第98話 イルボ商会
到着だ。
とうとう俺はやって来たぜ。
……イルボ、どうして俺達の街を滅茶滅茶にするような真似をしようとした?
聞かせてもらうぜ!
イルボ商会の前にやってきた。
相変わらずデカい建物だこと。
お客さんも沢山。
賑わってる店内。
従業員達も笑顔で働いている。
平和そのもって顔しやがって……
「くっそ~、普通に商売している裏で俺達の街に危害を加える算段してたんだな!」
そう考えると無性に腹が立ってくる!
俺達が迷惑かけたかよ?
むしろ、俺達のおかげで随分儲かっただろうに!
「よし、建物ごと爆殺するか!」
爽やかに言った。
「お前、話し合うとかいってなかったか? 頭がおかしいのじゃ」
即、ラージャに言われたが解ってるよ。
「冗談だ、ラージャ!
そんじゃ、全員降車! 平和的に話し合いに行こうぜ! 平和的に!」
俺は、トラックを降りる。
荷台の奴等も全員降りるように言ってる最中、荷台に置いてあった角材を見つけた俺は、そいつを手に取った。
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◇◇◇
イルボ商会、会頭室――
イルボ商会は、平民であるイルボが一代で築き上げた商会である。
その始まりは、彼の出身地であるエルヴァスティ王国 オリアン領 ラウマ村の小さな商店。
安価で、より良い品を消費者に! をモットーに彼は、物流に力を入れ、エルヴァスティ王国にその名を轟かせるイルボ商会を作り上げたのだ。
「会頭! 下に、騎士を引き連れたカズヤが会頭を出せと騒いでいます!」
胸を揺らしながら番頭のフローラが会頭室に入るなり言った。
「……カズヤが?!」
持っていた書類を落としたイルボ。
予想していない事態を聞かされたからだ。
「会頭、どうしましょう?! 絶対バレてます!
あのバカは頭がおかしいから何をしでかすか分かりません、逃げましょう!」
動揺するフローラがあたふたとしている。
イルボも動揺していたが、そんなフローラの姿を目にする事で少し冷静さを取り戻した。
「落ち着けフローラ、兎に角カズヤに会おう。
そこでちゃんと話をすれば解ってもらえるハズだ」
「そ、そうでしょうか……」
不安な気持ちで一杯のフローラだったが、堂々としたイルボの姿をみて少しだが落ち着く事が出来た。
「急ぐぞ」
「は、はい、会頭」
二人は、一階の店舗部分にいるカズヤに会う為、部屋を出るのだった。
◇◇◇
イルボ商会 一階――
俺は、左手に持つ角材を肩に乗せつつ、右手を受付カウンターの上に置いている。
俺の後ろに武装した俺の家族、この国の王子であるルーカスとお付きのセリア、そして武装した騎士達がいる。
オスモとサニーは荷台にいるって言うから置いてきた。
入ってきた時は店内に客が大勢いたが、俺達の姿を見て大分帰ったようだ。
「イルボを呼べって言ったが、いつまで待たせるんだ?」
紳士的な俺が受付の女に質問した。
いくら俺が優しいからって舐めてるの?
「しょ、少々お待ちください。
番頭が呼びに行ってるはずなので……」
受付の女がまた同じ事を言った。
「少々って何時までなの?」
イルボ商会は、俺を軽く見ているのだろうか?
イライラするな。
「あのね、せっかく俺が平和的に話をしに来たってのに…… 暴れさせたいの? え? どうなのよ?」
「へ、平和的ですか?」
俺や後ろの武装した俺の連れを受付の女が交互にみている。
何か問題でも?
俺達が本当に暴れ出す、暴漢だとでも思っているのか?
うん?
「うおおおおおおお!」
左手に持っていた角材をブンブン振ってみた。
暴れるって、こんな感じか!
「て、店内で角材を振り回さないでください」
受付の女に言われた。
店内で角材を振り回さないでくださいとは、店のドコにも書かれていないだろ?
しかし、社会通念、一般常識を鑑みて女の言う事も、もっともな事。
なので、
「じゃあ、やめる」
俺は素直だし、まともな大人なので、角材を振り回すのをやめた。
大体、疲れるし、意味がない。
そうだ、イルボが来るまで、環境の整備でもやりますか!
「よし、お前等! 今日は店じまいだから、帰れ!」
俺は後ろに振り返って、店内に響き渡る様にデカい声で残ってる客達に向けて言った。
ざわざわと客がなったが、帰る様子はない。
ならば、実力行使。
「騎士の皆さん! お客さん達がお帰りだから、追い出してあげて!」
自分で一人一人に帰ってくださいと頼みに行くのがめんどくさいし、騎士にやってもらおう。
うん。
騎士達が動かない。
俺の部下じゃ無いから当然か。
それなら、
「ルーカス」
王子様に頼むから!
「おい、カズヤの指示に従え」
全部言わなくてもルーカスが騎士達に命じてくれた。
助かるぜ。
「はっ!」
元気よくルーカスに返事する騎士達。
俺の事を無視してたくせに。
結果。動いてくれたから良いか。
しかし、流石はルーカス、一発で騎士達が動いてくれた。
騎士達が店内に残っていた客を追い出しにかかってくれた。
大事な話をするのには環境が大切だからな。
「おーーい、帰ってもらう時は、失礼の無いようにな!
手荒な真似だけは絶対しないように」
まあ、見る限りそんな事をしている騎士はいないようだが、念の為に注意しとく。
ん?
「ちょっと待ってろ!」
俺を舐めている受付の女をギロリと睨んで俺はカウンターを離れた。
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「ばあさん、今日は、店じまいだから早く帰った、帰った!」
向こうで騎士がヨタヨタしてるばあさんと揉めているのか?
多分、騎士が店から出るように言ってるのだろうけど……
「あー、お前、受付カウンターから見てたが、あんまりヤイヤイ言うんじゃないよ
年寄りなんだから行動が遅いのあたりまえでしょうが。
ここはいいから、他の客を追い返して。
ばあさん、大丈夫?」
ばあさんと騎士の近くにやって来た俺は二人に声をかけた。
「んあ?」
ばあさんが俺の方をむいた。
なんだ、その返事。
いや、耳が遠いのかな?
どうせ耄碌しているんだろう。
可哀想に。
「おじいちゃんが、三途の川の向こうで待ってるのだろうけど、長生きしてね、おばあちゃん」
優しい俺は、ばあさんの手を握り店外へとエスコートを…… 邪魔だな。
手にしていた角材を床に置いた。
改めてばあさんの手を握る。
「ちょ、ちょっと!」
フフフ、俺のようなカッコ良く若い男に手を握られたからって、喜んじゃって。
お年寄りは大事にしないとな。
でも急ごうか。
「ゆっくりで良いから歩こうね」
俺がニッコリ笑ってばあさんの背中に手を回す。
バチンッ!
「いでっ!」
突然後頭部に痛みが!
何だ?!
何があった?
振り向くと、じいさんが角材を持っていた。
「それ、俺がさっき床に置いたやつじゃないか!」
クソジジィが角材で俺をぶん殴りやがったんだな?
お前な!
「そんなもんで殴ったら痛いでしょうが」
「スカーレットから手を離せ! この泥棒猫!」
「は?」
クソジジィ、何を言って……
「なんてスケベな若造なのかしらね!
あたしゃ夫一筋、安い女じゃないよ! 全く! ペッ!」
ばあさんが俺に唾を吐いて、胸の辺りを両手で隠している。
「……えっ?」
なんだ、ヨボヨボだからてっきり旦那さん死んでると思ったら生きてたんだね。
てか、何をしてるの?
お前も、そのクソジジィも。
頭が痛いんですけど。
「大丈夫かい、スカーレット」
そう言って、クソジジィがばあさんの肩に手を回し、入り口のドアへと向かって行くのがみえた。
「……」
呆然とその様子をみている俺。
「俺の女に手を出すな!」
出て行く間際にクソジジィが俺に…… 何だと?!
「このっ」
「カズヤ!」
頭に来て追いかけようとした時、デカい声が聞こえ足を止めた。
この声は……
俺は、ゆっくりと振り返る。
「ほう……」
階段から奴が降りてくるのが見えた。
全く、待たせやがって……
「イルボ! 面白い真似をしてくれたな!」
俺とイルボの視線がぶつかる。
兎に角!
兎に角だ、話をしようじゃねぇかイルボ。
そう考えるのだが、怒りが沸々と……
冷静になれ、俺!
イルボへと向かう俺の足が一歩、また一歩と進む度に怒りでどうにかなりそうな気持ちを必死に抑え込む。
「お前、ばあさんに悪戯でもしようとしたのか?
……女にモテないからって、マニアックすぎるのじゃ」
クソジジィとババァと俺のやり取りを見ていたラージャが俺に余計な事を。
「あのな、そんな訳があるか!」
俺が? ヨボヨボのばあさんに?
大体俺は浮気などしない。
嫁さんが沢山いるけど。
うん。
「どうじゃ?」
ラージャに聞かれた。
まあな。
「おう」
俺はラージャを見ずに答えた。
「世話のかかる奴なのじゃ」
ラージャの声がしたが、余計なお世話ってんだ。
でも、ありがとな、ラージャ。
「冷静になれたよ」
よっしゃ、いくか!
バッ!
階段を降りたイルボの目の前に立つ俺。
「よう、久しいじゃねぇかイルボ」
「カズヤも変わりないようだな」
やっぱ近くに来ると威圧感があるな。
でも、俺だってこの世界にきて少しは成長出来たんだ、負けない!
「さあ、話をしようぜ」
俺はニヤリと笑った。
優しい俺は、老人から言われなき暴力を受けた。
なんだよ!
いや、そんなどうでも良い事より、お前だよ、イルボ!
さあ、話を聞かせてもらおうか!
って事で、次回も、乞うご期待!




