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私たちが知る世界は、ほんの一部であるし、ほんの一部を我々の意のままに操作できるわけでもない。

人類は、吊り橋を自分たちで作り、今まで歩みを続けてきた。

しかしどうだろうか。

その吊り橋は、昔の造り上げた部分が腐り落ちようとしている。

チャールズとトビオはその様子を見つめていた。

「どうして崩れ落ちているのかな。」

「人々のすぐ後ろをみてごらん。」

とチャールズは、言った。

そこには、ある光景が広がっていた。

人々がいる部分よりもはるか遠くの後ろの部分と同様に人々のすぐ後ろも腐り始めていたのだ。

そのすぐ後方の部分と遠くの部分の間は、全く腐ってはいなかった。

「そうか。」

とトビオは、見つめた。

「情報や、技術が高くなればなるほど私たちは、部品となり、物事への感謝を忘れていく。

忘れるからこそ、今生きている事に対する実感が薄らぎ、刹那的になっていく。

そうしてますます、人は生きていく上で多くの論理的と思える情報を集めなければいけなくなる。」

チャールズは、そう言った。


2人は、吊り橋の風景を見る前に

チャールズの過去へ飛んでいた。

彼は、もともとイギリス生まれであった。しかし、母親と父親の離別により、母親の親権獲得と共にアメリカへ、移住していた。

「私は、嫌だった。

父と母が離れる環境が。そしてなによりも自分自身が。」

そういってチャールズは、

車も人も通らず、あたり一面なにもない田舎道を歩きながら、共に歩くトビオにそう言った。

「父も母も学者だった。

父は、心理学者。母は、生物学者だったらしいが、研究をしていたらしいが職務上、内容は、ほとんど言ってくれなかった。」

チャールズは、そう言って、目の前に広がる母と2人で幼少期をすごした家の前で立ち止まった。

「孤独とは、なんだ?」

とチャールズは、誰に求めるでもなくただ口走った。

「母、信心深かった。だが、やっていることは、生物学というものだった。

でも母は言ったよ。

『信仰心とは、論理的なモノではなく。受け入れるもの』だと。」

チャールズの父、ジョン・ブロックは、人の内面というミクロなものを研究していけば、宇宙というマクロなものを理解できると信じていた。

ジョンの言う事は、どこか人を新鮮な気持ちにさせて、安心させるところがあった。

自分の行いを間違っている事を受け入れる事を心地よくさせるような感じであった。

「今、思うと父が目指したものは、父のやり方は、見出せなかったのではなかったと思うよ。」

チャールズとトビオは、向かい合うようにして家の中の椅子に腰かけていた。

「君のお父さんがしていたことも何かに近づこうという試行だったと思うよ。」

とトビオは、チャールズに語りかける。

「よく、父に神仏について質問されたよ。」

と言うとチャールズは、笑って言った。

「父は、すべての学問や、分野が表す『何か』を見出そうとしていたんだよ。

それを時代や場所によっては、神と言っていた。

学生のころまでは、私もそう思っていたが、しかし今はすこし違う。

果たして神が我々に語りかけたとして我々がそれに気付く事など出来るのだろうか。

今こうして君と話している瞬間だって君を介して、神が私に語りかけているのかもしれない。

この世に絶対がないように

いくら純粋な意識だけの世界が可能だとしても

その意識が明確な個でいられるだろうか?」

チャールズは、じっとトビオの瞳をとらえていた。

「今、僕には、チャールズ、君を介して神が語りかけているような気がしているよ。」

とトビオは、小さな笑みを浮かべてそう言った。

「そういう事になるけれど、私は、君のような応用はしない。

とチャールズが返すと

「やはり僕ら、そりが合わないところがあるね。」

とトビオは、言うと

「一つだけ共通したものがあるだろう。」

と即座にチャールズが言う。

そして2人は、口を合わせて言った。

「宇宙は美しいが、同時に恐ろしい。」

と。







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