第14話 今日から冒険者
技量を見るってテストで俺は冒険者を圧倒して勝った。
凄いぜ俺!
……普通に考えて俺が勝てる訳がない。
何せ、チート無しなんだから。
多分、あの冒険者が勝たせてくれたんだ。
裸も見せてくれたし、良い人だ。
冒険者ギルド 受付カウンター――
「はい、二人分で20ゴールドね」
俺は、カトリーナさんに冒険者登録費用を支払った。
これで、俺とラージャは冒険者か。
なんだかんだ言って、金を支払ってるから、試験も形式的なもんで手を抜いてくれたのだろう。
それに、成人女性の裸を見れたし、今日はぶらりと立ち寄って良かったな。
うん。
しみじみと自身の幸運に感謝しつつ待っていると、
「はい、それでは、こちらが冒険者登録証になります。
コレは、身分証明書にもなりますので、無くさないようにしてくださいね」
カトリーナさんから冒険者登録証を2枚受け取り、ラージャに1枚渡した。
運転免許証みたいなカードサイズのプレートだな。
「名前と…… ランクなのか? Fって書いてある」
「我のも同じなのじゃ」
ああ、依頼を達成していくとランクが上がっていくって奴だな。
「今は、お二人ともFランクですので、受けられる仕事も制限されていますが、沢山の依頼をこなすなどの実績を残せばランクが上がって受けられる依頼の幅も広がりますよ。
高ランクの依頼は、難易度も高いですが高収入になりますので上を目指して頑張ってくださいね」
カトリーナさんが教えてくれたが、本で読んだのと大差ないな。
まぁ、無理せずゆっくりやろう。
俺とラージャが老後に困らないくらいに稼げたらいいや。
「わかりました。
カトリーナさん、ありがとうございます!
地道にゆっくり自分のやれる範囲で頑張りますので、宜しくお願いします」
一番下っ端だし、優先的に良い仕事を回して欲しい下心もあり、俺は丁寧に頭を下げてお願いした。
「はい、頑張ってくださいね」
うん。
カトリーナさんがニコニコしている。
可愛いな。
「おい、兄ちゃん、受付終わったなら退いてもらっていいか?」
後ろに人が並んでいた。
「それじゃ、カトリーナさん、あ・り・が・と・ね ☆」
俺は、カトリーナさんにウインクしたが、
「はい、次の方」
無視され…… いや、俺のウインクに気がつかなかったんだよ、きっと。
「さてと、仕事の邪魔しちゃ悪いしな、行こうかラージャ」
「買い食いして帰るのじゃ」
俺達は、冒険者ギルドを後にした。
「待ってくださぁーい! カズヤ様ぁ、ラージャ様ぁ!」
冒険者ギルドを出た所で俺達は、声をかけられた。
って、え?
「あ、あんたは?」
「C級冒険者のぉ、キーラですぅ、きゃはっ!」
さっき俺に向かって殺すとか言ってた冒険者の女性だった。
……痛い人なのかな?
「あ、ああ、さっきは、ありがとうございました」
どんな人であれ、試験に手心を加えてくれたんだから、お礼だけは言っておかないとな。
「カズヤ様ってぇ、お強いんですね。
わたしぃ、敗けちゃって、とぉーっても悲しかった。
もうすぐB級に上がるってぇ、言われて調子こいて天狗になってた自分が恥ずかしいですぅ」
「ああ、そうですか」
なんだろう、この人。
何が言いたいのだろう?
そう思ってると、俺の袖をラージャが引っ張ってきた。
なんだよ?
「キーラさん、ちょっと待ってね」
キーラから少し離れてラージャの目線に合わせた。
「おい、カズヤ。
乳オバケは、なんであんな喋り方なんじゃ?」
乳オバケ?
ああ、胸が凄く大きいからか?
「いや、知るかよ。
何が言いたいのかさっぱりだが、ああ言うのは、刺激すると何をしだすかわからんぞ!」
「えぇぇ…… どうするのじゃ?!」
俺が聞きたいよ。
キーラを見ると…… すっごい笑顔!
なんなの?
「と、兎に角、俺が話をしてくるから、危なかったら助けてくれよ」
「解ったのじゃ、乳オバケに気をつけるのじゃ」
「お待たせしました」
うおっ、デカッ!
さっきまで気にしてなかったのに、ラージャが乳オバケとか言うから、意識しちゃうじゃないか。
ユッサユッサしてるし……
「あのぉ、カズヤ様ってぇ、彼女さんとかぁいるんですかぁ?」
近いですよ。
ええと、彼女ですか。
彼女?!
「な、なんで、貴女にそんな事、事をですね……」
む、胸が。
「だってぇ、カズヤ様ってぇ、強いじゃないですかぁ、彼女になったら守ってくれるかなって」
「は? え? え?」
抱き着かれて言われた。
なんで?
でも…… やわらかい!
ボヨン、ボヨン、ボヨン。
あははは、あははは、あははは。
天国ですか?
そうですか?
キーラに抱き着かれているカズヤは、真っ赤になって恍惚の表情でいた。
だが、その様子を見て、
「はっ! カズヤが、乳オバケに締め殺されそうなのじゃ!」
ラージャは、慌てた!
そして、その様子を見て慌てる人物がいた!
物陰から覗いているボリス団長である。
「なんなの?! 冒険者ギルドからカズヤが出てきたと思ったら……
あの女、儂のカズヤに馴れ馴れしく!」
「カズヤ!」
ラージャが俺を呼んだ。
俺を助けようとしている。
だが!
「待て! ラージャ!」
俺は、ラージャを止めた。
何故なら、今、俺は最高に幸せだからだ!
「うぅーむ、まだ、大丈夫なのか? なのじゃ」
ハラハラして恍惚の表情のカズヤをみているラージャ。
「ねぇーーん、カズヤ様ぁ」
キーラが甘く俺に言ってくる。
もう、キーラが彼女で良いんじゃないか?
むしろ、ありがたいのでは?
美形だし、胸が大きいし……
「おい、カズヤ殿が、困っているではないか!」
へ?
「……ボリス団長?」
幸せの絶頂にいる俺にボリス団長が言ってきた。
なぜ、ここに!?
「おい、女!
儂は、エルヴァスティ王国騎士団団長のボリス・ベンディクスだ。
市中で、そのような卑猥な行動は、風紀を乱すものである!
ちょっと、騎士団詰所まで来い!」
ボリス団長が言ってキーラを俺から引き剥がした。
気持ちよかったのに……
はっ!
そう言う事か!
騎士団的に街中でこんな事をしてると不味い公序良俗に反する事なのだ!
迂闊な行動だったぜ。
「ボリス団長、すいません。
知らなかったもので、僕もちゃんと断ればよかったんです。
キーラさんを、責めないであげてください」
「……カズヤ様」
キーラは、カズヤを潤んだ瞳で見つめた。
「カズヤ…… いや、カズヤ殿は、優しいですね。
大丈夫ですよ、形式的なものですから、ちょっと注意するだけだ。
だから、心配しないでラージャと行きなさい」
ボリスは、カズヤを潤んだ瞳で見つめた。
俺は、ボリス団長に促され、ラージャとこの場を離れる事になった。
うーーん、残念なような、助かったような……
キ、キーラさんと付き合っちゃおうかな、俺。
ウフフ。
楽しくなってきたぞ。
「ラージャ、買い食いして帰ろうぜ」
「なんじゃ、カズヤ、ヘラヘラして気持ち悪い奴じゃの」
・
・
・
キーラを連れて歩くボリス団長。
「おい、おっさん!
何、余計な事してくれんだよ」
「……」
「ッチ! 何とか言えよ!
……てか、何処にむかってんだよ?」
騎士団詰所に向かっていたハズなのに?
キーラは、殺気を帯びた目をして聞いた。
「そうだな…… よし、この辺で良いだろう」
人気のない場所に着いたところでボリス団長が立ち止まる。
「……おっさん」
キーラは、腰に下げた剣に手をかけた。
「カズ君と、どんな関係なんだ?」
真剣な顔をして、キーラに聞いたボリス団長。
「へ?」
「いや、へ? じゃないよ。
明らかに困ってたでしょ? カズ君」
「……なに言ってんだ、おっさん?」
「だから、カズ君を困らせるなっていってるの!」
キーラは、その言葉にカチンときた。
「は? 困らせてないし。
私とカズヤ様の間の邪魔をしないでもらいたいわ
カズヤ様は、私の彼氏。 以上」
「はい、嘘です。
カズ君は、昨日、儂が連れてこの街に来たばかりです。
はい、虚言癖で拘束します」
ボリス団長に手を掴まれそうになったキーラだが、サッと身をかわす。
「ちょっと! 冒険者に手を出したら、ギルドが黙っちゃいないよ!」
各国各地に置かれた冒険者ギルドは、置かれた土地の国へ便宜を図る事もあるが、国の機関ではない独立機関なのである。
なので、エルヴァスティ王国騎士団が冒険者ギルドに指導監督する権限など無いのだ。
「この国の中の事は、王国の者が対処するのは当然!
てかさ、お前、カズ君に近づいた本当の目的はなんだ?」
ボリス団長は、剣に手をかけ聞いた。
「カズ君、カズ君て、カズヤ様を気軽に呼んでんじゃねぇーよ!
強い男に惚れたのが、悪い事かよ!」
キーラは、完全に剣を抜いた。
「おー、怖ッ。
カズ君の前で猫被りやがってよぉ、気色悪い」
ボリス団長も、剣を抜いて構えた。
一方その頃、モテモテ主人公だが――
甘味処にいた。
「あっ! こら、お前の方が大きいんだから、自分の食えよ!」
「食ったら、無くなるのじゃ!」
「無茶苦茶じゃねぇか!」
ワッフルみたいなお菓子を食べてるのだが、同じものを頼んだのに、ラージャが俺のを食おうとする!
「カズヤは、男の癖にケチだからモテないのじゃ!」
なんだと、この野郎。
「もう分けてやんないぞ!」
「う、嘘なのじゃ、カズヤはモテモテなのじゃ!」
「ホントか?」
「ホントなのじゃ!」
「よし! 食ってよし」
俺は、ラージャにお菓子をくれてやった。
そして、キーラとボリス団長――
夕焼け空の下、キーラとボリス団長が息遣い荒く大の字で寝ていた。
「や、やるな、お、おっさん」
「お、お前もな、ぼ、冒険者にしておくのが、お、惜しいぞ」
キーラが、少し笑って、体を起こした。
「ボリス団長、私は、キーラ。
冒険者のキーラだ、宜しくな。
でも、風紀を守る為に必死で動く騎士団がいるんだねこの街には。
見直したよ。
今度からは、カズヤ様と往来で抱き合ったりしないからね」
キーラはそう言ってボリス団長に言って、握手を求めた。
「ん? 風紀?
ああ、そんな事も言ってたな、儂。
どうでも良いのだが、儂はカズ君を愛してるから、抱き合うとかやめてね」
ボリス団長は、キーラと握手しながら言った。
「は?」
固まるキーラ。
「あ」
ボリス団長は、やっちゃったみたいな顔をした。
だが、次の瞬間ボリスは言った――
裸を見せてくれて試験で勝たせてくれたエロ、いや、優しい冒険者は、アレな人のようだ。
顔が綺麗なのに勿体ない。
そう思っている時、ボリス団長が現れた。
あの人には、あんまり会いたくないんだどな。
さてと、俺も冒険者! 明日からバリバリ頑張るぞ!




