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俺の知ってる異世界と違う  作者: オッド
第一章 俺の知ってる異世界と違う
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02 俺の知ってる勇者と違う

「さーて、町についたわよー」

「おお、これがテレポートというやつか! 魔法なんだね! すごい、すごいよ! 異世界って感じだよ! うん、やっぱり、異世界はこうでなくっちゃね!」


 少女が呪文を唱えると、一瞬で町へと移動した。

 便利な魔法だ。


 俺のテンションはアゲアゲだ。


「中世ヨーロッパ風の建物! これぞ異世界! 最高だ、最高だよ! ワトソン君!」

「誰よワトソンって。早くついてきなさい」


 上京してきた田舎者のように周りをきょろきょろと見渡してはしゃぎまくる。

 目移りしながらも、言われるがまま赤い髪の少女の後についていく。


「なー、そういえば名前なんて言うんだ?」

「私は、これでも勇者なの。勇者クレア! 不審者に名乗る名前なんてないわ!」


 あのー、思いっきり名乗ってますけど。

 まあいいか。

 クレアね。


 ん?


「ゆ、ゆ、ゆ、勇者ぁああああッ!?」

「今更、何を驚いてるのよ。あんた本当に何も知らないのね」


 ふふっと笑うクレア。

 その表情は誇らしげだった。


「なんていうか、勇者っていったらもっとキリッとしたイケメンっていうイメージなんだけど」

「私が勇者だと何か文句あるわけ? 言いたいことがあるならはっきり言いなさいよ!」


 うーん。

 なんていうか俺の思い描いてる勇者と違う。

 だって、俺と同い年か、ちょい年下くらいの女の子なんだよ。

 気は強いけど、どちらかっていうと守ってやりたくなるタイプだし。


「何よ、人の顔じろじろと見て。ぶっ殺されたいの?」

「……お前、やっぱり勇者じゃないだろ」


 勇者が、こんなガラの悪い少女のはずがないッ!






「あらあら、クレアちゃんったらもう町に戻ってたのねえ。魔王を倒すまで帰らないなんて啖呵を切って行っちゃったから心配してたのよ~」

「べ、別にあんたのために戻ってきたんじゃないんだからねッ! 不審人物を確保してきたから、今から取り調べするわよ!」


 お、おお。

 めっちゃ巨乳の美女キター!

 クレアの知り合い?


 よっしゃ!

 これが運命の出会いってやつやな!


「あ、どうも。俺、黒野騎士ないとっていいます。ナイト君って呼んでくださいッ!」

「あらあら、可愛い子ねえ。私は、ミルフィって言います~。ナイト君、よろしくね~」


 よっしゃあああ、めっちゃ好感触!

 フラグが立ったな!


 異世界にきて、本当に良かった。


「それじゃ、あとは任せたわよ。終わったあとにまた来るから」


 クレアがその場から立ち去る。

 意外と空気が読める子?


「さあ、ナイト君はこっちにいらっしゃーい」

「え? こ、ここは……?」


 ミルフィに案内された部屋、中にはベッドが一つあるだけ。


「あ、あの、こ、こ、これは一体?」

「さあ、早く服を脱いで?」


 えええええ?

 なにこの急展開。

 まだ会って間もないんだけど。

 名前くらいしか知らないよ?


 この世界って割とそういうのに積極的な世界なわけ?


 異世界、最高ッ!

 言われるがまま服を脱いだ。


「脱いだぜ? つ、次はどうするんだッ!?」

「あ、あの~、下着まで脱がなくてもいいんですけど~」


 両手で顔を覆いながら、恥ずかしそうに言うミルフィ。

 あ、いきなり全裸はまずかった?


 そ、そうか、色々と順序ってものがあるよな。

 焦りは禁物だ。


 とりあえず、落ち着かないと!


「こ、これでいいか?」

「はい、では、ちょっと失礼しますねー」


 そういうと、何やら金属製の金具のようなもので俺の身体をベッドに固定しはじめる。

 いきなりの上級者プレイッ!?


 と、思ったのも束の間。

 俺の身体に激痛が走る。


「いでえええええ、痛い、痛いですって、何するんですか!」

「あぁ? てめえ、少し黙っとけやコラ。今、魔力検査してんだからよぉ?」


 ひぃぃ。

 さっきまでの笑顔はどこへいっちゃったの?

 ものっそい低い声で威嚇されたよ。


「ま、魔力検査ってなんすか、ってか痛い、痛いよおおお! もうちょっと優しくしてくだ……ぎゃああああッ!」







「ぷー、クスクス。アホね、あんたやっぱりただのアホだったわけね!」


 検査が終わったあと、倒れ込む俺を見て笑うクレア。

 ぜってーこいつ勇者じゃねえだろ。


「うふふ、ナイト君、ごめんなさいね~。魔力検査の結果、あなたは魔力のないただの人間だということが判明しました~」


 ミルフィが、最初に会ったときのように優しく微笑んだ。


 俺は悪夢でも見ていたのだろうか。

 検査してるときのミルフィの顔は悪魔のように恐ろしい目をしていたのに。


「それじゃ、魔王退治に出発しましょうか!」


 クレアがいきなりそんなことを言い出す。

 しかも、俺の顔を見ながら。


「えっと、俺も一緒に行くの?」

「当たり前じゃない。私の攻撃をくらっても平然としてるくらいタフだしね。私の壁にピッタリだわ。あれ? ちょっと待ってー、どこ行くのー? ねえー、ちょっとー?」


 俺は逃げるようにその場を後にしたのだった。

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