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第225話 子育ては男女で分け隔てなくするべきです

 湯船から小さなタライにお湯を移し、その中にラザルとラミルをそっと入れる。


「わ、こら、暴れるな」


 ふふ、二人ともお風呂の時は、いつも気持ちよさそうな顔して手をバシャバシャするんだよね。


「よし、ハミルもいいぜ」


 ヘルガの手でタライの中に入れられたハミル、最初は驚いた様子だったけど、すぐに隣の二人を真似て手を動かし始めた。


「なるほど、これならこっちに水がかかっても困らないのね」


 そうそう。赤ちゃんだけを沐浴させていたら何かの拍子で入れている方がびしょ濡れになることがあるんだけど、裸なら後から水やお湯を浴びさえすればどうとでもなる。


「さてと、子供たちは私とパルフィさんで見ときますから、ソルさんはヘルガさんと一緒に体を洗ってこられたらいかがですか?」


「うん、そうしよう」


 ヘルガの肩を押して洗い場に座らせ、タオルをお湯につけて一枚を渡す。


「こんな感じでこのタオルに石けんを擦りつけてみて」


「こう? あ、泡がたってきた。でもなんかこれ、普段使っているものよりも目が粗い気がする」


「でしょう。体を洗う専用のタオルだよ」


 このタオルは、地球で試してよかったからコペルに特徴を伝えて織ってもらったもの。汚れも落ちて肌にも優しいって女の子たちからも評判がいいから、今度売り出す予定なんだ。


「こんなものまで……さすがカインは進んでいるのね。あとは?」


「体全体を洗っていくんだけど……」


 ヘルガに体の擦り方を見せていく。


「こうかな……あれ? 私のは泡が消えて……」


 やっぱり汚れていた。


「一回流そうか。そして、もう一度やってみよう」


 バーシでも、みんなが使うお風呂には体をキレイにしてから入るというふうになってほしい。そうしないと、後から入る人が嫌な気分になるかもしれないから。一回一回お風呂を入れ替えられたらいいんだけど、資源が限られているテラではそういうわけにはいかない。


「泡がたってきた……もしかして、私汚れてたの?」


 うんと頷く。


「うわっ……」


 クンクンと腕の匂いを嗅いでいるヘルガ。


「去年カインから帰ってきた子が、時々自分の匂いを嗅いでた理由がわかったよ」


 必死で体を擦りだすヘルガ。


「力を入れすぎると、肌が荒れちゃうから気を付けてね」


「そうですよ、ヘルガさん。ハミルくんも心配そうに見てますよ」


 ほんとだ、タライの縁に手をかけてこちらを見ている。


「おっと、いけない」


 うんうん。


「それくらいで十分だよ。そろそろ、ルーミンたちと変わろう」







「子供たちを入れるのはタライの方がいいの? 大きい湯船ではだめなの? あ、溺れちゃうのか」


 お風呂をすませた私たちは、別れずに脱衣所の中にあるベンチに腰かけて話をしている。


「はい、それもあるのですが、粗相することがあるので洗いやすいほうが都合がいいのです」


 そうそう、子供たちは気持ちよくなるとシャーっといっちゃうことがある。大きな湯船のお湯を張り替えるのは大変だけど、タライならサッと流してキレイなお湯を入れなおすのも簡単なんだ。


「わかった。タライを置くのは女湯だけ?」


「いえ、男湯にも同じように置いてます。子育ては男女で分け隔てなくするべきですから」


「それはいい事を聞いたわ。それで、お湯を沸かすのは誰がするの?」


 こんな感じでヘルガが熱心に聞いてくるから、なかなか解散できないでいるのだ。


「カインの場合は工房で担当者を決めてやってるよ。バーシはバズランさんがどうするか次第だと思う」


 このあたりは村によってやり方を決めたらいいと思う。村人が交代でやるとか、避難民の人の仕事とするとかね。


「なるほど……それで、費用はどうするの? お湯を沸かすのに羊の糞を使うとしても、足りなかったら譲ってもらわないといけないわけだし」


「うん、カインではみんなに支払ってもらっている」


 脱衣所入り口に設置している箱を指さす。


「入る人は、あの中にお風呂専用の木札を入れることになっているのです」


「木札?」


「はい、子供は無くても入れますが、大人は1人1回入るのに木札が1枚必要です」


「木札はどうやって手に入れるの?」


「工房で麦の場合だと1袋で40枚、銅貨なら1枚で2枚交換しています」


「先に払っておくのね。それに麦1袋で40回なら、そんなに高いってことはないんだ」


「あ、お値段は、村々によって変わってきますのでお気を付けください」


 水の価値が村によって違うから仕方がない。カインの場合は一回当たり日本円換算で200~300円くらいかな。


「なるほど。あとは、うちの村だけで作れるかどうかだけど……」


「大丈夫だと思うぜ。あれだけ立派な橋を作れるんだからよ」


 そうそう、バーシの先にある橋はバーシの人たちがご先祖様から守るようにと言われているらしくて、壊れたら修繕、木が腐らないうちに前もって架け替えと長年にわたって維持管理を続けている。地球で調べてみたんだけど、結構な技術がないとできないみたいなんだよね。


「そうかしら…………いや無理よ。橋しか作れないと思う」


 バーシの村の中は、他のところとたいして変わりがない。きっと、伝えられている橋の建設技術が凄すぎて、他の施設に転用することができていないんだと思う。でも、


「心配するな。仮にできなくても、その時はジャバトたちが指導すっからいけるって」


 応用の仕方を教えたら、カインに負けないものを作れるんじゃないかな。


「ほんと? そうなってくれたら嬉しいな。お義母さんにもお風呂を使ってもらいたいもの」

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