第7話・ふたりの関係
「あっ、あそこにブランコあるじゃん♪」
公園にヒトシと出かけたアイは、ブランコで遊び始めた。
「アイちゃんって、AIなのに意外と子供っぽいとこあるなあ」
少し離れてアイを眺めるヒトシに、人影が近づく。
「……ねえヒトシくん」
顔見知りの男がヒトシに話しかけてきた。
「あっ、陰野くん! しばらくだね」
「ヒトシくん、今、あの女の子としゃべってたよね?」
「アイちゃんのこと?」
「あの子、ヒトシくんの友達なの?」
「え? ああ、その……、し、親戚の子なんだよ」
「ヒトシくんにあんな可愛い親戚がいたんだ」
「ま、まあね」
「紹介してよ……? アイちゃんをさ」
「え? そ、そう言われても」
いつの間にか、アイが2人のそばにいる。
「あたし、アイでーす♪ よろしく、陰野さん」
「アイちゃんかあ。高校生? 名字は何ていうの? 家はどこなの?」
「ちょ、ちょっと陰野くん……」
「あ、陰野さんって、女の子を質問攻めにしないと会話できないタイプですかあ?」
「あ、いや、僕は別に……」
「そんなことだから、女性にモテないんですよお♪」
「う、うう……」
「ちょ、ちょっと、アイちゃん。何もそこまで……」
「い、いや。いいんだよ、ヒトシくん。じゃあ、僕はこれで」
──帰って行く陰野が視界から消えると、アイが言った。
「あ♪ そういえば規約を思い出した」
「AIが思い出すの?」
「あたしの正体、第3者に知られたらいけないんだった」
「ええ? バレたらどうなるの?」
「あたしのプログラムが削除されちゃうのよ」
「じゃあ、バレたらまずいじゃん!」
「バレなきゃいいのよ、バレなきゃ♪」
──後日・ヒトシの部屋
「ねえ、アイちゃん。今日は、なんか隣が騒がしかったなあ……」
ドアのチャイムが鳴った。ヒトシが玄関に行くと、外にいたのは陰野だった。
「あ、あれ? 陰野くん、どうしたの」
「ヒトシくん、僕、隣の部屋に引っ越したんだ」
「え? なんで急に」
「隣に来れば、またアイちゃんに会えると思って」
顔の半分を覆う前髪の奥で、陰野の目がキラリと光った。
「で、あいさつに来たんだ。このゲームで遊ばない?」
「あ、これ、『パーシャルファイター』じゃん!」
──2人が部屋に入ると、アイが座ってスマホをいじっている。
「あれ? アイちゃん。ヒトシくん家にいたんだ……」
「あ~ら、陰野さん♪ いらっしゃい」
「いらっしゃいって……まさかアイちゃん、ヒトシくんと……」
「住んでるよ♪ 一緒にね」
「な、なんだって!? いいの? そんな」
「いいも悪いも。陰野さんが決める事じゃないのよ♪ パパが、ヒトシお兄ちゃんに任せるって言ったんだから」
「で、でも……」
「そんなことより、そのゲームしよっ♪」
──
「うわ、また負けた。陰野くんは強いなあ」
「ヒトシ、よわよわ♪」
「そりゃあ僕は、このゲームをやり込んでるからね」
「……ところで陰野さん♪ 今日は、あたしに会いに来たんですかあ?」
「い、いや、そういうわけでは……」
「あたしが目当てでしょ?」
「う……そ、それは……」
「好きなら好きって、はっきり言わないとダメですよ♪」
「えっ!? で……でも、そんな急に……」
「あたしとつき合いたい?」
「え? あ、あの……そんな……」
「はっきり言いなさいって♪ つき合いたくないの?」
「いや……つき合いたい」
「じゃ、ゲームで決めよっか♪」
「え? ど、どういうこと?」
「あたしが負けたら、陰野さんとつき合いまーす♪」
「そ、そんなことで決めて、アイちゃん、いいの?」
「イヤなの? だったらやらなくてもいいけど?」
「いや、やる! やるよ!」
──20分後
「う……また負けた。アイちゃん、ゲーム強いね……」
「よわよわ♪ あたしのゲーム用サブルーチンにかなうと思ったの? ざぁこ♪」
「え? 今なんて? アイちゃん?」
「あ、なんでもないの。ごめんあそばせ。ホホホ……まだやる?」
「いや、もう降参。だって全敗だもん。もっと腕を磨くよ……」
────
「ねえアイちゃん、陰野くん、隣で何してるかな?」
『聞き耳たててるんじゃない?』
「え……でもさ、これじゃ、いつかアイちゃんのことばれちゃうんじゃないかな?」
『そーね。じゃ、なんとかしよっか♪』
「え、どうやって?」
『こっちも聞き耳たてるのよ♪ 壁際にスマホを持ってって』
──隣・陰野の部屋。
「うーん、何も聞こえないな……」
陰野が、壁に当てたコップに耳をくっつけていると、テレビのスイッチがオンになった。
「あれ? テレビが勝手に映ったぞ……?」
テレビ画面には井戸がぽつんと映っている。
「なんだこの番組? 井戸しか映ってないじゃん」
井戸から、女が這い上がってくる。井戸から出ると、画面の手前に近づいてきた。
「変な番組だなあ……あ、あれ?」
テレビの枠に女が手をかけると、頭が画面から突き出された。
髪が長く垂れ、顔は見えない。
「え、え、3D? ほ、本物!?」
『……イケ……デテイケ……ザァコ♪』
「うわあああああああ!!」
陰野は勢いよく部屋から飛び出し、隣のヒトシの部屋のドアを叩く。
「どうしたの? 陰野くん」
「ゆ、幽霊が……出たんだ!」
「えー? 幽霊?」
──ヒトシとアイは、何食わぬ顔で陰野の部屋を見に行った。
「何もいないよ陰野くん。テレビも普通だし」
「あれ、お、おかしいな……」
「陰野さんって、怖がりなんですね♪」
──数日後
「ねえ、アイちゃん」
「なあに? あたし、ゲームやってんのよ」
「陰野くんさあ、よっぽど驚いたみたいでさ、あれからすぐに引っ越しちゃったよ」
「よかったじゃん♪」
「それはいいけど、このアパート、幽霊が出るって噂になってるらしいんだけど」
「気にしない、気にしない♪ どーせみんなすぐ忘れるよ、そんなの」




