10年後
-10年後-
「アリム!市場でひよこ豆を買ってきてくれないか?今日はファラファルがよく出るんだ!」
「はい、父さん!」
そう言うと俺は店を飛び出し、市場がならぶ海沿いの街- スークへ向かって走り出した。もう既にエドワードとの別れから10年がたつ。俺は18才になった。そして今は父が経営する酒場-ハナ・バハルで手伝いをしている。父の店はここら辺ではで1位2位を争う人気店で、常に客足が絶えない。特にファラファルはうちの看板メニューといっても過言でないくらい美味で人気がある。あの豆類とスパイスのハーモニーにサクッとした衣がたまらない。これを買いに行列ができるほどだ。だから時間がない父の代わりに、いつも俺が買い出しや酔っぱらいからの絡みに奔走している。ちなみに今は、ファラファルの材料となるひよこ豆を買うために市場へと向かっている。市場があるスークまでは大体1キロメートル強くらいで走って行けなくはないが、それだけで無駄な体力を使ってしまうのは避けたいので、いつも誰かの荷台に乗せてもらう。今日はたまたま近くを通りかかったハック爺さんの馬車に乗っている。馬のポッカポッカというリズムが心地いい。疲れがたまっているせいか、揺れに身を任せているうちに俺はゆっくりと目を閉じていた。
「おい、小僧!そろそろ着くぞ!」
前方から聞こえたハック爺さんの声で目を覚ます。どうやら、俺は途中で居眠りしていたようだ。
ちなみに爺さんは運送屋の仕事をしていて、子供の頃からの付き合いだ。市場に行くときや海に遊びに行くときによく荷台に乗せてもらうのだが、少し頑固なのがたまにきずだ。
「おう!いつもありがとな、爺ちゃん!」
俺はそう言うと荷台から飛び降りた。すると馬車がガクンッと縦にゆれ、爺さんはしかめ面をして振り返った。
「・・・お前も中々恩つけがましいのー。いつの間にそんなに大きくなったんじゃ!荷台が重くて、馬達もヒイヒイいっておるわい!」
そんなことを言いながらもいつも乗せてくれる爺さんには感謝している。あと厳しさと裏腹に、実は俺の事を心配してくれている優しい所も俺にとってはありがたいものなのだ。
「えへへ!それじゃ、またなー!」
「家の手伝いもいいが、たまには子供らしく遊んでもいいんだぞ!」
「分かってるよー!」
そんな会話をしながらハック爺さんと別れた。そして俺は市場の方へ走り出した。




