第82話 出発進行 その2
俺は、王子を俺達の街、フジノ街へと招待する事を決めた。
フジノ街へ行くのなら、アレに乗るだろう?
「そんじゃ、みんなトラックに乗りますぞ!」
俺は、近くに止めてある愛車のトラックへと皆を連れて移動した。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!
さっきから気になっていたが…… コレは?!」
トラックを目にしたルーカス王子がテンプレ通り驚いている。
なんだか、懐かしいな、その反応。
「貴様! 危険なモノでは無いだろうな!」
セリアも驚いているのか、俺に食って掛かってきた。
「大丈夫だから、そんな喧嘩腰でくるんじゃないよ」
全く困ったもんだ。
嫁達は俺が困ってるのに先に行っちゃった。
「ほら、二人がモタモタしてるから皆先に行っちゃったじゃん!
ただのトラック!
えーーと、馬車みたいな乗り物だから、気にしないでさっさと乗っちゃって」
王子とセリアに言った。
そう言えば…… トラックを購入した当時は嬉しくて自慢しまくっていたっけ。
だが、それも飽きた。
説明が面倒だから。
当然、俺は適当な説明になる。
いや、そんな事など、どうでもいいから、さっさと乗っちゃってくれ。
ガチャッ
渋る二人を連れて俺はトラックの助手席のドアを開けた。
「え?」
見ると、助手席にライネとラージャ。
後ろの座席にペトリ、ボリス、ミカエルが既に乗車しているではないか。
「おい、俺達は、どこに乗れば良いんだ?」
王子に聞かれた。
確かに、座るとこがない。
そりゃそうだ、当たり前だろう! 6人乗りなんだから!
何普通に座ってるんだ皆? えっ? おい!
「いや、ハハハ…… ちょっとお待ちを」
王子に愛想笑いしつつ答え、少し移動させた。
だって不味いだろう?
一応コイツはこの国の王子なんだから、荷台に乗れってソレは無いだろうに、嫁達は何を考えているんだ?
「少々お待ちを」
俺は王子に言うと素早くトラックに戻る。
「お、おい、ライネ! アレ、王子様だろ? お前達がみんなこっち乗ったらアレが乗れないじゃん!」
小声で訴えかける俺にライネが、笑みを浮かべた?
「カズヤさん、こういう事は最初が大事ですからね。
それに、元の身分など関係ありませんから!」
「ライネ、お前、何を言って…… うわっ!」
戸惑う俺を押しのけ車から頭を出したライネ。
何をする!
「サニー! カインとクアラのついでにルーカスとセリアさんも荷台に乗せてあげて!」
大きな声でライネが言った。
いや、王子を呼び捨てって正気か?!
カインを荷台に乗せる為に持ち上げていたサニーがこっちを見た。
「解ったよーー」
サニーが呑気に返事。
「頼んだわよ」
ライネが言うとドアを閉めた。
そして、王子達を見て顎で、後ろに行けと合図した。
うん、俺も常識ないなと思っていたが、お前等も大概だな!
王子の機嫌が悪くなったらどうするんだ?
「ライネ、お前、王子が怒ったらどうすんだよ!」
小声で言ったが、ライネが前を向いて無視の構え。
お。お前…… 聞こえてるだろ?
「あーー、もうっ!」
慌てて俺は王子の元へ!
なんで、俺がこんな気を使わなきゃいけないんだ、オスモじゃあるまいし!
あれ?
さっきまでそこにいたのに、王子がいないじゃないの。
「王子達はどこに…… って、普通に順番待ってるし!」
王子とセリアがクアラの後ろに立って荷台に乗り込む順番待ちをしていた。
「……ルーカス様の事を呼び捨てとは、やっぱりあの女は許せません!」
ちゃんと列について並んでいたセリアが殺し屋のような目をして歩き出そうとした。
まずい!
「ごめんなさい! 俺からちゃんと言っときますんで!」
俺の声など無視してセリアが前に出てきた!
だが、その時だった。
「待て、セリア!」
王子が、ライネの元に向かおうとしていたセリアを呼び止めてくれた!
「!? 王子?」
セリアが驚いている。
だが、助かったぜ!
「サンキュー、ルーカス王子!」
俺は、そんな二人の元へ到着。
そんな俺に軽く笑みを浮かべる王子。
良かった、やっぱ心の広い男だぜ!
「セリア、女じゃない…… アレは、男だ!」
キリッとして王子がセリアにライネの事を教えてあげてた。
うん。
残念な奴なんだろう。
一体セリアは、こんな奴の何処が気に入ったのだろうか?
「お、男……」
驚いているが、セリアは、ライネが男と知らなかったのか?
どうでも良いけど。
「ありがとう、おじちゃん!」
「気にすんな、クアラ!」
サニーに支えられ荷台に乗ったクアラがサニーにお礼を言っていた。
って事は、
「おっと、俺の番だ!」
ですよね。
王子が前に出て、サニーの指示に従いタイヤに足をかけ荷台によじ登りはじめた。
サニーが下から王子を支えて介助しているな。
「気をつけてね」
普通だ。
王子が気分を害している素振りも無いし、俺が気にする必要がなかったようだ。
荷台に乗れと言われたから、なんの疑問も抱かず王子は普通に荷台に乗るものなんだと思ったのだろう。
恐ろしいくらいに素直な奴だ。
ホントにアレで王子なのか?
どうでもいいが、ちゃんと荷台に乗れたようだ。
「……そしたら、後はアンタだけだから、ちゃっちゃと乗っちゃって」
そう促すと、セリアもタイヤに足をかける。
サニーが介助を……
「触るな! お前は、私が殺す!」
セリアが、体に触れたサニーにキャンキャン吠えた。
サニーが手をひき、肩をすくめている。
「あんたね、手伝ってくれようとしてる人にソレは無いんじゃない…… か?」
善意の行為なのに可哀想だろ? そう呆れて俺はセリアに言ったのだが…… ちょっと待て!
「サニー先に乗ってろ! お前は、セリアに嫌われてるし、俺が介助すっから!」
俺は、サニーに言ってあげた。
心無い一言に人は傷つくものだからな、優しさだ! だから、とっとと荷台に乗れ、サニー!
「違いねぇ。
そんじゃ、カズヤ頼んだぜ」
俺に感謝してサニーがジャンプしたと思ったら、トラックの荷台に音もなく着地した。
恐ろしいほどの身体能力。
ロリコンでなきゃ……
いや、そんな事より!
「セリア、大丈夫か?
ゆっくりで良いからな、あんな化け物の事なんて、気にするだけ損だぞ」
笑顔で言ってあげた。
「ああ、すまん。
私は、あの男とは合わないようで、見苦しい所を見せてしまったな……」
「いや、良いんだよ。
気にするな、はぁ、はぁ」
セリアに密着して荷台に上がれるようにデカい尻を下から支えてやる優しい俺。
クンカ、クンカ……
いい匂いだ。
「も、もう、大丈夫だから……」
セリアが言ったが、もう少しだけ……
「い、いや、はぁはぁ、ちゃんと上がるまで支えてるから…… はぁはぁ」
セリアの尻に顔を密着させるほど、頑張って俺は支えてあげた!
紳士だから!
こ、これが、女!
こ、これが、女の匂いか!
「さ、最高だぜ!」
が、我慢できん!
俺は、たわわに実った巨乳に手を……
(クソッ! 急がないともう荷台に上がっちまう!)
もう少しで指先が触れる……
「おい」
「は?」
見上げると、セリアがナイフ片手に俺を睨んでいた。
うん。
「ちゃんと荷台に乗れたようだな!
運転中は揺れるから、ちゃんと掴まっているんだぞ!」
そう言って逃げるように俺は運転席へと向かった。
後ろから俺を罵倒するセリアの声が聞こえてきたが無視だ、無視!
・
・
・
バタンッ!
「よし、みんな乗ったよ!」
笑顔で運転席に乗り込んだ俺。
うん? どうした、みんな?
「いやらしい」
バッ!
後ろから声がしたので、俺は見た! 今のは、ミカエルだよな?!
「あんな嬉しそうな顔するなんて、俺のお尻じゃだめなのかよ!」
「あ、いや、ペトリ?」
「儂のお尻の方が大きいよね、カズ君」
「はは…… ボリス、何を言って」
「カズヤ、さっきのは無いだろ?
みんなで見ておったのじゃ、貴様が女の尻に顔をうずめているのをな!」
ラージャが教えてくれた。
俺の善意の行動を見られていたのだ。
ソレが、曲解して伝わっている。
荷台に乗る手伝いの時に、お尻に顔をつけておっぱい触ろうとしただけなのに……
「いや、違うんだ、皆!」
「この、浮気者!」
バチンッ!
ライネにグーで殴られた。
擬音からしてビンタだと思ったのだが…… グーだとはな。
運転席側のドアのガラスに頭を叩きつけられた俺。
なんだかんだあったが、出発進行! いざ、俺達の街へ!
ぶん殴られたが、トラックに皆が乗ったので出発する。
……しかし、王子を荷台にってオールストレーム領に不利益になるんじゃないんですかね?
大丈夫かよ?
何だか、ライネ達の様子が変だし、なんで王子にそんな高圧的な態度なの?!
って事で、次回も、乞うご期待!




