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地獄の使者はモテたいです!  作者: カネキ
act.8 エルヴァスティ王国

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73/105

第73話 王子と玉子は字が似てる

折角、王子を観に来たのに、こんな端に……

もしかして、俺達の事、迷惑的な感じで思って…… いや、無いな。

だって、俺だもん。

 お出迎えの端に追いやられた俺達。

「カズヤさん、緊張しますね」

「ん? ああ、ライネ、緊張するな。

 どの馬車に王子が居るんだろうな?」

 特に緊張など無いが、俺は人が良いのでライネに合わせていってみた。


 オールストレームホテルの前に王子一行の武装したのが整列すると、馬車の隊列がその前きた。

 いちいち時間がかかるな。

 効率が悪い。

 さっさとしろと思うが、大人な俺はちゃんと大人しく待つことにする。

 各馬車から従者が降り立つ。

 おっさんとか若いのとか…… 騎士では無いから文官かな?

 官僚的な奴等か?

 どっちにしろ王子じゃないのが降りて…… 王子め、早く降りて来て顔を見せたら良いのに。

 もったいつけやがって。


 先に馬車を降りた奴等の表情を見る限り、オールストレームの街の発展ぶりに驚きを隠せないでいるようだ。

 フフフ、気分が良いな。

 辺境の田舎と舐めてたのだろうが、どんなもんだい。

 いや、お前らは良いから、早く王子を見せろ。


「あっ! 見ろ、アレ!」

 嫁達に言った!

 一番豪華な造りの馬車から、端正な顔立ちをした金色の髪の大男と銀髪の凄い美女が降りてきたのだ。

 他の皆がかしずいているし間違いないだろう。

 あー、アレが、王子的な奴か。

 しかし、王子様って感じじゃないな。

 もっと線が細くて、なよってしてるイメージだったのに。

 言ったら武官的な… 騎士団にいても可笑しくない感じだね。

 へーー。


「カズヤさん!」

「へ?」

 ライネが俺の袖を引っ張って小声で言ったので見ると、俺とラージャとサニー以外が跪いていた。

 ああ、そうか、オールストレーム領もエルヴァスティ王国の一部だから、そういう事だよね。

 ん?

 周囲から立ってる俺達、凄い見られてるし!


「お、おい、ラージャ、サニー、座れ! 跪いて!」

 俺は、二人に慌てて言った。

 キョトンとしてた二人だが、皆と同じように素直に跪いてくれた。

「ふう、危なかっ…… ヒィ!」

 オスモが俺を殺す勢いで睨んでいた。

 ちゃんと、跪いたんだからいいじゃねぇか。


「オスモ・オールストレーム男爵よ!

 此度、恐れ多くもエルヴァスティ王国、ルーカス・エルヴァスティ王子直々の訪問である!」

 デブの男がオスモに偉そうに……

「我が領地にルーカス・エルヴァスティ陛下をお迎え出来た事は、末代までの栄誉でございます。

 辺境の地なれば、足りない事もございましょうが、我等一族領民、全身全霊歓迎させていただきまする!」

 オスモが頭を下げて…… アレは、王子じゃないのに。

 責任者って大変だなぁ。


「おい、王子って言うからもっと可愛いの想像してたのじゃ」

 ラージャが俺に抗議してきた。

「いや、俺が知るか。

 お前と一緒で初対面なんだぞ」

「アレなら、我は願い下げなのじゃ」

「お前は、何様だ? てか、何を期待してた、お前?!」

 ラージャ、いいから黙ってろ。

「いつでも殺れるぜ」

「うん、黙ってろサニー」

 なんでそんな攻撃的なんだ、お前は?

 てか、私語してたら…… ほら!

 オールストレーム家の皆さんの視線が痛い。


◇◇◇


ルーカス・エルヴァスティ王子――


 俺、ルーカス・エルヴァスティは、オールストレーム領に降り立った。

「ん?」

 目の前に整列しているオールストレーム領の奴等の端に、明らかに異質な者達がいる……。


「お、おい、セリヤ、アレ……」

「王子、よそ見をせず威厳をお持ちください」

 いや、明らかに、変なのがあそこにと思ったが、セリアの言う事ももっともなので、俺はオスモ・オールストレーム男爵を見据える。

 男爵如きを相手するのもどうかと思うが、まあ、仕事だからな。


「オスモ・オールストレーム男爵よ!

 此度、恐れ多くもエルヴァスティ王国、ルーカス・エルヴァスティ王子直々の訪問である!」

 従者の言葉にオールストレーム領の奴等が恐縮しているのが伝わってくるようだ。

 突然押しかけたのは俺達の方なのに、彼等にとってはいい迷惑だろう…… そして、あの異質な者達がさっきからブツブツ私語を…… 気になる!


「ルーカス様」

「ん?」

 セリアの声?


「どうした?」

「どうした? では、ございません。

 男爵にお言葉を……」

 小声で注意された。

 ああ、そうだな。


「オスモ・オールストレーム男爵、此度は突然の来訪になってしまったが、王国を代表して参った。

 宜しく頼む」

 俺が言ったら、男爵が地面に額をこすりつけていた。

 ……王の息子と言うだけの男に、大変だな。

 なにか申し訳ない気持ちになってしまう。

 王になるのに、そんな考えは、いけないのかも知れな…… あそこの一団、私語!

 大体、なんだ、あの恰好?

 舐めてんのか?


「あ、あの、オスモ? あそこのは?」

 たまらず俺は、指差して聞いた。


◇◇◇


オスモ・オールストレーム――


 クソッ! 平和な毎日だったのに、なんで俺が……

 しかも、カズヤの野郎…… 後でぶっ飛ばす。

 俺が睨んだら、目をそらしやがって、解ってるのか?


「オスモ・オールストレーム男爵よ!

 此度、恐れ多くもエルヴァスティ王国、ルーカス・エルヴァスティ王子直々の訪問である!」

 確かに。

 王族が来訪したって自慢できるかもしんないけど、俺の代で来なくてもいいじゃん。

 俺は、そんな事、望んでないバカめ! とは、流石に言えないな。

 兎に角、失礼のないようにしないと!

「我が領地にルーカス・エルヴァスティ陛下をお迎え出来た事は、末代までの栄誉でございます。

 辺境の地なれば、足りない事もございましょうが、我等一族領民、全身全霊歓迎させていただきまする!」

 土下座でも何でもするから、早く帰ってくれ!

 王子でも何でもないデブにペコペコする俺だが、そんな事は、なんて事ない。

 ただ、あの筋肉バカそうな王子が無茶を言い出さないことを願うのみだ!


「オスモ・オールストレーム男爵、此度は突然の来訪になってしまったが、王国を代表して参った。

 宜しく頼む」

 思いもしないことに王子がまともな事を言ってきた。

 それに対して、そうですね、などと言えるわけもない。

「お気遣いありがたき幸せ、大空のような広きそのお心、恐悦至極にござりまする!」

 俺は、額を地面にこすりつけて言った。

 そして、そう思うなら、早く帰ってくれ王子! と強く願う。


「あ、あの、オスモ? あそこのは?」

 王子?

 王子の指差す方向を見……

「カッ… !」

 アレがいたんだった。

 カズヤ、ホント、お前、ぶっ殺すぞ。

 胃がキリキリする……

 あんな常識知らずを王子に紹介なんて出来るわけがあるか!

 よ、よし、ここは……

「ん? 何がですか?」

 誤魔化せ、俺!

 ニコニコして俺は王子に言っ

「いや、あそこ。 さっきから私語してる変な恰好のアレだよ!」

 王子が指差し…… 誤魔化せなかったぁーー!

 どうする?

 さらに誤魔化す?


チラッ


 ダメだぁ! 俺には出来ない。

 王子の従者のあのデブが凄い俺を睨んでるから!

 人間て、暑くなくても、こんなに汗が出るんだな。


「あ、あの、王子…… アレは、その、エヘヘへ……」

 クソッ! なんで俺がこんなしなくていい苦労を!

 コレもカズヤの野郎が俺が来るなって言ったのに来てるから!


◇◇◇


カズヤ――


「オスモの奴、何やってんだろうな?」

「そんなの知らないのじゃ。

 もう見飽きたから帰ろうなのじゃ」

「ラージャ、もう少しいようぜ」

 飽きたらしくラージャが言ってきたけど、王子の隣の綺麗な女とお近づきになりたいので我慢してくれ。

「おい、カズヤ、あんまり話してると、怒られるぞ?」

 ミカエルが俺に注意してきた。

「そうだな、すまん。

 あんなんでも、王子だからな。 睨まれてこの領地に不利益な事になったら大変だ」

 王子一行に悪い感情を持たれないようにしようと思った。

「ごめんね、カズヤさん」

 ライネが謝ってきた。

「気にすんなって。

 ほら、俺って常識人だからな、当然の事だ」

 嫁が嫌がる事をしない男、ソレが俺だ。


「流石、カズヤ様だね。

 良かったな、ライネ、ミカエル」

 ペトリに褒められた。

 照れるなぁ、へへへ。


「お前等、王子の御前だぞ!

 少しは黙っていろ!」

 王子一行の誰かが言ってきた。


「誰ですか? 静かに! 王子の言葉が聞こえないですよ!」

 俺は、キリっとして声のした方に注意してやった。


「そうだ、ボリス。

 王子に挨拶したらどうだ?」

「うん、ちょっと挨拶してくるね!」

 ボリスが嬉しそうに歩いて行っ… っと、忘れてた。

 一緒に行ってやるって話してたんだった。

「ボリス、ちょっと待って、俺も行く」



「ラージャ様、王子様の姿が良く見えないです」

 ラージャの着物の裾を持つカインがラージャに声をかけた。

「あんなの、見たいか? カイン。

 どうじゃ、クアラも見たいのか?」

 ラージャがクアラに確認するとクアラが頷いている。

「そしたら、カズヤについていくのじゃ」


「ちょっと、ラージャちゃん」

 ペトリの注意を無視して、カインとクアラを連れたラージャがカズヤの後を追いかけた。

・

・

・



「男爵、王子の質問に答えなさい。

 アレは、何者なのですか?」

 ルーカス王子と一緒に馬車から降りた銀髪の女性がオスモに詰めていた。


「おい、あんたその辺で、オスモがなんか困ってんじゃん」

 近くで見ると、思っていたより美形な女だ。

 だけど、人が嫌がる事をするのは感心しないな。

「カズヤ! 止めて!」

 助けてやったのに、オスモが泣きそうな顔で俺にいってきた。

 やっちゃったか?

 よし、無視しよう。


 ルーカス王子がオスモの声に、ピクリと反応した。

(……カズヤ? どこかで聞いたような……)


「貴様…… まあいい。 お前は、何者だ?」

 女が聞いてきた。

 オスモに怒られるし、無視。

「貴様、無視をするな!」

 女の声が聞こえたが、プイっと俺はボリスの方を見た。


「ボリス、ほら」

「う、うん。

 ルーカス王子、お久しぶりです……」

 ボリスが王子の前で跪きサングラスを外して言った。

 流石ボリス。

 ちゃんとTPOをわきまえている行動だ。


「ん?」

 ボリスの顔を見た王子の表情が変わったな。


「お、お前… ボリス… ボリス・ベンディクス!」

 凄く驚いているようだ。

 サプライズ成功って事。


「ルーカス王子、突然職を辞した事、申し訳ない事をいたしました」


「ボリス! あのような辞表一枚で、余が如何ほどお主の事を心配したか!

 余はもっと、お前から剣を教えてもらいたかったのだぞ!」

 とても教えてもらう者の態度とは思えないが、王子がボリスの事を心配してたんだ、へー。


「後な、なんだあの辞表!

 さっぱり意味が解らんぞ。

 『カズ君と添い遂げたいので辞めます』

 って、書かれてあったと思うが…… って、カズ君!?」

 王子が俺を見た。

 何だ?


「王子、カズ君です」

 グイっとボリスが俺を掴んで、王子の前に突き出しやがった。


「ハハ… あの、カズヤ・フジノです、宜しく」

 こんなんで良いわけは無いだろうが、とりあえず挨拶した俺。

 王子……


「いや、お前、なんちゅう顔で俺をみてんだ?」


「貴様、無礼であろう!」

 女がギャンギャン言ってきた。


「さっきから、お前うるさいな! そんなんだと嫁にもらってやらないからな!」

 男らしい俺は、ビシッと言ってやりましたよ。

 綺麗だからって何を言っても許されると思ったら大間違いだ。

 育ちが悪いんだな、育ちが。

 全くもって困った奴だ。


「ほれ、カインとクアラ、そこに立つのじゃ」

「はい!」

 カインとクアラが王子の前に立つと、ペコリとお辞儀して、ラージャの方を向いた。

 見ると、ラージャの手には、デジカメが握られている。


「ああ、記念撮影か。

 良かったな、カイン、クアラ」

 二人とも緊張した表情で立っている。

 初々しくて微笑ましいね。


「おー、ちゃんと撮れたのじゃ!」


「見せてください、ラージャ様!」

「ありがとう、ラージャ様!」

 カインとクアラが走ってラージャの元へ行き、撮影したのを見てワイワイと嬉しそうだ。


「ラージャ、後で、ボリスと王子も撮ってあげてね」

 記念に良いだろう。


「解ったのじゃ」

 ラージャがチラッとこっちを見て答えてくれた。


「ほら、ボリスに王子、良かったね」

 ニコニコして言ってあげた。


「自由すぎだろぉぉおお、お前等ぁぁぁああ!」

 なぜか、女が怒っていた。

女がキャンキャンとうるさかったです。

もう、女房気どりなのか、気安すぎるだろ?

もっと常識的な女性なら良かったのだが、顔が良いだけで礼儀も何も知らない女だ。

全く、この先が思いやられるぜ。

ああ、あと王子に会えた。

って事で、次回も、乞うご期待!

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