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地獄の使者はモテたいです!  作者: カネキ
act.8 エルヴァスティ王国

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第72話 お出迎え

王子達の一行が街に入る前にオスモ達は、オールストレームの街に到着した。

そして、その足でオスモとエルモは街の入り口へと出迎えに行くのであった……

旧 オールストレーム邸宅(現 オールストレームホテル)前――


 屋敷の前に、ホテルの従業員、そして、領主の妻ヒルダと娘のユリアナが立っていた。

 領主であるオスモと長男のエルモは、街の入口に王子一行を出迎えに行っている。


「お母様、王子様ってどんな方かしら?」

「さあ、私が嫁いできてから王族の方が来られるなんて初めてだから……

 兎に角、失礼のないようにだけしなきゃね」

 好奇心から聞いたユリアナに、緊張した様子のヒルダが答えた。

 母の言葉にユリアナも失礼だけはしないようにと思うのだった。


「ヒルダ様! 旦那様達がもう直ぐ到着します!」

 使用人が叫びながら走ってきた。

 オスモと共に王子の出迎えに行った者である。


「お母様、どうしましょう!」

 慌てた様子でヒルダに聞いたユリアナ。

「ユリアナ、堂々としていなさい。

 いい、くれぐれも失礼のないようにね」

 ヒルダは自分に言い聞かせるように言った。


◇◇◇



ワーー!

  ワーー!


 歓声が上がる中を、オスモを先頭に騎馬が10騎、自転車が15輌と続き、豪華な造りの馬車が数台、そしてその後方に騎馬と歩兵が進んでいた。


「ささ、こちらでございまする!」

 オスモは、馬に乗る王子の従者にペコペコしながら王子一行を先導する。

 道の両脇では、多くの人が王子一行を見物しに出ているが、勿論魔物と呼ばれる種族は居ない。

 人間やエルフ、獣人以外は、家の中や森に隠れ済みである。


豪華な馬車の一つ――


「…ほう。

 中々、発展しているようだな」

 馬車の中からオールストレームの街並みを眺めるエルヴァスティ王国の王子、ルーカス・エルヴァスティが驚いている。

 王都とまでは流石にいかないが、辺境の田舎街とは思えぬ規模と発展ぶりに衝撃を受けていた。

「王子、辺境の領主オールストレームの治めるこの地は最近、目を見張る発展をとげているとの情報は確かでしたね」

 同乗する銀髪の女性、王子の側近 セリヤが言った。

「セリヤ、王都にもココの物資が多く入っているというではないか」

「はい、農作物から工業製品まで幅広く王都だけでなく各地の領土に流通しているようですね。

 同行してきている我が自転車機動部隊に配備されている自転車もこの地で生産されているとか」

「らしいな。

 俺達がこんな辺境くんだりまで来たのも、現状の把握も含まれているからな」

 王族であり、次期王である自分が派遣された。

 それほど、この地の利用価値が高いのかとルーカスは王都を出る時までは思っていたが、この地にやってきて街並みを見るにつけ、ただの辺境の大都市だとは思えなくなり、王が自分を派遣した意味を考えていた。

 そして今回この地での任務を必ずや成功しなければならないと気合を入れるのだった。


 そして、気合を入れている者がもう一人……。



数分前――


ブロロローー!!!


「王子がまだ到着してなきゃ良いけどな!」

「余り飛ばすな、カズヤ! 危ないのじゃ!」

 

 家族の衣装を決めてやったりしてたら遅くなっちまった!

 皆を愛車のトラックに乗せ、急いでオールストレームホテルを目指す俺!

 遅くなってしまったが、田舎者と舐められないように、俺を始め家族全員気合いを入れた衣装だぜ!

 まぁ、家族じゃないカインとクアラは、シャツにサスペンダー付きの黒の半ズボンに白のソックス、黒の革靴といった身なりをさせたし、サニーは、ジャケットを買ってやって着せといた。


 俺達はって言うと、もう凄く豪華な衣装に指輪やネックレスをジャラジャラさせて、貴族より貴族らしい姿と自負している。

 おかげで、少々動きずらいが…… おっと、オールストレームホテルが見えてきたぁ!


ブロロローー!!


◇◇◇



「お母さん! 王子来ました? まだ?」

 玄関先に整列してたヒルダに声をかけた。


「カズヤさん? …凄い恰好!」

 振り返ったヒルダが俺の姿を見て驚いている。

 当然だろう。

 カッコいいから。


 毛皮のロングコートの裾を引きづりながらポーズをとるカズヤ。

 金ピカのスーツを身にまとい、豪華な貴金属をジャラつかせ、手にはステッキを握っていた。

 勿論、靴も金ピカ、シルクハットも金ピカである。


 ラージャを始め嫁達は、花魁風の着物姿でオリエンタルムードたっぷりだ。

 着付けができるラージャがいたからできたコーデだな。

 ボリスは自分も着たいとゴネたが、俺ほどのスタイリストになると、そんな勝手は許さない。

 そこで、ボリスには、マフィアのボスみたいな恰好をさせた。

 黒に縦縞の入ったスーツに、黒のシャツに白のネクタイ、黒の帽子に黒の革靴。

 サングラスに葉巻を咥えさせた。

 貫禄があるし似合ってるぜ。



「お、お姉様、その恰好……」

 俺達の姿に驚いたユリアナちゃんがライネに声をかけた。

「フフフ、僕もびっくりしたけど、カズヤさんの国のお姫様の衣装なんだって」

 ライネが嬉しそうに説明してて微笑ましいね。

 心なしかユリアナちゃんの顔が引きつっているように見えるのは、俺の気のせいだな。

「芸者スタイルっていうらしいぞ。

 どうだ? ライネより俺の方が色っぽいだろう?」

 ミカエルは、しなっとして…… とても色っぽい仕草で立ちそうになってしまった。

 ユリアナちゃんとヒルダが青い顔をしている。

 ちょっと刺激が強かったかな?

 てへっ。


「ユリアナちゃん」

「サニーは、ユリアナちゃんに近づくんじゃない!」

 ちょっと、油断したらコイツ。

 俺に注意されたサニーがユリアナちゃんから離れた。

 全く。


「ラージャ様、僕、王子様を見るの初めてです」

「カイン、我も初めてだから一緒に観るのじゃ」

 ニコニコしてラージャの機嫌がいいな。

 カインとクアラは、ラージャの着物の裾を持って地面につかないようにしていた。

 ラージャの面倒をよく見てくれているので後でお菓子を買ってやるからな。


「ルーカス王子と会うのも久しぶりだな。

 フフフ……」

 葉巻を咥えるボリス。

 どっからどうみてもマフィアだ。

 オールストレーム家の使用人達がビビっている。

 マフィアを知らなくてもサングラスしてるし威圧的な感じを受けるのだろう。


「と、兎に角、カズヤさん達を屋敷の中へ! あんなの王子様にみせられ…」

 慌てた様子でヒルダが屋敷の玄関を指差しながら言っ、

「奥様ーー! 旦那様と王子様御一行がまいられました!」

 使用人の声がした。

 あっ! ホントだ。

 オスモ達の姿が向こうに見えてんじゃん。



「どうしましょう?! 絶対、怒られるわ!

 カズヤさん、兎に角、屋敷の中へ!」

 ヒルダが俺を引っ張って、なんなの?

「いや、もう王子様が到着するのに、なにしてるの?」

 言ってるのに、まだ引っ張ってるし。

 極度の緊張から気が動転してんのかよ?

 兎に角、まずは慌ててるヒルダを落ち着かせないと!

「お母さん、しっかりして下さい!

 もう王子様達が来るんですからね、落ち着いて!

 ほら、オスモが直ぐそこまで来てますから!」

 優しい俺がオスモを指差して教えてあげた。


 一生懸命俺を引っ張ってたヒルダが振り返ると、ずいぶん近くまで王子一行が来ていた。 

 青ざめてるヒルダ。


「いい、カズヤさん。

 兎に角、静かに大人しくね! お願いよ」

 青い顔したヒルダに言われた。

 王子を見てみたかっただけだから良いんですけど……


「おおーい! オスモーー! お疲れーー!」

 俺は、遠くにいるオスモに大声で言うと手を振った。

 ん?

 オスモがエルモに何か話してる。


「あれ? おい、オスモが走ってくるぞ?」

「きっと、出迎えに我等が来てくれたと喜んでおるのじゃ」

「だよな、それ以外考えられん」

 全く、そんなに心細かったのかオスモ。

 しょうがない奴だな。


「オスモーー、俺が来てやったから安心しろーー」


ダダダダダダ……


バッ!


 俺の目の前にきたオスモがジャンプした。

 何を……


「来るんじゃないと言っただろうが、カズヤーー!」

「ぐあっ!」

 オスモにタックルされた。

 なんなの?!


「来てしまったものは仕方ない。

 いいか、喋るな。

 兎に角、喋るな。

 死んでも喋るんじゃない!」

 凄い剣幕?!

「う、うん。 わかった」

 迫力におされ答える。

「よーーし! そんじゃ、お前達は、そっちの端で大人しくしとけよ!

 さあ、早く行け!」 

「わ、解ったよ。

 おい、みんな、そっちに移動だ」

 俺達はヘコヘコと指定された場所に移動する。

 良かれと思ってきてやったのに、この仕打ち。

 別に、いいけど、ね。


 そうこうしてる内にオールストレームホテル前に王子御一行様が到着した。


 俺達はというと、使用人達が並んでいる端の方に行くように言われたので、大人しくそこにかたまって王子達一行を眺める。

 さあて、王子ってのは、どんな奴なんでしょうかね? 

なんか歓迎されなかったが、いよいよ、王子に会える。

やっぱり、タイツに提灯みたいなの履いて、頭に王冠のせてるのかしら?

変な恰好してても笑わないようにしなきゃな。

って事で、次回も、乞うご期待!

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