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第228話 お二方ともこんなに愛らしくなられて

 よいしょっと。

 刈り取った草の入った籠を背負い、薬草畑へ向かう。


「あ、ソルさん、草は言われたところに集めています」


「ありがとう。ジャバト」


 これで、薬草畑にく春用の堆肥たいひが確保できそうだ。これまでは、刈り取った雑草はそのまま畑にき込んだり、燃やして残った灰を畑に撒いたりして使っていたんだけど、凪ちゃんが雑草は米ぬかと混ぜて発酵させたらいい肥料になりますよって教えてくれたから試してみるつもり。なんでも、窒素やリン酸が豊富で植物が育つのに役立つ栄養素がたくさん含まれているんだって。


「おや、ソルさんもですか?」


 ルーミンだ。同じように雑草の入った籠を背負っている。


「うん、休憩のついでにと思って」


「私もですぅ」


 それにしてもルーミンの籠は、雑草が溢れるほどのてんこ盛り。


「そっちは順調そうみたいだね」


「はい、皆さん張り切っておられて、刈り取った草を運ぶだけでも大変なんですよ」


「バーシ帰りの子が多かったんだっけ?」


「ですです」


 なるほど、バーシで行われた収穫祭、今年も何組ものカップルが誕生したと聞いている。早ければ春には結婚式だ。今から楽しみで仕方がないんだと思う。










 雑草を所定の位置に積み上げた後、ルーミンと一緒に子供たちが遊んでいる丘の上に向かう。


「おぉー、皆さん楽しそうに遊んでいます」


 ほんとだ。子供たちは、枝を使って地面にお絵描きしたり、花を摘んだりと久々の外を楽しんでいるみたい。ただ……


「パルフィがいないね」


 ラザルとラミルはゴザの上でお昼寝しているみたいだけど、隣にいるのは見守り役をお願いしている織物部屋の女の子だけ。


「パルフィは?」


 近づいて声を掛けてみる。


「あ、ソルとルーミン。パルフィなら、ラザルとラミルが寝たすきにって川の方に行ったよ」


 水車小屋を見に行ったのかな。


「なるほど……私たちはしばらくいますけど、どうしますか?」


「それじゃ、ここお願いしていい? 少し体を動かしたくて」


 小さい子を見るのは気を使うもんね。ましてや今日は外だ。目を離したすきにどこかに行ってしまったら大変。ずっと気を抜けなかったはず。

 ということで女の子と代わり、ルーミンと二人でラザルとラミルの隣に座る。


「スヤスヤとほんとによく寝ますね。寝る子は育つといいますから、すぐに大きくなりますよ」


「うん、母さんもそう言ってた」


 他の子供たちよりも成長が早いみたいだし、もしかしたら、地球の知識を取り入れているっていうのもあるのかも。


「ねえ、これみてぇー」


 可愛らしい軍手をはめた女の子が、紫色の小さな花を持ってこちらにやってきた。


「うわぁ、キレイですね。それ、どうするのですか?」


「ラザルゅとラミルゅにあげりゅの」


「ほぉ! それは喜びそうですが、せっかくなら……」


 ルーミンが女の子の耳元で何かささやいている。


「うん! それがいい! 来てぇー、こっち!」


「はいはい。ソルさん、それではちょっと行ってきます」


 女の子に手を引かれて、ルーミンがどこかに向かって行った。たぶん、紫の花が咲いているところだろう。


「よっ! まだ寝ているようだな」


「お帰り、パルフィ。ぐっすりだよ。水車小屋?」


「おう、問題なし。これで安心して仕事ができそうだぜ」


 ということは、そろそろ作業も終わりかな。今回の草刈り。水路ができたことによりその周りの土手に雑草が繁茂することになってしまって、枯れ草が水路を塞ぎかねないということで行われたからね。


「それにしても、相変わらずルーミンは子供の扱いがうめえな」


「見てた? ほんと、織物部屋でも助かっているよ」


 ルーミンがいる時は子供たちの気をうまく引いてくれるから、他のみんなが作業に集中できる。


「来年の春にはいよいよだろう。いいお母さんになりそうだな」


「うん、きっとね」


 ルーミンは春になったらジャバトと一緒に暮らし始める。早ければ再来年の年明けごろには子供がいるかも。


「ま、ソルもだけどな」


「う、うん」


 今のところ硬貨の普及も順調だから、昨日も美桜と問題なさそうだねと話していたところ。今度リュザールがカインに戻ってきたら、タリュフ父さんに話してみるつもりなんだ。時期は……ルーミンたちと一緒になるかも。


「ふふ、賑やかになりそうだぜ」


 うん、早くそうなってくれたらいいなって思う。


「……でくれるかな」


「はい、喜んでくれますよ」


 お、ルーミンたちが戻ってきた。女の子は手に何かを大事そうに持っている。


「お待たせしました。ほら……」


「はい、これ、ラザルゅとラミルゅに」


 女の子は紫色の花で作られた小さなわっかを二つ、パルフィに差し出した。


「お、こいつらにか。ありがてぇ」


 パルフィは女の子から紫色のわっかを二つ受け取り、隣で寝ているラザルとラミルの頭にそっと乗せた。

 うわ、か、可愛い!


「お二方ともこんなに愛らしくなられて……よかったですね」


「うん!」


「よし、ちょっくら起こすか」


「ううん、いいの。そのままで」


 女の子はうっとりした目で二人を見ている。

 うーん、これは恋するというよりも推しを見るときの目って感じがする。恋にはまだ早いか。

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