっ……!)
不可殺者なもんで熱線で焼き切られても死にはしないし、
傷だって時間経過で完治するから一応、八方塞がりの絶望的な窮地とは言い切れない。
とは言え避けたり耐えるだけの防戦一方じゃこっちから攻められず、
根本的な問題解決には至らない。
(どうにかどっかの隙を突いて攻撃しないと……
とは言えどうすりゃいいんだか……)
『ゥフハハハァ! 哀れだナァ余所モンの魔女ッ!
オメーはそのママ切り刻まれて生涯を終えるンダァッ!
尤も、オメーがあのガスマスク連れて螢都から出てくってンナら
見逃してやらんでもねーけどヨォ〜?』
「――笑う価値もない冗談だねぇッ! ――っぐぅぅっ!
――この程度の魔術にハメた程度で――ハッ!
――ィよッ、と!
――このあたしにっ、
勝ったつもりでいるなんてさっ!」
熱線を食らったり避けたりしながら、あたしはケイソンズを煽ってやる。
「それとももしかしてあんたッ、
あたしらが怖いのかい?
実は内心勝てる気がしてなくて、
今にも逃げ出してくれればそれに越したことはないとかって、
そんな風に思ってるんじゃないの!?」
『ハァ〜!? なンだァオイ、頭ワいてんのかオメーっ!
んなワケねぇだろボケっ! 誰がオメーらなんぞ怖がるかっ!
減らず口叩くヨユーがあるたぁ、
いよいよ状況を理解できてネーと見えるッ!
いいゼェ、そんなに苦しみてーンなら
存分に苦しめてやっからヨォ〜!』
面白い。なら見せて貰おうじゃないか、
怪物みたいな見た目で人間並みに知能が高くて、
その上魔術師でかつ天使の友達までいるあんたの、真の実力ってヤツをね。
『掛かって来いヤ、この余所モンがぁッ!』
「やってやるとも、メストカゲっ!」
次回、誘拐犯コンビとの激闘はまさかの結末に!?




