第51話 フジノ町
少し時間がたちました。
俺達フジノ村の住民は皆働き者、死に物狂いで村を発展させてきたのだ。
カズヤがオールストレーム領にやってきて、1年が過ぎた……
オールストレーム領主、ライネの実家――
ライネの父親であるオスモ・オールストレーム男爵の悩みは、各地から流入してきている領民の事である。
税収が増える分には良いのだが、急激な人口増加による治安の悪化などを懸念し息子のエルモと対策を練っていた。
「エルモ、それで人口増加の理由は解った?」
オスモは息子のエルモに人口の増加の訳を調査させていた。
聞かれたエルモは首を振る。
「父さん、ハッキリした事は解らない。
だけど、数か月前にこの町を訪れる商人の数が急激に増えてきてからだよね、人口が増えたの」
「そうだよ、それ! なんで?
そんな商人が仕入れにくるような特産物なんてないぞ?
何処にでもある田舎の小規模な領地だぞ? なんでだよ?」
オスモの言葉にエルモは情けないなと思った。
「父さんが自分の領地を的確に理解しているのは分かったけど、悲しくなるからあんまり言わないで」
「それに、町にあるアレなんだ?」
「アレって何ですか?」
「往来をウロチョロ走ってる車輪がついたアレだよ」
「ああ、自転車ですか? 高いですけど最近流行ってるみたいですね。
先日ミカエルが買ったって自慢してましたよ」
「その自転車っての高いのによく売れてるな?」
「分割支払いも出来るそうですし、住民の収入が増えてますからね」
「え? そうなの?」
オスモは初耳とばかりにエルモに聞いたオスモ。
「ええ、カズヤが工場建設で建設作業員として沢山雇ってくれてますから」
「……」
目を見開きエルモを見ているオスモ。
「エルモ、何処に工場を作ってんだ?
てか、ちゃんと報告しろよ、お前!
あのバカは、なんでそんなに金を持っているんだ?!」
「ああ、手広く商売してるみたいですし、王都のイルボ商会とつながりがあるみたいですよ?」
「イルボ商会って、あの大店の? 王宮にも商品を卸してるあのイルボ商会か?
なんで?! 成金クソ野郎カズヤが、なんでだ!」
「凄い言いようだね、父さん」
「ライネに女の恰好をさせて嫁にしたクソ野郎じゃねぇか!」
怒鳴るオスモをヤレヤレまた始まったとエルモは呆れた。
「おい、エルモ。
人口増えたのカズヤのせいだろう? 理由ハッキリしてんじゃん!
工場とか建ててるから建設作業員とか景気良いからじゃん!」
「まぁ、そうなりますかね」
「そうなりますかねって、おま、お前知ってて黙ってたなこの野郎!」
興奮するオスモだが、エルモは溜息をついてソファーに腰かけた。
「父さんに言ったら怒るでしょ? 税収が上がってるから良いじゃないですか?
そのおかげで僕達の食卓も豊かになったじゃないですか? それに味も良いでしょ?」
「……確かに。 いやいやいやいや!
なんかムカつく! カズヤのおかげで我が家が少しばかり豊かになったかも知れんが、料理の味の向上は使用人の頑張りでだ!
決してカズヤのおかげでは無い!」
エルモは、オスモの様子からカズヤが食材を届けてくれているとは言えなかった。
「でも、確かに人口増加による治安の悪化がすこしみられるようになってきましたね」
エルモの報告に嬉しそうな顔をするオスモ。
領主として治安が悪くなってきたとの報告を受けて嬉しそうなのはどうかと思うが……
「だろ! ほんっと、あのカズヤってのはロクな事をしない!」
「そうですね、そしたら今度カズヤが来た時にでも治安の事を相談してみますよ」
そう言って立ち上がるエルモ。
「おい、ちょっと待て。
今度カズヤが来た時って? 何度か来てんの? この屋敷に?」
知らない内にカズヤが家に来ていた事実に驚くオスモ。
「ええ、父さんに迷惑がかからないようにカズヤも気を使っていたみたいですよ。
自分を見たら父さんが良い思いしないだろうって。
カズヤと俺は同じ年齢だからか、僕には話やすいんでしょうね」
オスモはカズヤも報告していなかったエルモにも腹がたった。
そして、喚き散らすオスモをよそに、エルモは部屋を出て行った。
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フジノ村――
この地に移住してから1年の月日が過ぎ、新しい住民も増えてきた。
新しく住民になるには弥助達を入れた俺達の面談で決めるのだが、合格した獣人と呼ばれるケモ耳や人間、魔物などが増えたのだ。
沢山の種族が混在している村だが、みんな秩序を守ってくれてるようで大きなトラブルなくやってこれている。
ボリス達が治安維持の為に頑張っている成果だろう。
毎日、どこかで建物が建っていき村の様相がどんどん変わっていく姿を見ると順調に開拓が進み発展していってるのが実感できた。
人口はまだまだ少ないが、村の建物は山の麓の町に比べても負けていない。
むしろ、勝ってるくらいだ。
フジノ村、村役場――
「もう! やる事ばっか増えて楽しくないよ!」
村長執務室で俺は、俺の決裁を待つ書類の山に向かって叫んだ。
「仕方ないのじゃ! 我も嫌だけど頑張って処理してるのに泣き言をいうな! なのじゃ!」
慰めて欲しくて言ったのに、ラージャに怒られた。
村が発展していくのは楽しいのだが、やらないといけない事がどんどん増えて困る。
役所を作ったので仕事が減ったけど決裁がどんどんやってくるんだよ。
「……そうだ」
俺は、良い事を思いついた。
仕事を誰かに任せれば良いんだ!
「あのな、ラージャ」
「ダメなのじゃ!」
ラージャが俺を見ずに言った。
こ、この野郎……
「まだ、何も言ってない!」
「誰かに仕事を押し付けようと言うのじゃろ? お前はいつもそれなのじゃ。
つまらん事を言ってないで、手を動かすのじゃ」
うううぅぅぅ。 正論。
「確かに、コイツが終わらない事には遊べない。 頑張ろう」
諦めた俺。
大人しく書類にハンコを押していく事にした。
まぁ、仕事は午前中で終わる。
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「終わったぁーー!」
ハンコを押しまくって仕事を終了させた俺は優秀。
ふと横を見ると、ラージャが携帯ゲーム機で遊んでいた。
「……コイツ」
先に終わってたなら手伝ってくれても良いのに……
嫁にしたらこき使えると思ったのに、全然だよ、全く。
ちなみに俺はラージャとは肉体関係などない。
夫婦って事にしといた方が俺にとってもラージャにとっても都合が良いから結婚しているだけだ。
俺はロリコンじゃないし。
まぁ、どうしてもって言うなら、抱いてやってもいいがな。
「フフフ……」
「なんじゃ、気持ち悪い笑い声をだして?
どうせ、ろくでもない事でも考えてたのじゃろ?」
「い、いえ、そんな事無いです」
(クソッ、お前は、エスパーか!)
ガチャッ!
ドアが開いたと思ったら、ライネとペトリが部屋に入ってきた。
12時が過ぎたら来るように言ってたからね。
「あれ? ボリスは?」
「ボリスは、訓練があるから来れないって」
ペトリが教えてくれた。
久々に家族みんなでライネの実家に行こうと思ったんだけど。
「しょうがないか、仕事は大事だからな。
今日は、久々にライネの実家に皆で行こうと思ったが俺達だけで行くか」
「僕一人でも良いのに」
申し訳なさそうにライネが言うが、いらない気は使わない方が楽だぞ。
「ライネ、一緒に居たいから行く。 ソレだけの事だから気にするな」
「そうだよライネ。
俺だって皆と一緒がいいんだよ」
ペトリも優しい奴だ。
「それとな、配送センターの建築の進捗を見に行きたいからな」
「なんでワザワザ下の町に作るのじゃ?」
「そりゃ、下の町も儲けさせなきゃなんないもん。
ライネの父さんとの約束だからな、オールストレーム領を発展させなきゃ」
「ああ、そんな事も言ってたのじゃ」
ラージャが理解してくれたようで良かった。
「みんなお昼まだだろ? 村の食堂で飯食ってから家に寄ってライネの実家に行こうぜ」
自転車で通勤しているから、家にトラックを取りに戻るのだ。
大分自動車の運転に慣れた俺は、ライネの家に今日もトラックで行くつもり。
嫁達を何回も俺の運転するトラックに乗せてるし慣れたもんですよ。
役場を出ると、相変わらず往来に人が多い。
村の人口は3,000人そこそこだが、その他に各地からこの世界では貴重な物をフジノ村に買い付けに来ている人が沢山いる。
買い付けに来てるのは、個人の行商人とかではなく各地の大店の商会の人達だ。
大口の案件を主に扱う者でないとこの村への入村証を発行しないからな。
行商人とかは俺が卸してる商品を下の町に買い付けに来てるみたい。
村が発展し住民の所得が増えたので、住民税とは別に所得に応じた税を少しかける事にしたが、どんどん人が増えていく。
税収が上がったのでどんどん開発していった結果がこれだ。
整備された道を自転車や馬車が走り、店や高層建物が並ぶ場所を歩いていると、村だというのを忘れてしまう。
完全に町だろコレ。
「フジノ町だな、こりゃ」
ライネの実家に遊びに行く。
エルモが何か話があるって言ってたが、なんだろう?
兎に角、お父様に出会わないように今回も気をつけよう。
って事で、次回も、乞うご期待!




