第40話 ライネの家に行こう その2
綺麗な道に出たら、アレを使おう。
そう思いながら俺は山を下った。
俺達の拠点を出発し山を下りた。
途中までオーク達が道を作ってくれたので思いのほか早く下山する事が出来た。
「カズヤさん、あの建物が僕の家です!」
ライネの指し示した方向にあったのは、町を見下ろすように建てられた大きな洋館。
アレがこの地を治める領主の家、すなわちライネの実家ですか?
「そうか、俺達の拠点の山を下ったとこにライネの家があったんだな」
「ですよ、オールストレーム家の所有の山ですから、領民は滅多に入りません」
そういう事だったのか。
てっきり呪われた山とか何かしらの事情があるものだと思っていた。
まあ、仮に呪いなり化け物なりの理由だったとしても、俺達に迷惑がかからなければどうでも良いと思っていたがね。 面倒な事が無いなら安心したよ。
「ライネ、近いから里帰りも直ぐに出来るし実家が近いと心強いだろう?」
「そうかもしれませんけど、……騎士団を相談なしに辞めちゃったから勘当されちゃうかも」
「そんな事より男の恋人が出来たと言ったらそうなるかもなのじゃ」
ラージャの言葉を聞いてライネが暗い顔になった。
ラージャの配慮が足りないだけで、ライネは何一つ悪くない。
よし! 俺が安心させてやるか!
「俺の事で何か言われたり怒られても心配するな!
俺がそばにいる! なにせ俺は、ライネを愛してるからな!」
「……カズヤさん、嬉しい!」
ライネが俺に抱きついてきた。
うん。
「これが愛の力だ!」
俺もライネを強く抱きしめる。
そして、ラージャ。 その白けた顔をヤメロ。
「そんじゃ、開けた道に出たからな、自転車を出すか!」
「自転車?」
ライネがキョトンとしている。
「乗り物だよ、乗り物。
自分の足で漕いで進む乗り物!」
「は、はあ」
ライネの返事を聞く限り絶対伝わってないな。
「見た方が早い。
こっからライネの家が見えるけど少し距離があるだろ?
自転車に乗って行ったら歩いていくより楽なんだぞ!
そんじゃ、ラージャ頼む!」
「よっしゃ! 任せろなのじゃ!」
ラージャが空間収納から自転車を三台出してくれた。
俺とライネのはマウンテンバイク。
ラージャのは、子供用で、何かのアニメのキャラクターが書かれたピンク基調の自転車だ。
「何コレ?!」
フフフ、ライネが驚いている。
ここは一つ俺が颯爽と自転車を乗り回してやろう。
「ライネは、初めて見るからな、これは自転車といって」
「見るのじゃライネ!」
チリン、チリン!
ラージャが颯爽とアニメキャラクターの描かれた自転車に乗ってライネの周りを得意げに運転した。
その得意げな顔が何気にムカつく。
だが、ライネへの説明になったので良しとするか。
本来ならば俺がライネの前で自電車に乗ってカッコつけたかったのだがな。
「凄い!」
ライネがラージャに言ったら、チリンチリンとベルを鳴らして答えやがった。
そんなラージャにイラっとした。
喋れば良いのに。
「アレは無視して構わないから、ライネも自転車に乗ってみな。
俺が支えててやるから、ほら!」
「はい!」
ライネが自転車にまたがった。
俺は簡単にブレーキとペダルを踏んで進む事を説明し、ライネの自転車を後ろから支えた。
サドルに乗ったライネの丸いお尻。
サドルとお尻の間に手を入れたら、幸せなんじゃないだろうか?
ちょっとムラムラきたが、待て待て俺。
今は自転車教習しないといけないじゃないか。
俺は、しっかり者なので我慢。
正に仕事の鬼と言えるだろう。
ライネが自転車にちゃんと乗れるようになるまで我慢、我慢。
「そんじゃ、後ろ押さえてるから漕いでみて!」
「は、はい」
フラフラとライネの自転車が進む。
ちょっとふらつきがあるが、結構バランスが取れてるようだ。
「カズヤさん! ちゃんと押さえてくれてますか?」
「ああ、ちゃんと押さえてる! だから前見て運転!
ライネ、結構バランス取れてる上手いぞ!」
「そうですか? 難しいです! カズヤさん達、コレに乗れるんだから凄いですよ」
そう言ったライネだが、ホントにバランスが取れてる気がする。
少し手を離してみるか?
「ちゃんと持ってます?」
「おう、しっかり持ってるから頑張れ」
完全に手を離して答えた。
手を離してみたが、ライネはバランスを取ってフラフラしながらもちゃんと進んでいた。
「凄いな! 一発で乗れるなんて!」
「え? アレッ?! カズヤさん? 僕、乗れてる?!」
ライネが驚きながらもフラフラと一人で自転車に乗っていた。
俺の恋人は凄い奴だぜ!
チリン、チリン
ラージャがゴブ太郎に自転車を押させて颯爽とライネを追い越しベルを鳴らした。
「ラージャめ、楽しやがって!」
俺も自転車に乗ってラージャとライネを追った。
「ライネ、凄いよお前! いきなり自転車に乗れるなんて!」
「そ、そうかな?」
照れてるライネが可愛かった。
チリン、チリン
先行するラージャがベルを鳴らし、早く来いという事だろうか?
「ライネ、スピード出してみようか!」
「ま、待ってください、カズヤさん」
ライネがしっかりついてきている。
ホントに凄いな。
やっぱライネは乗馬が出来るしバランス感覚が優れているのだろう。
「無理しないでついて来いよ」
結構なスピードで先行してるラージャに向かって自転車を漕いだ。
「おい、ゴブ太郎が可哀想だろう?」
追いつき先行するラージャに注意すると、
「カズヤ様、押して走ると俺も楽ですから、大丈夫です!」
健気にもゴブ太郎が言った。
ゴブ太郎にも自転車を買ってやれば良かったな。
「ほら、ゴブ太郎もそう言ってるのじゃ!
ゴブ太郎、疲れたら後ろに乗って大丈夫じゃからな!」
「ラージャ様ありがとうございます!」
「……」
二人が良いのなら別にいいか。
「カズヤさん、自転車って便利ですね!」
ライネが追いついてきた。
俺達は、結構スピードを上げてライネの実家に向かった。
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ライネの実家に到着した。
正面玄関が見える。
あの中にライネの家族が居るのだろうか?
「歩くより楽に来れたな」
結構疲れたけど。
「自転車って便利ですね!」
すっかり自転車に慣れた様子のライネが言ったけど、やっぱ車の運転を練習して乗れるようになった方が便利だなと思った。
帰りは登りだし……
チリン、チリン
ベルの音が聞こえたと思ったら俺達に遅れてラージャが到着した。
「楽ちんだったのじゃ」
「お前は、ゴブ太郎に押してもらってたからな。
疲れたろ? ゴブ太郎」
「ハァ、ハァ、いえ」
ゴブ太郎が結構疲れてる。
「ほれ、ゴブ太郎、褒美なのじゃ」
ラージャが、ジュースをゴブ太郎にあげていた。
「ありがとうございます!」
嬉しそうにジュースを受け取り飲むゴブ太郎。
俺は、申し訳ない気持ちでいっぱいだよ。
「さてと、ラージャ! 自転車を仕舞ってくれ。
そして、手土産を出してくれ!」
服の乱れを直しラージャに言った。
「うむ!」
ラージャから手土産として購入していた24個入りのお饅頭の箱を受け取り、玄関へと向かう。
ライネは、この家の三男坊で上に兄貴が二人。
後、妹が一人いるって言ってたな。
可愛いのだろうか?
いや、こんな時に俺は何を考えているんだ。
父親は厳しい人で母親は優しいって言ってたけど…… 歓迎されないだろうな。
「はぁ、ドキドキする」
これから、ライネのご家族に会うんだと思うと緊張してきたのだ。
サイクリングを楽しみつつ到着した。
とうとうライネの実家に到着か……
優しいご家族だと嬉しいな!
って事で、次回も、乞うご期待!




