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帰るまでが任務です(仮)  作者: ねむり亀
第3章
73/144

招待状

遅くなりましたm(__)m


    照和47年12月20日

 もうすぐクリスマスで、町中ジングルベルや赤鼻のトナカイのクリスマスソングが至るところで

賑やかに流れて、ややうるさく感じる大阪の師走

 10年前から本格的に始まった、大規模プロジェクト『星の揺りかご』と言われる銀河社グループ最後のプロジェクトは、第一期の終盤戦に差し掛かっていた。

 このプロジェクトは、発表された当時(照和37年4月1日)夢プロジェクト、もしくはエイプリルフールの戯言と認識されており、後に世界中に半年間出資や協賛を公募したが、賛同する企業に出資者は、イギリスの資産家の1人と、グループ企業以外ゼロに近いまま、公募は締め切られ世間的には、終わったプロジェクトだった。

 しかし、その後設立した宇宙開発財団「プロミス」が中心となり密やかに進めて行ったプロジェクトだった。


 「しかし、ここまでこう上手く進むとは思わなかったよ。」

幸一は各所から送られてくる報告書や資料を精査しながら、つぶやいた

「ホント、絶対に途中で頓挫して、資金援助も出来なくなって破綻すると思ってたのにね」

美由紀が、お茶を飲みつつ帳簿を見ていた。

政史が、疲れた様に肩を揉みながら

「これも、明美の技術集団のせいかな?」

「いやいや、あれは技術集団というより、ある種の宗教集団だよ。教祖明美のね。」

と明美がいないことを良い事に、正が補正した。

明美と拓哉は現在、アラビア半島横断鉄道完成式典の為、アラブ首長国連邦に出張中だった。



 事の起こりは、照和36年7月20日、アメリカの有人宇宙ロケット『アポロ8』号の月面着陸だった。

その世紀の偉業をKSP社(旧九州航空発動機社)の社員食堂でテレビ放映を見ていた明美が

「先越されちゃったか。」

と軽く言った言葉だった。


 その言葉を聞いた何人かの社員達が明美の側に集まり、頭を下げ

「お嬢。申し訳ありません。アメリカのアポロ計画よりも早く、始動していながらロケットブースターを開発が遅れたために、月へお嬢が一番乗りすることが、出来なくなってしまいました。

このお詫びは、必ずやスペースコロニー?いいや!火星へのベース基地を我が社が、世界で一番最初に造って見せます。」

と、熱い想いを告げられ、明美を慕う技術集団が、宇宙開発技術の加速と言う暴走始めたことによるプロジェクトだった。


 この時代、核兵器の開発で冷戦状態のアメリカとソビエト連邦が、国家の威信を賭けて宇宙開発に力を注いでいた時代だった。

ソビエトが初の人工衛星を打ち上げ、続いてガガーリンが人類初有人宇宙飛行に成功し、

その後、レオーノフが人類初の宇宙遊泳をし、アメリカも負けじとガガーリンから遅れること10か月、アラン・シェパードが地球周回飛行に成功していた。


 巷では、近い将来に宇宙ステーションが建設され、月旅行が今の海外旅行のようになると、

色々な特集が組まれていた時代だった。


 しかし専門家達は、将来的には宇宙ステーションにスペースコロニーは造られるだろうが、

百年以上経たないと無理ではないか?と考えていた。


色々な問題は有るが、最大の問題は、スペースコロニーはおろか宇宙ステーションを建設するのに必要な資材を、どうやって宇宙に運ぶことができるか?だった。

 宇宙飛行士を月に送り込むだけで、莫大な費用に資材が必要となっているのに、それ以上に重い

建築資材を宇宙空間に送り込むのは、不可能ではないが、あまりにも現実的ではない。と、考えられていた。


 しかしその中、KSP社を中心に木津川重工業、Nk運送、播磨製鋼所、大阪精密電器、などがタッグを組み宇宙開発財団「プロミス」を立ち上げ、『星の揺りかご』プロジェクトがスタートしたのだった。

 プロジェクトにかかる開発費用は、当初賛同している企業からの提供される開発費で賄っていたので、巨額な費用の掛かる実験や開発が出来ず、プロジェクトの進行が危ぶまれた。


 このプロジェクトに、当初銀河社自体は絡んでなかったのだが、プロジェクト協賛の企業が、銀河社の傘下企業と言ってもいい各社だったので、各社との繋がりがある銀河社の社員がプロジェクト参加者の調整役に駆り出され、プロジェクト管理を任されていたのだった。

 その為、最初から気づいていた開発費用の不足という難問に対して、幸一達はこのプロジェクトに、銀河社の全資産を注ぎ込み、ワザと倒産させることにより、銀河社の解散及び幸一達の雲隠れに利用することにした。

さすがに、明治時代から何度も戸籍を偽装して、同じ場所に有り続けるのにも限界を感じており、

自分達のいつまで続くかわからない寿命に、気楽に向き合う為に宇宙へ旅に出ようと考えていた。


 開発費用は、銀河社社内ではS資金と呼ばれる、世界大恐慌以来増殖し続けている、さよりが世界中に分散保有する資産を充てることにした。

さより本人も、一体どれ程あるかわからない莫大な資金を吐き出してしまうには、莫大な予算が要求される宇宙開発は丁度良かったのである。

しかし、銀河社として提供する資金にしては莫大過ぎるので、資産家の投資という名目で開発費に組み込むことにした。

その為に、さよりが昔から付き合いのあるイギリス貴族の資産家に、プロジェクト賛同者として入ってもらったのであった。



 当時のアポロ計画にかかる費用の試算が、約250億ドルだったのに対して、当面の費用として、さよりが各社が集まる全体会議の場で

「ごめんね、すぐに動かせる手持ちの現金で、日本円が用意できなくて。今はこれだけしかないから」

と、会議室に積み上げたジュラルミンケースから出した金額が、500億ドルで周りが引いたのは、記憶に新しい。


 この潤沢な資金を元に開発が急加速していったのは、言うまでも無かった。


 ここで『星のゆりかご』プロジェクトの構想を説明

プロジェクトは第四期まであり


 第一期は基礎編としており、現在終盤にかかっているプロジェクトで

オマーンの首都マスカットからサウジアラビヤの第2の都市ジェッダまでアラビア半島を直線で結ぶ、高速鉄道及び道路の敷設と砂漠緑化事業に取り掛かっていた。


砂漠緑化事業は、木津川重工業の子会社の一つ、グリーンクラフト社が開発した、浜昼顔の遺伝子改良種である『サンドイーター(砂喰草)』と言う品種を使い、砂漠に緑の草原をもたらす取り組みである。

この『サンドイーター(砂喰い草)』は、水分を求め際限無く毛根や地下茎を伸ばし、砂嵐によって砂に埋もれても茎や葉を砂の上に出し、徐々に砂の動きを止めて生息範囲を拡大していく植物で、

乾燥や塩害にも耐性があり生命力が強く、砂漠の緑化作戦が本格的プロジェクトが執行する前からすでに、砂漠の中にあるオアシスで苗が植えられ実験が開始していた。


 順調に行けば、『サンドイーター(砂喰い草)』によって砂が動かなくなった砂漠に、新たな植物が根を下ろし

30年後にはサハラ砂漠が一面グリーンの絨毯が広がる草原風景になっているはずである。


 アラビア半島横断鉄道に横断道路及び宇宙ロケット発射基地に関しては、サウジアラビヤから

油田開発をしないのならば、と言う条件で全ての建設許可を取り付けていた。


 そして現在、KSP社が中心となり、アラビア半島横断鉄道と横断道路を使い、砂漠の真ん中に宇宙ロケット発射基地の建設が終盤になってきているのだった。

 打ち上げ基地が完成するまでに、日本国内でロケットブースターと機体の開発を平行して、行っていた。


第二期は、打ち上げ基地が完成次第始まる、宇宙開発ロケットの打ち上げである。


 打ち上げられるロケットには2種類あって

 第1弾は、木星の近くに有る小惑星群から建築資材にするための小惑星を持って帰る為の、

地球帰還型無人捕獲機と、彗星捕獲探査機を搭載した機体を打ち上げる。


 第2弾は、小型工業用スペースコロニーを建設する為に、地球から資材を送る為の機体の打ち上げである。

 これは、大型スペースコロニーの建築用資材の全てを地球で製作してから打ち上げるから、莫大な費用や物資が必要なのであって、最初から宇宙空間にあるものを利用すれば、コスト的には安くなる。

よって工場は宇宙空間に建設した方が、対コスト的に優位であるので、最初に作るスペースコロニーは、移民を考えない生産工場としての機能が有れば十分なので小型のコロニーとすれば、

地上からの打ち上げ物資も少なくて済み、永住しないので宇宙服を着ない生活空間も少なくて済むので

地球から余分な空気と水を持ち出さなくても済む

と言った、当時の世界中の宇宙関係者が「えっ???」と言った右斜め上の考えで始まったものである。


 宇宙空間において、建築資材の原料となる鉱石と共に必要なのが、生物が生きて行くために必要な酸素と水であった。


 コロニーやステーションの外見が完成したとしても、人類を初めとする生物が、そこに住むために必要な酸素を含んだ空気と水分は、いったいどこから持ってくる?

と言う重要な問題があったためである。


 地球から運ぶには、あまりにも馬鹿げた量で、それこそ実現不可能な量だった。

だったら、地球ではなく宇宙空間にある水を使えばいいのでは?。水を分解すれば酸素を供給できる。燃料としての水素も得られる。

じゃ、その水はどこにある?となったとき、色々案(小惑星に含まれる水分の回収、月面から回収等)が出たが、それよりはっきり水分を持っている天体を捕まえた方が早いとなり、

彗星の構成している主成分は水分であるから、それを捕獲して静止軌道上に浮かべ、必要な時に必要な量を使えばいいのでは?

 その為、過去に接近した彗星の軌道をすべて割出、未来予想軌道に待ち伏せして、捕獲するプランが発動された。


 小型工業用スペースコロニーが完成する予定の15年後に、無人捕獲機が小惑星を曳航して地球に帰還し

その小惑星を材料として小型工業用スペースコロニー内で、大型スペースコロニー建築用部品作成を始める迄が第二期


この第二期工程が『星のゆりかご』プロジェクトが、夢プロジェクトと呼ばれる最大の原因である。

あまりにも奇抜な小惑星捕獲や彗星捕獲計画だった為、説明会会場から罵声と嘲りの声が上がり、出席してた全ての企業や個人投資家が席を立った。


 それもそのはず、探査機が自動的に小惑星に近づき、自立制御によりワイヤーを小惑星に固定し、地球まで曳航してこれるとは、誰も思わなかったのである

 この時代、真空管全盛期でもあり、当たり前の話であるが、市場にはLSIはおろかICさえ出回ってなく、よくてトランジスタで組んだ回路があるぐらいだった時代に、宇宙船に機載できるような小型軽量で複雑なプログラムをこなせるコンピュータなぞ、影も形も無かった時代である。


当たり前の話、彗星が捕獲できなかった場合、巨大な建造物が宇宙空間に漂うだけの物と成り果て資金の回収どころか、賛同した企業の倒産もありうる大博打となりうるのだから、賛同する企業が居なかった理由でもある。



第三期は、外部が完成したスペースコロニーにエアーを充填し、生活できるように内装工事を完成させる

第四期は、移住開始

と言うプロジェクトで、全てのプロジェクトが終了するには、早くても40年以上かかると考えられている。


 不確定要素があまりにも多く、不安要素ばかり目立つ、投資した資金の配当還元は40年以上先のプロジェクト成功から2年後。

 と言うハイリスクしかない投資案件だった事と発表した日が4月1日だった為、どこの企業からも賛同を得ず、投資家からも相手にされなかった。

説明会に参加したわずかな企業や投資家さえ、呆れて帰ってしまう状態だった。


 それは、折り込み済みのKSP社。

 わざわざ協力の公募したのは、後で参加や投資をしたいと言ってくる相手に対して、断る口実の為だった。


KSP社は、アメリカのアポロ計画をにらみつつ、スペースコロニー計画を実行に移して行った。

たとえ、世界中から詐欺呼ばわれされようが構わず、ひたすら研究に没頭した。

それを関係各社が支え、技術的問題点を共に汗を流し、知恵を出しながら、一つ一つ解決して行った。


そして予定より早く計画から8年の歳月をかけ、アラビア半島横断鉄道が完成した。

その鉄道線は、全て複線の高架線で高架下は道路とパイプラインが作られており、アラビア半島の物流に、一石を投じることとなった。


 鉄道と道路ができると、沿線の砂漠の真ん中に巨大な打ち上げ基地の建設が始まった。

サウジアラビヤを始め、アラブ首長国連邦等の首長達は、約束通り口出しせず静観していたが、

地上の工事が進んでくると、アメリカとソビエトが国連の会議の場において、サウジアラビアに対して、建設中の施設は核開発施設ではないか?もしくは大量破壊兵器の実験場ではないか?と再三査察をさせろと、交渉してきた。


 理由は、アメリカやソビエトが写し出した衛星写真を見てみると、徐々にではあるが、砂漠にある同心円状の建築群が大きくなってきていることから、何らかの実験施設が作られていると判断したためである。

しかし、サウジアラビアは、

「中東における宇宙開発及び砂漠緑化に要する平和施設であり、我が国はすでに欧米諸国の植民地ではなく、独立した1国であるからして、欧米諸国に詳細を報告しなければならない案件でもなく、ましてや口出されることではない」

と言い切った。

 この意見は、国家間の宗教的対立も越えて、中東諸国全てに賛同を得ていた。

この発言をきっかけに、米ソと中東の亀裂が浮き彫りになり、先進国と産油国の冷ややかな睨み合いが始まった。


 これは、米ソの冷戦で二極化が進みつつあった世界情勢に、新たな局面を迎えた瞬間だった。


 しかもこの施設では、ロケット関係の施設以外に世界的に驚愕する施設も建設されていたので、内部査察は断固拒否するよう宇宙開発財団「プロミス」がサウジアラビアに要請をしていた。

サウジアラビヤだけでなく中東諸国は快くそれを承諾した。


 それは、砂漠緑化の成果を少しづつではあるが、実感してきているからである。

ここ最近は大規模な砂嵐の発生件数が減り、降水量も若干ではあるが増えつつあり、年平均気温もわずかに下がってきているのであった。

 空からの景色も砂一色の風景から、オアシスでもない処に緑の草が固まって生えている箇所が増えてきているからで、何かと経済制裁をちらつかせ、食糧供給を盾に言うことを聞かせようとする、米ソを筆頭とする欧米諸国のやり方に対し、日本企業の行ってくれている砂漠緑化は、将来の自国食料自給率向上に対する布石となり、恩義を感じささやかなお礼として、査察の拒否を行っているのであった。


 日本政府は、施設を建築している中心が日本企業集団ということもあり、宗教上の観点からもどちらとも蟠りが無く、皇族と王族という仲もあり、欧米と中東の橋渡し役になり、両者の溝を埋めるべく活動することになって行く。


そんな忙しい年の瀬に、ひとつの国際小包が銀河社に届いた。

「また、さより宛じゃないのか?」

「かめちゃん、受け取って来てくれないかなぁ?」

「わかりました。ちょっといってきます。」

と言って、郵便配達の人から受け取ったかめちゃんが、送り主を確認するすると、思わず二度見をしてしまった。

「どうやって、ここまで届いたんだろう?この時代にまだこのサービスはなかったはず。」

と、首をかしげながらメンバーが集まっているリビングに戻ってくると

「やっぱり、あたし?」

「あっ、いえ。さよりさんだけじゃなく、皆さん宛です。サファイアちゃんから。」

と言って封を開けると、中から品良く金のリーフレットが施された封筒が数通出てきた。

1通だけ蝋封されていない封筒を見つけ、中を見てみると手紙が入っていた。

小包の中に入っていたのは、サファイアからの招待状だった。

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