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「ふざけてるのか。魔力放出病は毎日、薬を飲むのが常識だぞ」
「え!?」
ルクレッツィはおもわず声を素っ頓狂に上げていた。
寝耳に水である。
そんな毎日薬を飲んだ覚えがない。
発作が出たら薬を飲む程度だし、それだって数が少ないから症状を見ながら飲むかどうか決めていた。
ルクレッツィがかわいそうすぎる。
ぽかんとティクルスを見上げると、不機嫌ですと顔にデカデカと書かれている。
「治療法が確立されてないから、薬で緩和するものだ」
「知らなかった……」
ルクレッツィの知識は無さすぎじゃないだろうか。
これは絶対にみんな知ってることだ。
常識と言ったし。
(これも王妃たちの嫌がらせかなあ。さすがにこれについてお父様も何とかしてあげてほしかったけど……無理よねえ)
以前のルクレッツィのことを思い浮かべてつらつら考えるけれど、気弱そうな父親を思い浮かべると小さくルクレッツィは息を吐いた。
荷が重すぎたのだろう。
「国王陛下は何をしていた?」
今まさに考えていたところだ。
何をしていたと言われて答えられることはひとつしかない。
ルクレッツィはそっと目線を横にずらした。
「ええと、板挟み?」
それだけでティクルスは悟ったらしい。
大きくため息を吐くと、一度眉間を揉み込んだ。
まるで無理やり皺を伸ばすようなしぐさだ。
「フォック、殿下にファーレン国に抗議をするよう頼んでくれ。婚約者の釣書に持病やそれに対する適切な情報もなければ、体調も不健康で整ってすらいないのはどういうことだってな」
「あの、父も精一杯でして」
なんか厳しめの抗議が父親にいきそうだと、慌ててルクレッツィはティクルスを宥めるように立ち上がった。
手を無意味に開いたり閉じたりしていると、ギッと睨みつけられて肩がびくりと跳ねる。
「いいか、お前は子供だ、守られるべき存在だ。大の大人がそろってそれを怠った。完全なる怠慢だ」
「そう……ですかね?」
言っていることはわかるし理解できるけれど、いざ自分のことだと言われるといまいちピンとこない。
こてりと首を傾げると、長い髪がさらりと揺れた。
「そうだ」
なんとなくあやふやな返事しかできないでいると、ティクルスがなんの躊躇もなく頷いた。
その目はまっすぐにルクレッツィを射抜く。
ピリリとした空気も、眇められた猛禽類のような目も、何ならブチ切れそうなほど力のはいった額の血管も、すべてがルクレッツィのために怒っているのだとわかってしまう。
そのことが嬉しくて、以前のルクレッツィにティクルスを会わせてあげたかったと思った。




