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地獄の使者はモテたいです!  作者: カネキ
act.8 エルヴァスティ王国

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第70話 帰ってきた

家出したライネの機嫌も良くなった。

帰路についた俺達。

早く帰ってゆっくりイチャイチャしたいもんだ。

オールストレーム領、カズヤ達の家――


 食堂室。

 カズヤの嫁、ライネの家族であるオールストレーム家の面々が昼食を取りにやって来た。

 ライネの父で領主のオスモ、母親のヒルダ、妹のユリアナである。

 慣れた感じで三人はトレイを持つと、厨房のカウンターに向かった。


「ほう、今日は、丼物か。 この前の天丼も旨かったぞ」

「オスモ様、ありがとうございます」

 顔なじみの厨房のスタッフに声をかけるオスモ。

 厨房にいるのは、人間、オーク、ゴブリン、エルフ、様々な種族の者だが、オスモは気にする素振りを見せない。

 というか、気にしていない。

 もう慣れているのだ。


 カウンターにトレイを置き、横に移動すると調理スタッフが差し出されたトレイに順々に料理を乗せていく。

 カウンターの端までいくと全ての料理が乗せ終わる。

 トレイを持って、面々はテーブルに着く。


 テーブルに置いてあるお茶の入ったポットを手に取ったヒルダ。

「ほら、ユリアナ、湯飲み寄こして」

 ユリアナが自分のとオスモ、ヒルダの湯飲みを集めて差し出すと、ヒルダはお茶を注いでいく。

 ソレをユリアナは、三人のトレイに乗せていった。


「おお、ありがとう、ユリアナ。

 ところで、カズヤ達は、ちゃんとライネを見つけられたかな?」

 丼片手にオスモがヒルダに聞いた。

 今日のランチは、カツ丼。

 肉厚の豚肉や卵は、ここオールストレーム領産。

 カズヤの進言により、ここオールストレーム領では、畜産にも力を入れていた。

 オーク達は、愛情たっぷりに豚の飼育をしてくれている。 


「どうでしょうかね? ボリスさんも一緒だし、大丈夫じゃない?」

 お茶を汲み終えたヒルダは席に着きながら答えると、付け合わせのお新香を齧る。

「ホント、このお新香って美味しいわよね」

 ポリポリと嬉しそうにヒルダは、箸を多めにお新香を乗せてくれた皿に伸ばす。

 

「もう、お父様もお母様も、ライネお姉様の事が心配じゃないの?」

 ライネの妹であるユリアナが声を上げたが、

「ライネはもう大人なんだし、嫁いだんだから、そんなに心配しなくても大丈夫よ」

 ヒルダに言われてしまった。


「モグモグ… そ。 心配ないって。

 あのカズヤは、あんなどうしようもない男だけど、モグモグ… ライネを大事にしてくれてるからな、必死に探してくれるよ」

 カツ丼に舌鼓をうちつつ言ったオスモ。

 ユリアナは、両親が心配してないのに自分一人が心配しているのもバカバカしくなってきた。


 ……その時である。


「オスモ様! 旦那様達が帰ってまいりましたーー!」

 食堂に執事のテイカーが飛び込んできた!


「お父様!」

 ユリアナが、オスモに、

「な、言っただろ? 心配ないって、モグモグ…」

 カツ丼を食う手を止めないオスモ。

「そうよ、モグモグ… そんな事よりユリアナ、ちゃんとご飯食べちゃいなさい。 モグモグ…」

 ヒルダに注意されたユリアナだが、食堂室を出て行ったテイカーの後を追って行った。

・

・

・



カズヤ達の家、車庫――


 白いトラックが車庫に駐車された。



「よっしゃ! 到着、お疲れさん!」

 俺は、嫁達に言った。

 数日家を空けただけだが、やっぱ自宅は落ち着くわい。


「ラージャも、カインとクアラに早く会いたかったろう?」

 ニコニコしてラージャに言ってあげた。

 ん?

「お、おう。 そ、そうじゃな」

 挙動不審。

 どうした?

 ……ま、いっか。


「そんじゃ、みんなで風呂でも入って旅の疲れを癒そうぜ、みんな!」

 目尻の下がった俺は、ライネ達に言った。

「もう、エッチなんだから」

 ライネが顔を赤くしている。

「俺は純粋に疲れを癒したいだけだよ、ウヒヒ」

 そう言って、いそいそとトラックを降りた。

 ああ、楽しみだぁ!


「おい、ココがあんたの家なのか?」

 声?


 あ。

 ああぁぁ……


「……ああ、そうだよ、サニー」

 忘れてたよ、コイツを連れてきたんだった。

 サニーが荷台から降りていた。


「しっかし、すっごい家だな…… どんだけ悪事を働いたら……」

「おい、ちょっと待て、人聞きの悪い事を言うんじゃないよ。

 悪事なんて働いてないぞ俺は。 真っ当に働いた結果だ、結果!」

 失礼な奴だな。

「あっ、そうだ」

 サニーが荷台に戻った。

「お前…… 人の話をちゃんと聞いてるのか?」

 サニーを追って荷台に上る。

 ん?

 その箱……


「おーーい、着いたぞ」

 サニーが言いながら箱を開けて…… 何してるの?


「ちょっと、おじさん、ラージャ様に怒られるから!」

「そうだよ、僕達隠れてるんだから」


 箱から声が聞こえた。

 そして、サニーが慌てて箱の蓋を閉じた。


「……そうか。

 そういや、途中の村で泊まった時に、ラージャがソワソワと宿を抜け出てたな」

 俺は呟いて、荷台から降りた。

 すると、ラージャ、ライネ、ペトリ、ボリス、ミカエルが俺達を待っていた。


「ラージャ、カインとクアラは元気かな?」

「そ、それは、多分元気なのじゃ。

 あーー、早く会いたいのじゃ、ヒューー、ヒューー」

 白々しい事を言って口笛を……

「荷台の箱に入れられて可哀想だから、早く出してやれ」

「ブッ!」

 ラージャが唾と鼻水を飛ばして驚いた。


「お、お前、知ってて! 性格悪いのじゃ!」

 俺に悪態をつきつつラージャがいそいそと荷台に飛び乗っていった。


「なあ、俺のせいでバレたけど、あの子達の事を叱らないでやってくれよ」

 サニーが言ってきたが、怒るかよ。

「心配すんな、そんな事でいちいち怒ってたらやってけないよ」

「あの子達とラージャちゃんって、どういう?」

 そりゃ、気になるよな、教えてやるか。

「ああ、愛人という設定らしい」

「あ、愛人?! あんたの嫁じゃないの? ラージャちゃん。

 いや、それより愛人って…… って事は、やっぱり」

 サニーが何か考えているようだが、どうせゲスな事を考えているのだろう。

「多分、お前が考えているような行為はないぞ。

 アレは、ラージャの身の回りの世話してるだけだから。

 まあ、ラージャは俺と同じで、可愛いのが好きだからちょっとくらい触ったりキスしたりするけどね」 

「それは、残念…… いや、そうだよね」

 やっぱり、サニーは、変な事を考えていたようだ。



「カズヤ様ーー! おかえりなさいませーー!」

「ライネお姉様ーー!」

 テイカーとユリアナちゃんだ!


「おーー! ただいまーー!」

 俺は、二人に手を振った。

・

・

・



カズヤの家、会議室――


 俺達家族、サニー、テイカー、カインとクアラ、オールストレーム家のオスモ、ヒルダ、ユリアナちゃんに現当主である親友のエルモ、それから幹部、オーガの弥助とアキナ、ゴブリンのゴーブ、オークの金髪豚野郎がこの部屋にいる。


「……って事で、コレが、ライネを救ってくれた、サニーだ。

 ちなみにサニーは、俺と同じ国の出身なので、宜しく」

 俺は、みんなにサニーを紹介した。

 サニーは、弥助達を見て戸惑っているようだ。

 気にするな、すぐ慣れる。


「……最後に、アレが金髪豚野郎ね。 侮蔑の言葉じゃなくて、名前だから。

 そんじゃ、サニー、自己紹介して」

 サニーにこの部屋に集まった俺の大事な仲間を紹介した俺は挨拶するよう促した。

 

「皆さん、サニーです。

 年齢、31歳。

 日本では、私立探偵をしていましたが、こちらでは同郷のカズヤさんを手伝いたいと思います」

 サニーが自己紹介していた。

 やっぱ年上か。

「てか、探偵をしていたのか?

 そんな目立つような恰好で?

 上半身ほぼ裸じゃん!」

「いやぁ、ある組織に殴り込みに行って、敵を全員撲殺した帰りだったもので」

 照れながらサニーが言った。

「いや、私立探偵ってそんな事までするのか? 撲殺って……」

 少しというか、引いた。


「何を言ってるのかさっぱりだけど、宜しくね!」

 アキナが大きな胸を揺らしてサニーに声をかけた。

 素晴らしい胸。 一回で良いから触らせて欲しいものだ。

 嫁の手前、俺は顔に出さない。


「はい、宜しくお願いします」

 サニーが淡々と答えた。

 ロリコンだから、巨乳に興味がないのだろう。

 変な奴だ、全く。

 そして、15歳のユリアナちゃんをあんまり見るんじゃない。


「カズヤ様、サニーさんは、どういった位置付けになるんでしょうか?」

 弥助が立ち上がって聞いてきた。

 序列的な事か?

 そういうのにこだわるね、弥助は。

「この街の運営とかは、エルモとか弥助、お前達に任せてるから、サニーの事は気にすんな。

 普通に友人として接してやってくれたら、俺は嬉しい」

 俺の言葉に安堵したのは、弥助だけじゃなく幹部連中や、オールストレーム家を含むみんなだった。

 そっか、俺が思ってるより、みんな心配してたんだな。


「そんじゃ、サニーの紹介も済んだことだし、解散。

 わざわざ皆に集まってもらって悪いね。

 それから、俺は、この地の発展に協力してくけどさ、この街も、このオールストレーム領も、俺の物じゃないからな。

 みんなのオールストレーム領だ。

 だから、あんまり俺の事なんて気にしないでね。

 俺は、ここにいる嫁さん達とずっと仲良く幸せに暮らしていきたいから頑張ってるだけなんだから」

 俺の本心。

 あんまり頼られても困るし、俺が居なくなってもやってけないと意味が無いからな。

 そのつもりで、街の事に口も手も余り出さないようにしてきたから、ちゃんと解ってくれてると思うけど……


 兎に角、俺は、嫁さんと仲良く日々を過ごしたいだけだ。


バァーーン!


 突然、会議室のドアが開いて入ってきたのは、フジノ街のある山の麓の街の職員、エルモの部下だ。

「エルモ様! 下の街にルーカス王子が!」

 ルーカス王子?

「何ぃ!」

 エルモが驚いている。

 どうした?


「な、なあ、ルーカス王子って?」

 俺は、オスモに聞いた。

 知らないから聞いたのに、オスモが俺を驚いた顔で見ている。


「おまっ、ルーカス王子つったら、この国の王、マテウス・エルヴァスティ陛下の息子に決まってんじゃねぇか!」

 怒られた。

 知らないよ、そんな人。

帰ってきたばかりなのに、この国の王子様がオールストレーム領にやって来たらしい。

王子の癖に暇なのか?

アポなしで来るなんて、常識がない奴だぜ。

って事で、次回も、乞うご期待!

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